「5000人動員は最低限」WEリーグが目指す女子サッカーの新たな姿

「5000人動員は最低限」WEリーグが目指す女子サッカーの新たな姿

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2021年9月に開幕することが発表された日本初の女子サッカープロリーグ「WEリーグ」を、7月11日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20〜)が特集。番組MCの勝村政信と片渕茜アナウンサー、番組アナリストの都並敏史とスポーツライターの松原渓、WEリーグの重要人物である佐々木則夫(前なでしこジャパン監督)と今井純子(JFA女子委員長)が「6つの疑問」を語り合った。

1989年に女子サッカーリーグが誕生し、現在は、なでしこリーグ1部を頂点に、なでしこリーグ2部、チャレンジリーグに合計32チーム(Jリーグ傘下や実業団、大学など)が参加。選手の大半はアマチュアだ。WEリーグは、その最上位リーグとして新設される。

最初のテーマは「プロ化のタイミング」。2011年、東日本大震災後に開催された女子ワールドカップで、なでしこジャパンが初優勝。これを機に、なでしこリーグの試合会場は活気にあふれたが、それをピークに観客動員は徐々に減少。松原が、タイミングを逸したのではないかと率直な思いを伝えると、佐々木は「そのタイミングで先を考えてやるべきだった」と反省の弁。その後の話し合いの中で東京オリンピックを軸にしてスタートするべきだという考えに至ったという。また、アメリカを打倒すべく欧州各国が女子サッカーに本腰を入れ始め、FIFAも女子を重要視するようになるなど世界の状況が変化している。「今やらなければ世界から後れを取ることになる」と危機感をあらわにした。

続いては「資金調達」がテーマ。近年、ヨーロッパのビッグクラブが女子チームに積極的に投資。ユヴェントスは2019年3月の試合で39027人を動員し、イタリアにおける女子サッカー入場者数の最多記録を更新した。イングランドでは、2019年にFA女子スーパーリーグが国際金融グループのバークレイズと年間約14億5000万円のスポンサー契約(3年間)を結ぶなど勢いは増している。佐々木は「当初は各クラブがJ2クラブの中位程度(2018年のJ2クラブ平均営業収益は約15億円)の予算をイメージしていたが厳しい」と現状を伝えつつ、「まだ決定していないので言えないが、他のスポンサーにも脈がある」と資金調達は進行中であると話した。

そして、アマチュアからプロ化で大きな変化が起こるのが「選手の待遇」。WEリーグでは、1チーム15人以上とのプロ契約(A契約5名、B・C契約10名以上)が義務付けられ、B・C契約の最低年俸は270万円に定められる。金額の基準は大卒の初任給を意識しており、活躍次第では年俸460万円以上の契約になりえるという。

松原は、現在のなでしこリーグでは、日中は所属チームの親会社などに勤務し、社員としての給料を受け取っている選手が大半であることを指摘。プロ契約(個人事業主)となり健康保険料なども自身で支払うことになると手取りが下がることもあるのではないかと危惧した。すると今井は「最低年俸を設定し、それ以外に勝利給や出場給がある。その選手の価値によって給料は上がると考えている。最低年俸でプレーしなければならないわけではないし、上を目指し頑張って欲しい」と選手の奮起に期待。また、佐々木は「アマチュア的な契約も女子の場合には良い形があるので、アマチュア契約とプロ契約を併用するイメージ」と話した。

「リーグの体制」は、初年度は6〜10チームでホーム&アウェーの総当たりでリーグ戦を実施。さらに9月開幕5月閉幕の秋春制を導入。欧州のスケジュールに合わせたことで選手の移籍などがスムーズになることが期待されている。今井は「今や女子サッカーもヨーロッパが世界の中心となっており、選手や指導者の行き来が容易になる。また国際大会がヨーロッパのカレンダーに合わせて配置されているので、代表の強化を考えた上でも適切だと考えている」とした。また、Jリーグでは雪国問題の解決が難しく導入を見送られてきた経緯があるが、「ウィンターブレイクをとり、雪国であっても年間を通してサッカーを楽しむための環境作りの一助になりたい」と話した。

そして、役職員の50%以上を女性、役員(取締役以上)の最低1人を女性とし、監督を含めたコーチングスタッフを最低一人は女性にしなくてはならないとクラブの「採用条件」が決まっている。佐々木は「Jリーグの理念は地域に根差した社会貢献ですが、WEリーグは女性の活躍、コミュニティをデザインしていきたい」と話した。しかし、現実は厳しい。なでしこリーグ32クラブのうち、女性の監督はわずか4人。S級ライセンスを持つのは2人しかいない。監督だけをとっても女性の人材不足は深刻で、今井も「当初は女性の監督でやりたいと議論をしたが、S級保持者が少なく、ここにはクオリティが必要」と語り、現状は男性女性に関わらず起用し、S級以外の級も含めて指導者養成に力を入れていくという。

そして最後のテーマが、プロリーグとして成功するために最も重視される「集客」。平均入場者数の目標は5000人。だが、2019シーズンのなでしこリーグ1部の平均入場者数は約1200人と4倍以上の開きがある。佐々木は、なでしこリーグはアマチュアチームが多かったため積極的な集客を行っていたチームが多くなかったことを指摘しつつ「プロリーグは興行をしっかりしていかなければならない。専門の担当者も置くので、この5000人という数値は最低限だと考えている」と通過点として捉えていることを明かした。また、同一地域にJクラブがある場合は「Jチームがアウェーの日程でホームゲームを開催するなどして、女子の応援もしてもらえるようになるのではないか」と私案を披露していた。

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