神奈月ものまね矜持「3秒〜4秒という限られた刹那に生きる」

ものまねタレントとして、テレビだけでなくYouTubeでも活躍中の神奈月さん。「なんとなく撮りゃいいや」ぐらいの感覚で始めたチャンネルも、継続してやりながら「メイクもちゃんとして、しっかり作り込んで」と少しずつ学んでいくうちに登録者数も増えて、一部(?)からは熱狂的な支持を集めている。最近、大変な世の中で心が沈みがちな人は、神奈月さんの動画を見て「シャイニングウイザード!」。

■炎上狙いではなく自分のものまねや芸風で笑いを届けたい

――YouTubeでもプロ意識全開ですが『神奈月のカンチャンネル』(以下、『カンチャンネル』)のコメント欄はチェックされていますか??

神奈月 一応、チェックはしています。「この動画にはどのくらい来てるんだろうな」「あのネタには、どういう意見があるんだろうな」っていうのはもちろん気になりますけど、変なコメントはたぶんあんまり無いほうだと思うんですよね、評価として。

――ほとんど見かけないですよね。私、こんなに平和なYouTubeチャンネルのコメント欄って初めて見た気がします。

神奈月 俗に言う「炎上する」とか「炎上商法」とかってあるじゃないですか。それで注目されるっていう方法もあるでしょうけど。でも、僕が今までやってきた、ものまねだったり芸風だったりっていうのは、たぶんそうじゃないと思うんですよ。みんなが世間で思ってるイメージ以上に、僕がものまねでいろんな人を演じることによって「よくやってくれた!」みたいに、味方になってくれてる感じが今まであったんで、今のパターンでいいのかなって。

わざと酷評コメントを多くしようとかっていうのも思わなくて。「カンチャンネル好きです」「もう単純に大好きなんです」っていう人が、見て楽しんでくれればいいのかなっていう気持ちが強いです。

▲収録の合間もスタッフさんと「どうすれば面白くできるか」を真剣に議論

――私みたいに、以前から神奈月さんのものまねを拝見してる人間にとっては「【フライングゲット/AKB48】読売ジャイアンツ48人でものまねメドレーしてみた」の、清原和博さんの指3本を立てたものまねは最高でした。

神奈月 あれも、なんて言うんですかね。プロレスもそうですけど、3秒から4秒で1人のものまねをやらないといけないじゃないですか。そうなったときに、じゃあ、どのシーンが、皆さんの印象に残ってるのかっていうのを3秒で表していくには、そのチョイス(指を3本立てる)しかないというか。みんながやるような、たとえばスイングのものまねよりも「あ、あのシーンだ!」って語れるような。「僕しかわかんないですよ、あれ!」みたいに言われる方がちょっと嬉しいですね。

――清原さんが3本指を立てるシーンって、たぶん、あのデッドボールだよなって。

神奈月 そう、藪(恵壹)さんですよ。あの清原さんの仕草で「あ、ピッチャー藪だったんだ」っていうのを勝手に想像してくれるっていう。コメント欄にも気づいた人が書いてくれてるんですけど、それが嬉しいですよね、やっぱり。

■奥さんに説明するのが面倒くさいというのが僕の動画

▲身振り手振りを交えながら、ものまねに対する真摯な想いを語る神奈月さん

――見ている人がどのシーンを思い浮かべるかを意識してるんですね。

神奈月 はい。昔、ある日本の歴史の番組なんですけど、歴史上の人物をいろんなプロレスラーで演じるっていう企画があったんですね。何々の戦い、何々の合戦、何々の変だったら、こっちが田延彦で相手が武藤敬司、みたいな組み合わせがあるなかで、僕はどの歴史だったかは覚えていないですけど、(ケビン・)ランデルマンがミルコ(・クロコップ)に勝った試合があったじゃないですか?(2004年4月25日『PRIDE GRANDPRIX 2004 開幕戦』ヘビー級グランプリ1回戦) 

