「むらさきのスカートの女」と「孤独のグルメ」に関する妄想 影山貴彦のウエストサイドTV【6】

「むらさきのスカートの女」と「孤独のグルメ」に関する妄想 影山貴彦のウエストサイドTV【6】

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面白い本に出合うと幸せな気持ちになるものです。それは、映画でもテレビドラマでも同じです。そして、「面白い」ということを無性に誰かに伝えたくなるのです。
 今村夏子さんの第161回芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」。本当に最高でした。近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない<わたし>。その目的は彼女と「ともだち」になることです。日々の生活を微細に観察することに生きがいを見出す<わたし>は、自分と同じ職場で「むらさきのスカートの女」が働き始めるよう、彼女が気づかぬ形で導くのです。ただそこから「ともだち」になるわけではありません。<わたし>の観察は、さらにエスカレートしてゆくのです。
 人間の感情の中に首をもたげる「怖さ」がこの作品の大きな魅力です。それでいながら、どこか「おかしみ」もある。こうしたタイプの小説が私は大好きです。ちなみに今村さんは広島の生まれで、現在大阪にお住まいとか。「ウエストサイド」の方なのですね。
 ここから私の長年の習性で、登場人物を演じるにふさわしい俳優は誰だろうと、勝手に妄想し始めます。誰に頼まれているわけでもないのに(笑)。けれど、それがとても楽しいのです。「むらさきのスカートの女」と<わたし>、いずれかを特定する形ではなく、何人か挙げてみたいと思います。まずは、満島ひかりさん(彼女の作品に「ハズレ」なし!)。そして、黒木華さん(「凪のお暇」出演中)。さらに、多部未華子さん(「これは経費で落ちません!」出演中)。小池栄子さん(「わたし旦那をシェアしてた」出演中)もいいですね。あ〜早く映画化、ドラマ化して欲しいものです。とかなんとか私が書いている間にも、もしかして既に原作の争奪戦が始まっているかもしれません。メディアの動きはそれほど電光石火なものです。
 妄想のことを書いていて、もうひとつ思い出しました。松重豊さんが主人公の井之頭五郎を演じるグルメドラマ「孤独のグルメ」。出たとこ勝負で、けれど大いにこだわりのある「ひとり飯」を堪能する五郎に魅力を感じている人はたくさんいることでしょう。10月には待ちに待ったシーズン8が始まります。で、妄想の話になるのですが、もし関西版の五郎役をやるとしたら、誰がいいだろう?と以前から考えていました。そもそも、「関西で孤独のグルメ的なもんなんてあかんわ。関西人は、みんなでワイワイ賑やかに食事するのが好きなんやっ!」という声も聞こえてきそうですが、果たして本当にそうでしょうか?「むらさきのスカートの女」のようなストーリーは、どことなく東京っぽい匂いがしそうですが、前述のとおり、今村さんは「西」の方なのです。東京だから、関西だからと先入観からステレオタイプにキャラクターを決めつけることは、もはや古臭いかもしれません。「孤独のグルメ的番組・関西版」があってもいいと私は思っています。グルメ特集を見ない日はない関西のテレビですが、正直いささかマンネリ気味でもあります。切り口を変えることで、新鮮な番組制作へシフトできる可能性は大いにあるのです。
 さて、ということで、みなさんは誰がピッタリと思われますか?ここで、パソコンのキーが止まってしまうのです。やはり、関西には「孤独のグルメ」に似合う人はいないのかもしれない、と悩み続けて、やっとこの人の名を絞り出すことができました!
その人の名は、岡田准一さんです。ご存じの方も多いことでしょうが、岡田さんは大阪府枚方市出身、テレビや映画で関西弁を話すことは稀ですが、だからこそ彼の大阪弁を聞きたい、「孤独のグルメ的番組・関西版」を見てみたいのです。
 もちろん、権利の問題をクリアしなければなりませんし、そしてそもそも岡田准一さんがその種のタイプの仕事を引き受けるのか?という根本的な問題はあるでしょう。けれど面白い事は、往々にして妄想から始まるのものではないでしょうか。私はいつもそんな風に考えています。
 そこまで書いて気づきました。松重豊さんのご出身は福岡県。広い意味で彼も「ウエストサイド」なのでありました(笑)。

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など