「テレビのお笑いにうんざり」している人へ ネトフリの推しフェミ・コメディアン三選

「テレビのお笑いにうんざり」している人へ ネトフリの推しフェミ・コメディアン三選

「GettyImages」より

 こんにちは、コメディアンのあきおです。フェミニスト・コメディ・ユニット、ハッカパイプスのひとりとして活動しています。

 インディーズで細々とライブを行ったり、コンテンツについて好き勝手に語らう記事をWeb上に書いたりしていますが、聞いたこともないという方がほとんどではないかな。売れようと思って宣伝したり、一生懸命仕事取りに行ったりしてるわけじゃないからね。

 出演いかがと声をかけてもらったら、まず先方はフェミか? 少なくともセクシズムに加担していないか!? ってチェック(お互いのためにね!)して、ただでさえ少ない仕事の中からさらに選ぶし、そもそもそんなに売れようとも思ってないからね。

 大っぴらにフェミニストでーすと看板に出しながら活動しているだけでも、いつセクシストやレイシスト(ほとんどの場合併発してるけど)の鉄砲玉に突撃されるかわからないじゃない! フェミのみなさんならこの恐怖感じたことあるはず。悲しいぜ、悔しいぜ、でもいまこの国はまだそんな状況! ジェンダーギャップ指数121位(2019年時点)はダテじゃないよ。

 ハッカパイプスのネタの種は、普段フェミ仲間と話しているときに生まれるものがほとんど。雑談もだいたい「こういうセクシストがいた」っていう愚痴、目撃情報、被害報告から始まるから。で、「あるある!」みたいな。セクシストってパターンが決まってるから、それ自体あるあるネタなんだよね。フェミが集まるとネタも集まるわけ。

 社会的弱者、女性やマイノリティの人々が受けている不当な差別を笑いに昇華して、疲れたフェミニストを癒すこと。これが私のフェミニスト・コメディアンとしての当面の目標です。

日本のお笑い、もう観れない。

 さて、フェミだち(フェミともだちの略)と集まって話していると、みんな口をそろえていうのが「テレビのお笑い、もう観れない」。テレビっていうのは、地上波で放送される映像コンテンツのこと。ネタ番組だけでなく、バラエティ番組、ニュースショーでさえコメンテーターとしてお笑い芸人が出ている昨今、これはツライよね。

 かくいう私も昔はお笑い番組が大好きでした。ボキャ天、オンバト……いま中堅やベテランといわれる芸人のお歴々が新人といわれていたころか。イジリの名のもとに行われる差別やいじめ。ひとの容姿や体型、恋人の有無や既婚・未婚など、プライバシーに関わることにすぐ口出しする。弱者を笑いものにするこの日本のお笑いのスタイル。ウン、もう観れない。

 いまも、ほとんど変わっていない。社会問題への無知でフザけた見方も。ついこの間だって実力も人気も経験値もある漫才師が、あろうことか電車内の痴漢を笑いのネタにしやがった。





 開眼(英語でいうところの"Woke")しちゃったら、そうした番組が社会に与える悪影響をもう分かっているから、他人事じゃないんだよ。こっちは笑いたくてお笑い番組を観るのに、傷つけられるなんてゴメンだね。

 さて、そんなツライ地上波テレビに代わって私がよく観ているのが、ネットフリックスやプライムビデオなど、いわゆるVOD(ビデオ・オン・デマンド)。好きなときに好きなものだけ観れるし、バカなコマーシャルで凹む心配もないからね(価値観化石なオッサンしか出てこない最悪な番組のコマーシャルを突然流してくるところもあるけど。ヘイ、プライムビデオ、聞いてっか?)。

いま観てほしい推しコメディアン!