――大番狂わせだったので強く記憶に残っています。

神奈月 僕はあのときのシーン(ランデルマンがミルコをKO)のランデルマンをやったんですけど、そしたらテレビを見た人が「あのマウントから殴るシーン、ランデルマンがミルコをやったときのシーンですよね」っていうのを言ってくれてたんで「あ、そういうもんなんだな」「こういうのを求めているんだね」と、そのときに感じました。

わざわざ……なんて言うんですかね、いわゆるこっちで誰々が何々をするシーンですって伝えなくても、見てる人が想像してくれて、興奮して「あのシーンだよ!」「いや、俺はあのシーンだと思うよ!!」っていうのを、上から目線じゃなくて、ちょっと宿題みたいな感じで出すと、見ている人が解いてくれるんですよ。

――さっきの清原さんのものまねも、まさにそうですよね!

神奈月 だから僕は、あえて自分が思いついたあのシーンをやっちゃおうみたいな。そうすると、もう受け手(視聴者)が「あれは10.9の四の字ですよね〔1995年10月9日「新日本プロレス vs UWF インターナショナル 全面戦争」の武藤敬司VS高田延彦のフィニッシュホールド〕」とか「三冠のときのシャイニング・ウィザードだな」とか想像してくれるし、興奮するとも言ってくれました。ただ「奥さんとかに説明するのが面倒くさい」とも言われますね(笑)。

――我が家でも、私が1人で大笑いしていて、奥さんが「何が面白いかわかんない」と。たしかに「10.9の四の字」を説明するのは大変です(笑)。

神奈月 だから異性とは一緒に見ないんだと。神奈月さんの(ものまね)は友達か自分1人で見るんだ、みたいな(笑)。よく言われますよ、それ。だから、媚びない、媚びないです。ただ食いついてくれる分には有難いですよっていう話ですね。

――私はプロレス黄金世代の人間ですが、我々の80年代後半とか90年代の“時代”を神奈月さんが共有してくださってるイメージです。

神奈月 なんか、ほら、自分でもやっててわかるんですけど、あのころの思いって強いじゃないですか。あのころの興奮をもう1回、皆さんによみがえらせたいというか。僕も20代の血気盛んなときに、(80年代後半とか90年代は)熱中して見てたんで。

――ここまでのお話ですごいな、と思ったのは「3〜4秒の刹那」というか、たしかに「2億4千万のメドレー」なんていうのは、まさに1人を3〜4秒で表現しなければいけないわけですよね。

神奈月 そうですよね。48人いる登場人物の、どこのシーンをメドレーに引っ張ってくるかっていうのはすごく考えました。でも、それは自分自身のなかで一番印象にある部分を表現していくだけだな、と今では思っています。

■自分しか出せないエッセンスを動画では出していきたい

▲神奈月さんの素敵な笑顔もまた私たちをハッピーな気持ちにしてくれる原動力

――たとえば、スタン・ハンセンのものまねだったら、一番簡単なのは「ウィー!」と雄たけびをあげることじゃないですか。でも、神奈月さんの場合、ハンセンの独特な膝の運び方で表現するという。

神奈月 「ウィー!」は誰でもできるなと。大事なのは「ウィー!」じゃないところですね。あと2番手、3番手ぐらいのシーンでも、詳しい人ってやっぱり「あ、このシーンみんな知ってるよ」って冷めちゃうじゃないですか。

それを持ってくるよりも、さっき言ったみたいな「これは俺しか知らないな、このシーンはわかんないだろうな」とか「この動きを持ってきた方が興奮してくれるな」というのが僕もやりやすいというか。あまりにもオーソドックスなものばっかりだと、ちょっと自分自身もやっていて面白くないというか。

――なるほど! あとプロレスのメドレーで、アブドーラ・ザ・ブッチャーのフォーク攻撃からテリー・ファンクへの流れに意表をつかれました。普通だったら、お兄さんのドリー・ファンクJr.からテリー、そしてジャイアント馬場さんみたいな、王道の流れをイメージするじゃないですか。

神奈月 そうですね、組み立ても意識してます。ブッチャーのフォークのように、この小道具を次どうすればいいのかとか。スーパー・ストロング・マシーン1号、2号、3号みたいな、ああいうくだらないものも挟みながら、緩急をつけているつもりです。

――そのほかに『カンチャンネル』で大切にしてることはありますか?

