テレビはイライラ社会を増幅させていないか? 影山貴彦のウエストサイドTV【7】

テレビはイライラ社会を増幅させていないか? 影山貴彦のウエストサイドTV【7】

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コンビニでアルバイトをしているゼミの教え子が教えてくれた話です。店に入った時から不機嫌そうだった中年男性客、ペットボトルのお茶をレジカウンターにドスンと置き、小銭を教え子に向かって放り投げて出ていったそうです。
 「感じ悪かったです!」という彼女に、私は「そりゃヒドイね!」と返したのですが、驚いたのは、その話を聞いていた他のゼミ生たちが、「私もっ!」「私もあるっ!」と次々と自らのアルバイト先での不快な経験を語り始めたことでした。『お客さんに何か聞いても、全く無視』、『ものすごくエラそうに上から喋ってくる』、『試着室に服が置きっぱなし』、『急にキレる』などなど、ある意味、それからものすごく盛り上がったのでした。
 そういえば、私もレストランでウエイトレスの方がメニュー確認をしているにも関わらず、返事をしないどころか1ミリの表情さえ変えない客を見かけることが頻繁にあります。
判り切ったメニュー確認が煩わしいこともあるかもしれませんが、何らかの反応をしてあげることは、人として最低のたしなみかなと思うのです。
 「軽くイラついている人」が街にあふれ、「何か息苦しさを感じる」と、今の社会を捉えている方がとても多いのではないでしょうか。ただ、こういうことを記すと、今度は「けしからん!」、「道徳教育をやりなおせ!」など、過激な論調で批判する人が出てくるのも、今の社会の特徴でしょう。そうじゃないんです。
 私が申し上げたいのは、「勧善懲悪!」的な力の強すぎるリアクションの塊ではなく、もう少し柔らかで、しなやかな個々の気持ちを養うことはできないものか、ということなのです。
 専門であるテレビの話に関連づけて申せば、今私たちの心をささくれ立たせるような番組が目立ちます。おどろおどろしい演出を加え、敢えて私たちの「怒り」「不満」を増幅させるような番組展開が少なくありません。たとえば、「あおり運転」の映像を繰り返し流すテレビ局の姿勢など、賛同しかねます。かと思えば、ストレスに満ちた現代人に「癒し」をなどと大々的な特集を組んだりするのです。少し古い言い回しですが、「マッチポンプ」的な存在にテレビがなっている感さえあります。
 私たちの平穏な心、優しく振る舞いたい心根をテレビが壊しているとまでは言いたくありません。けれど決してプラスにはなっていない、と思わざるをえない場面にテレビで出くわすことは、残念ながら現在少なくないのです。教育的見地とか、人格形成とか、そんな堅苦しいことを申し上げるつもりは微塵もありません。もう少し心穏やかでいたいよなぁ、そんな気持ちのナビゲートに、これからのテレビには一役買って欲しいなと願って止みません。

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など

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