 いまや見放題サービスはいろいろあるけど、私が一番利用するのはやっぱりネトフリ。オリジナルのコメディ作品が多くクオリティが高く、傷つく可能性はほかよりも格段に低いから(あっ、もちろん日本オリジナル作品はまったく話が別だから気をつけて!)。

 何を隠そう私がスタンドアップ・コメディというものを観るようになったのもネトフリのおかげ。コメディ映画に出ていて気に入った俳優のほかの作品が観たくて名前で検索したら、その人が超政治的なスタンドアップ・コメディアンで、そのコメディ・スペシャルを観たのがきっかけ(ちなみにそれはデイヴィッド・クロス)だった。

 政治的なこと、さらには宗教のこと、日本では口にするのも絶対タブーとされることを次々ネタにして会場を盛り上げる様子。不愉快がって、途中で帰るお客までいる(その客席の様子を映してそれもネタにする)……1人でしゃべって客席を沸かす、日本のいわゆる「漫談」と似ているけども、まるで違うその会場の雰囲気。すぐにどっぷりスタンドアップ漬けになり、しまいにゃ自分でも舞台に立つようになってました。

 ということで、いまや毎日がネトフリコメディ祭り。地上波観てるヒマねぇよ。お気に入りのネタは、日々「あっこれは◯◯というコメディアンのジョークなんだけど」と出典も逐一セットで(パクりになっちゃうからね!)受け売りしていたら、「もっとそういうネタが聞きたい、おすすめのコメディアンを教えてほしい」と友人やライブに来てくださったお客さんからよくいわれるようになりました。たくさんあるんだけど、いかんせん時間が足りない。ということで、コラムにしないかというお話をいただいて、こりゃ願ってもない機会だと思い、こうして長い前口上を書いているわけです。



 といっても推しコメディアンもいろいろ、話したいことも「こういうネタならこの人!」から「この人面白いと思ってIMDb*調べたら、あの映画であのキャラクターを演じていた人で『ごん、おまえだったのか』状態!」まで、メチャクチャあるんです。馴れ初めの紹介も含めたら未来永劫終わらないので、ひとまず、いま推している3人をかいつまんでご紹介したいと思います。*Interbet Movie Database=米国発の映像コンテンツ総合サイト。

※以下で引用するジョークの意訳:あきお

ハリ・コンダボル Hari Kondabolu

まずはこの人、ハリ・コンダボル。彼の公式YouTubeチャンネルにライブの様子がたくさんあるほか、ネトフリに単独スペシャルもあります。 “Hari Kondabolu: Warn Your Relatives” on Netflix



 そのネタは自身の差別体験を含めた人種差別ネタから宗教ネタまでいろいろ。本人によるとお母上がフェミニストかつユーモアあふれるお方で、その影響を色濃く受けた結果、いまの芸風があるそう。

 ハリがどれくらいフェミかというとベル・フックスと大学で対談イベントをするくらい。そう、あの『フェミニズムはみんなのもの』のベル・フックスだよ! 話は逸れるけどフックスの同書は非常にとっつきやすいフェミニズムの本だと私が感じたため「フェミニズムに興味があるけど、どんな本を読んだらいい?」と聞かれたとき、オススメするうちの一冊でもあります。

 で、そんなハリの数あるジョークの中でも私が大好きなのが、「フェミニズム男根ジョーク」("Feminism Dick Joke")。本当にそういうタイトルなんだってば! 上記のフックスとの対談でも、フックスにせがまれて(!)披露しています。今やかなり昔に感じるけど、ヒラリー・クリントンが民主党の大統領候補として出馬した2008年から2016年までの長いあいだ、ツアーで頻出したジョークみたい。こんなジョーク。

????????

