劇団ひとりを任意同行!「芸人の尖り論」から「タバコの作法」までディープな話が盛りだくさん!

劇団ひとりを任意同行!「芸人の尖り論」から「タバコの作法」までディープな話が盛りだくさん!

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毎週スタジオにやってくる“イマドキ現代人”を掘り下げ、新たな価値観の発見をする『「任意同行」願えますか?』が12月3日に最終回を迎える。MCを務める劇団ひとり、ファーストサマーウイカ、DJ松永(Creepy Nuts)とゲストである“イマドキ現代人”のやりとりが話題を呼び、最終回を前にしてシーズン2を待望する声もあげられている。
今回はメインMCである劇団ひとりに番組のキモでもあるコミュニケーションと“イマドキ”の仕事論について伺った。

――以前、伊集院光さんのラジオにご出演された際、一般の方と趣味の分野で深く交流されていると知り驚きました。

劇団ひとり(以下、ひとり):自粛期間中に3Dプリンタを始めたことがキッカケなんです。使っているうちに、ネットで調べてもどうしてもわからない部分が出てきて。そのことをTwitterで聞いたら、一般の方が「これを使った方がいいよ!」とハードウェアもソフトウェアも教えてくれたんです。
今の僕にとってTwitterは、無料で相談できる巨大なヤフー知恵袋みたいなもの。バイクも好きなんですが、塗装もプロが教えてくれたんです。教えてくれる方も楽しいんですかね、僕がどんどん出来るようになっていくのは(笑)
3Dプリンターに関しては、すごく詳しい人と連絡先を交換して、今では直接電話しながら教えてもらってます。

――多くの趣味をお持ちですよね。

ひとり:仕事と違って飽きたら辞めればいいと思っているので、食わず嫌いはせずになんでも挑戦しています。ゴルフも最初はスゴく馬鹿にしていたけど、からかい半分でやったらもう夢中になった。けど、全然うまくならないんですよ。だから、もう道具を極めるしかないとプロのクラフトマンと同じレベルの機材を揃えました。少し前までは既製品を自分でアレンジするレベルで満足していたのですが、最近ではやっぱり自分で0から作りたいと思って。3Dプリンタでパターを作っています。
ゴルフは普段お会いしない方と一緒にコースを回れるから良いんですよね。丸一日ご一緒すると色々な話をするので勉強になります。

――いつ頃から人に対して、そこまで心を開けるようになったんですか?

ひとり:今でも人の目を気にしているから自意識過剰な部分はありますよ。常日頃、誰かに見られている意識はある。だから、雨が降っているとカッコつけて歩くし、雪の日には街灯の下で佇んだりしてます。
けど、子供が一人生まれるたびに自分への興味が薄れていった感覚はあります。人生において、自分の優先順位がどんどんと下がっていく。子供3人と奥さんを含めれば、今の自分の優先度は5位。そういった心境になって、43歳にもなれば自分への期待感もなくなっていきます。

――自意識過剰だから芸人としての尖りも出てくるわけですよね。若い頃のひとりさんが尖っていたという話は番組でもされていましたが、芸人の尖りとは具体的にどういったことなんでしょうか?

ひとり:簡単に言うと、「面白くないと思う企画はやらない」ってこと。けど、こういった考え方はやっぱり間違っています。やってみないと面白いかどうかも判らないし、面白くないんだったら自分なりに楽しめばいい。最悪、自分は面白くなくても周りが笑ってくれればいい。それがプロの仕事ですから。
若手時代に尖っていたことは反省しています。今はどんな仕事でも喜んでやるスタンスに変わりました。

ーーただ尖りにも良いもの、悪いものがあると思います。芸人として失ってはいけない尖りもあるのでは?

ひとり:良い尖りなんてないですよ。才能溢れた天才だけに許された権利が尖り、並の才能のヤツが尖っていても周りに迷惑かけるだけ!早めに芸能界に迎合した方がいい(笑)
僕も20代の頃は、自分を天才だと勘違いしていました。ライブシーンでは、天才だと勘違いできるんです。けどテレビに出始めて、本物の才能に触れると自分の伸びた鼻がバキバキに折れていく。
初めて島田紳助さんと同じ現場になった時は焦りましたね。「こんな速いんだ……」と震えましたから。編集されているから速いわけじゃないんです、現場だともっと速い。あと、くりぃむしちゅーの上田さん、今田耕司さんの切り返しのスピードと誰も気づいていないことを見つける嗅覚ですね。
芸能界のトップで活躍し続けるタレントって、素数をすごく言える人みたいなもの。生まれついての天才なんです。テレビを見ている方にとっては、ひょうきんで賢い人に映っていると思いますが、実際に同じ仕事をしている僕からすると別格の存在なんです。
テレビでやっていることって日常会話の延長じゃないですか。何回もバク転するように一見スゴくはない。けど、実際にやってみるとものすごく難しい。
ただ、「あぁ自分の才能って並だったんだなぁ……」と気づいてからの方が楽になりました。天才だと勘違いしていた頃は、「自分はこんなもんじゃない!」と悩み続けてましたから。

ーーコンテンツになる日常会話と普段している日常会話の違いはどこにあると思いますか?