神奈月 どうですかね。今はまだやってる最中ですけど、やっぱり「神奈月にしかできないなっていうエッセンスは出していかないといけない」と思うんで。そこだけですかね。「誰も手をつけないようなことをやろう」というか。

――ハリウッドザコシショウの「サブリミナル」なんて誰も手をつけませんよね(笑)。

神奈月 なんであれをやろうとしたんだって話ですけど(笑)。

――失礼な質問かもしれないんですけど、再生回数よりも大事なものがあるということでしょうか。

神奈月 もちろん。再生回数、それは伸びたほうがいいですけど、自分自身が「この人をやってみよう」とか「この人をやったら楽しいな」とか「この人を表現できたら笑わせることができるかな」って思わないと、動画を出してもつまんないじゃないですか。演じていてもそうだし。そういうところのチョイスが何よりも大切というか。

――一方で、対比的に井上陽水さん、大友康平さんはガチ歌です。

神奈月 そうですね。あのシリーズは曲の部分が大きいんですけど、(動画を見てもらうために)ちっちゃい線路を引いとかないといけない。もちろん、いろんな人に見てほしいっていうのも正直ありますからね。そこ(ちっちゃい線路)から『カンチャンネル』という駅に入ってきて、昔話だったり、メドレーだったり、ほかの動画を見て「あ、神奈月って、こういうことをやるやつなんだ!」っていうのが総合的に伝わればいいですね。

コロナ前って、ものまね番組やバラエティーでしか見る機会がなかったと思うんですけど、動画が入り口になって、僕のことを知らない人が見てくれて評価してくれれば。

――結果、馳さんでの「元気出せよ!」じゃないですけど、単純に動画を見て、大笑いしてて元気をもらってる人も多いと思います。

神奈月 ありがとうございます。実際、そういうふうに言われたこともあったんです。自分がテレビでやったものまねを見たときに「ちょっと個人的なことで落ち込んでたけど、神奈月さんのものまねを見て、すごい元気になって大好きになって、助けられました」と言ってもらえて。そういう意見を聞けるって嬉しいですよね、やっぱり。そんな大層なことを言われても、とは思うんですけど、でもそれで元気になってもらえれば。

――ちなみに、ワニブックスの「NewsCrunch」の見てくれる人は、30代後半から40代後半の男性層が多いんです。

神奈月 ああ、いいですね。それはピッタリです、30代後半から40代後半の男性(笑)。これからも、そういう世代に楽しんでもらえるような動画を作っていきたいなと思うので、ぜひ『神奈月のカンチャンネル』のチャンネル登録お願いします!  あと、最後にひとこと「おい、元気出せよ!」。

▲収録終了直後にもかかわらず取材のご協力をありがとうございました!

■プロフィール

神奈月(かんなづき)

1965年11月3日、岐阜県生まれ。そのクォリティの高いものまねで『ものまねグランプリ』をはじめ、テレビや舞台などで幅広く活躍する。ものまねのレパートリーは武藤敬司、長州力、天龍源一郎、前田日明、木戸修、馳浩などのプロレスラーから、井上陽水、吉川晃司、大友康平、吉田鋼太郎、野村萬斎などの大物芸能人まで大物数知れず。昨年からはYouTubeチャンネル『神奈月のカンチャンネル』を開設し、そのオンリーワンな動画が話題を呼んでいる。

『カンチャンネル』を見てプロレスに逆流してくれたら嬉しい | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ)( https://wanibooks-newscrunch.com/articles/-/1869 )

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