「いままでこの国で女性大統領が誕生したことはないよね? 大きな理由はもちろんセクシズムでしょ。たとえばこんな事をいうヤツがいる。

『女性大統領なんて冗談じゃねえ! 女に大統領なんかやらしてみろ、月に一度生理でおかしくなっちまって国家をブチ壊すぜ!!』

こういうことを本当に信じてるヤツがいる。『女性は生物学的理由により定期的に正常な判断力が失う』って信じてるヤツが。

さて、僕は偶然ペニスと睾丸を持って生まれた男性ですが、僕の正常な判断力は5分から7分に一回失われます。ここだけの話、失われた正常な判断力と共に朝目覚めることもしばしば。

以上、これが『ハリ、フェミニスト・男根・ジョーク作れる?』に対する答えです。はい。できあがり」

フォーチュン・フィームスター Fortune Feimster

 お次はこの方。オープンリー・レズビアン・コメディアンの中でも今一番私が注目してるフォーチュン・フィームスターです。

 待てよ。オープンリー・レズビアン・コメディアンがほかにもいるの!? います。もちろんオープンリー・ゲイ ・コメディアンもたくさん。そういう"枠"のようなものがあるくらい、自身のセクシュアリティを公にしているコメディアンがいること自体、未来に生きてる! 凄すぎるぜ!

 たとえばオープンリー・レズビアン・コメディアンなら映画『ファインディング・ニモ』シリーズのドリー役で日本でも有名なエレン・デジェネレス。ネトフリ、アマプラ、両方で単独ライブ映像があり、ドラマシリーズも公開されたティグ・ノタロが大御所かな。ついこのあいだ、ゴールデングローブ賞授賞式でケイト・マッキノンがエレンに感謝のスピーチをしたのには、もうちょちょぎれ滂沱って感じだったね!

 で、私が注目のフォーチュン。初めて観たのはネトフリの、20分くらいずつのショート・スタンドアップ・コメディシリーズ “The Standups” シーズン1でした。

「ゲイ・コミュニティで『チック・フィレ』の不買運動が起こったときは超ツラかった。I'm fat first, lesbian secound. That's the order. だって私は第一に太めで、第二にレズビアンなわけ、そういう順番。 あそこのチキンは私にはゲイフレンドリーな味に思えるし! 店名も『チック・フィレ』って、お洒落なフランスのレズビアン・バーの名前みたいじゃん!」

 共和党とトランプが大嫌いな先輩コメディアン、チェルシー・ハンドラーのニュース・ショーCheck out “Chelsea” on Netflixや、トレヴァー・ノアのニュース・ショーThe Daily Showにたびたびゲスト出演。娘イヴァンカや前大統領報道官サラ・ハッカビー・サンダースなど、トランプ周りの人間のパロディモノマネを披露してました。サンダースに扮したフィームスターのメイク・チュートリアル(ビューチューバーがよくやってるやつ)とか。



「Just like the foundation of America,it's Republican, it's strong, and it's white. ...It looks pretty brown. これがファンデーション。アメリカの"ファンデーション"(基盤)と同じように、共和党で! 強くて! ホワイト! まぁこのファンデはブラウンに見えるけど……」

「次はチークね。チークのカラーはピンク。ピーチはダメ。"インピーチ"(弾劾)っぽいから」

 で、パロディモノマネはこれだけじゃない! ネトフリのオリジナル・ドラマ・シリーズ“Champions”では、レズビアンのスポーツジムスタッフ役で出演。商売敵の女性専用ジムにスパイとして潜入、入会面接で

「私は異性愛者の母親"Heterosexual mother"ですけど、スリムになりたいんです。私の男性の夫"Male husband"から『魅力的じゃない』っていわれて……夫はゲップしてケツを掻いて私のプレイボーイを読むばっかり!」

 ってこれはレズビアンによるヘテロ女性のモノマネだ(しかも下手)!