ひとり:明確にはよくわかっていないんですが、同じ話をしてもウケない時があるから不思議です。自分の体調、会話の流れも関係していると思う。
ただ16歳から芸人を始めて今43歳、芸歴27年目になりますけど、この歳になっても平気で滑りますからね。そんなこと、他の仕事ではない気がする。寿司職人を27年続けていたら、間違えておにぎりは出しませんよね。芸人はそういった失敗が日常茶飯事の仕事です。
芸歴を重ねていくうちに少しずつウケる打率は上がっていると信じたいけど、わからない……。
デビューしてすぐにバンバンとウケて、どこに行っても思う通りになったらたぶん飽きちゃうんじゃないすか。なんでウケないのかな……、と落ち込むから「また明日頑張ろう!」と謙虚になれる。
僕のお笑い打率ですか?3割くらいですよ。自分で笑って、面白いことを言った雰囲気にするテクニックはありますけど(笑)
もちろん単打狙いもバントします。爆笑だろうがクスクス笑いだろうが笑いに変わりはないですから。

ーー番組では多くの“イマドキ現代人”がゲストとして来ましたが、中でも#8に出演したエキストラのマナパンさんとの絡みは印象的でした。ひとりさんの「コイツの本性が見たい!」というSっ気が光っていました。

ひとり:マナパンさんは好きなタイプで、「本性を剥き出しにしたいな」と思ったんです。Sっ気と言いますが、気をつかってのSっ気ですからね。この場でどうやったら、この人は生きるだろうとやってるだけ。誰かを責め立てているように見えるかもしれないけど、実際のところ本当に嫌いなヤツがいたら全然違う対応をします。芸人として相手に最大のダメージを与える方法は普通にやること。「そうなんだ〜」と相槌を打たれることが実は一番キツい。よく見てればわかるけど、そつなくこなしている時こそ相手のことが嫌いな場合ですから。
『ゴッドタン』でいうキングコング・西野と僕の構図はその真逆です。あれ、犬猿の仲といった演出になっているけど、お互いに愛情がないと成立しない笑いなんです。好きな相手にしかできない。
今、テレビで芸人同士がからかいあっていると、イジメ、パワハラと捉えられることもある。そう思われてしまうことは仕方ないけど、そういった構図になっている時ほど信頼関係があるんです。
爆笑問題の太田さんも僕に酷いことを言うけど、それが一番良い絡み方だとわかっているからなんです。太田さんが僕のことを本当に嫌いだったら、「うるせぇ〜、バカ野郎!」とは言わない。「最近どうなの?」と当たり障りのないことを聞きますよ。

ーー私は番組で広報ライターを務めさせていただきました。休憩中、喫煙所で渋い顔をしてタバコを吸うひとりさんを「カッコいい」とずっと見ていたのですが、その時は次のトークの展開や他の仕事について思考していたのですか?

ひとり:タバコを吸っている時ですか、極力タバコに集中してましたね。考え事をしながらタバコを吸っていると、タバコを吸っていること自体を忘れてしまうことってないですか?
タバコを吸っている時は、タバコに全集中する。煙が肺に入っていく感覚、鼻から煙が抜けていく感覚を目一杯楽しんでます。
最近、何かをしながら何かをすることはよくないなぁと気づいたんです。ご飯を食べるにしろ、どういった食感でどんな味わいがあるのかを考えるようにしていますね。

ーー最後に相談をしたいことがあります。リモート会議をする際、私も司会をすることがあるのですが参加者に均等に話を振れない場合も多いです。どうすれば、上手く会議を回せますか?

ひとり:それは僕も会議でよくありますね。ずっと意見をくれる人もいれば、一言も発さない人もいる。飲み会でもよくある光景ですよね。ただ、話さない人に振っても一言で終わってコッチが恥をかく場合もあるじゃないですか。
僕がMCの番組があったとして、仮にゲストが5人いたとする。これはバラエティの鉄則なんで、よく見ててくださいよ。VTRを見て、スタジオで話を振る際、必ず役者さんから当てますから。決まって最後は芸人です。
一番良さそうな人から話を振ってくと、どんどん尻つぼみになっていく。次に当てられた人も「ヤバい、さっきの人に比べたら話が弱いな……」と不安な顔になる。そして、ディレクターもどうかな……、となんともいえない表情になる。
不安だからね、最初に盛り上げてくれそうな人に話を聞きたくなる気持ちも理解できますよ。けど、最後に盛り下がって終わっちゃうと寂しいでしょ。

<編集後記>
目前にした劇団ひとりさんは「アメリカンスピリット」の香りと大人の余裕を漂わせていた。コチラの質問に対し、一つひとつ丁寧に答えてくれたことが印象に残っている。時折、バラエティで見られる独特なキャラクターが出てくることもあり、「なんとサービス精神が旺盛な方だろう……」と感動してしまった。しかし、キャラクターが出てくることで“劇団ひとり”の本質が掴めきれなかったことも事実である。ともすれば今自分が話している平常に見える劇団ひとりさんも実はキャラクターなのではないか……、と不安になってしまった。しかし、そんなことを考えていてもキリがないと精一杯、取材を楽しみ書いた原稿が上記となる。別れ際、取材中に私が言った「渋い顔をしてタバコを吸っているのがカッコいい」を引用し、「じゃ、渋い顔をしてタバコでも吸っきますか!」と去っていく劇団ひとりさん。コチラの心は最後まで掴まれっぱなしだった。

【文:ヨシムラヒロム】

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