 そんな大注目のフォーチュン、今月(2020年1月)にいよいよ単独のコメディスペシャルがネトフリに来る!! “Fortune Feimster: Sweet & Salty” on Netflix



 配信開始と同時に通知が来るよう、私はもうマイリストに追加したよ。

ミシェル・ウルフ Michelle Wolf

 最後はこのひと、ミシェル・ウルフ。ウルフ。ラストネームがもうすでにフェミ羨ましいじゃありませんか。

 2018年に彼女のニュース風刺バラエティーショー(ホストが時事ネタをユーモラスに紹介する番組の一形態……このジャンルの決まった名称って何? News Satire?)“The Break with Michelle Wolf”を観はじめたときは、「超ヤバイスニーカーに超ヤバイ声の人だな」くらいにしか思ってなかったんだけど、開始5分でミスUSAパージェント(いわゆる「ミスコン」)を痛烈批判、20分後にはコメディ・ライターの女友だちをゲストに、カウチで、

「子どもほしい?」
「絶対いらね〜!」
「女が『子ども絶対いらね〜』っていったときの世の中の反応、イカれてるよね」

とチャイルド・フリー・トークに花を咲かせるぶっ放しっぷりでイチコロ。



 この番組シリーズ自体は1シーズンで終わっちゃって寂しくしていましたが、ついこの間、ミシェル単独のコメディ・スペシャルが公開! “Michelle Wolf: Joke Show”



 時間の9割が性の話題で過ぎていくすごいショーだが、なかでも私がハイライトしたいのは疾風怒濤の生理ジョーク。

「"We gotta stop being cute. (...) All the names for periods suck.Period,''time of the month,' 'Aunt Flo.' They all suck. (...) A period should be called 'bloody tissue falling out of a hole'. 『生理』だの『月イチのあれ』だのキュートに呼ぶのはやめて、これからは『血まみれの組織が穴から落下』といおう!」

「男に生理があったら? スパイダーマン柄のタンポンができる。手からヒモ出してて……」

 スパイダーマンタンポンは気に入りすぎて、私が最近一番受け売りしてるジョーク。もう私から耳タコよというみんなも、ぜひフルで観て! なぜって必見なのはこれだけじゃなくて、エクストリームすごい、アボーション・ジョーク。そう、abortion(中絶)がテーマのジョークだよ。

 日本では中絶技術がアホみたいに旧式なうえ、受ける人にとって懲罰的、かつ中絶そのものが周囲によってスティグマ化されやすいことはご存知のとおり。さすが人権後進国! イヨッ121位! ジェンダー平等レースをムーンウォーク! そんな風土があるから、中絶ジョークなんて……たぶんあと5億年くらいかかるだろう。

 もちろん、いわゆるPro-Choice対Pro-Life論争*で、常に中絶の権利が政争のなかで危険にさらされているアメリカという国だからこそ、こうしてハッキリ主義主張をしていく必要性がある、というのもあるだろう。*Pro-Choice(中絶を女性の権利とする人たち)とPro-Life(生命を尊重し人工妊娠中絶に反対する人たち)の論争

 でもそれに加えて、私はこうして当事者によって自由に語ること、そのものに価値があると感じる。ミシェルはジョークをこうやってシメてる。

「中絶を受けた人に対して恥とか罪悪感を背負わせるようなネガティブな論調はうんざり。中絶は受ける/受けた本人のもの! どういうふうに感じたっていい、考え方は自由。本人が大事(おおごと)だと思うならそうだし、違うなら違う。どっちも正しい!」

????????????

 回し者かってくらいネトフリの話ばかりしてすみません。ネトフリ(ジャパン)さん……各国内でしか公開してないコメディショー、まだまだ多いですよね? 海外旅行に行ったとき必死で観てますけど、本来の旅行がおざなりになる勢いで必死に観るもんで疲れちゃうので、もっともっと日本でも公開して下さい、旧時代的な性差別オリジナルドラマとか作ってる暇があったらよ。こんなコメディの、こんなネタがある! ってことだけでも、この国では貴重なエンパワメント源だったりするんです。ね? この回し者に免じて。

 ということで、猛ダッシュで現在の推しコメディアン3人を紹介して参りました(予定文字数はガンガンにオーバー)。またお付き合いいただければ幸いです。今回の3人についても、ほかのコメディアンやコメディ番組についても、たぶんまた長々書く日も来るだろうと、ネトフリドラマのように次シーズンを予感させつつ。

関連記事(外部サイト)