ミュージシャンが選ぶ、すぎやまこういち氏のドラクエ音楽3選

はじめまして、SuiseiNoboAz(スイセイノボアズ)というバンドで、ギターとピアノを演奏している高野メルドーと申します。

▲SuiseiNoboAz(右から2番目です)

「アプリゲット」というスマホゲームアプリ専門の情報サイトで、毎日のようにゲームを紹介してもいます。

2021年9月30日、日本の偉大な作曲家がこの世から旅立ちました。

その人の名は、すぎやまこういち。

多くの歌手にカバーされた「亜麻色の髪の乙女」。ザ・タイガース「花の首飾り」、ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」、ガロ「学生街の喫茶店」……。

数々の昭和歌謡のヒット曲を生み出したのち、『ドラゴンクエスト』シリーズなどのゲーム音楽を手掛け、日本では聴いたことがない人はいないほどの楽曲の数々を生み出しました。

ゲームライター兼、ゲーム音楽に強く影響を受けた演奏家として、すぎやまこういち氏の名曲たちを、厳選して紹介させていただきたいと思います。

■ドラクエのメインテーマは5分で思いついた!?

『ドラゴンクエスト』より「序曲」

『ドラゴンクエスト』シリーズの、主にタイトル画面で流れるオープニングにしてメインテーマ。

日本で一番有名なゲーム音楽と呼んでもいいかもしれません。

勇壮なファンファーレから、あの有名なメロディにつながる高揚感。冒険がはじまる! という気持ちを、これでもかと後押ししてくれますね。

東京オリンピック2020の開会式、選手入場に使われたことも記憶に新しいかと思います。

個人的には、オリンピックの開催や政府の対応については懐疑的な点も多かったのですが、長年愛してきたゲーム音楽が世界に向けて放送されたことに、複雑な思いを抱えながらも、湧き上がる高揚感が否定できず、オタクとして日陰を歩くように生きてきた自分が祝福されたような気持ちになりました。

某動画サイトでは、愛着と敬意を表する意味をこめて「国歌」とすら呼ばれているとか。

ところで、この「序曲」は、なんと5分で閃いたという逸話があります。

パブロ・ピカソの(絵を描くのにかかった時間は)「1分プラス80年」という言葉に感銘を受け「54年と5分でできた曲」という発言をしたというエピソードが残っています。

「曲をつくるのは5分+それまでの人生」

それまでの54年があって、初めて5分で「序曲」を生み出すことができた。

なんとも洒脱なセリフですね。

■シリーズ史上最難のタイトルを締めくくる名曲

『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』より「この道わが旅」

シリーズ屈指の難易度を誇る『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』(以下、ドラクエII)。

「マンドリル」や「ドラゴンフライ」にフルボッコにされ、たどり着いた最後の大地、ロンダルキアで「ブリザード」のザラキに理不尽に殺される…。

この曲は、そんな困難に満ちた冒険の果てに、大神官ハーゴン、そして最終ボスの破壊神シドーを倒した勇者たちを迎えるエンディングテーマです。旅の終わりの祝祭感と、同時に一抹の寂しさをも感じさせる雄大なメロディに酔いしれてください。

90年代にはテレビアニメ『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』のエンディングテーマとして団時朗さんが歌っていたことで、この曲を覚えている方も多いかもしれません。

「履き潰してきた靴の数と同じだけの夢達」

ジュブナイルな歌詞をつけられた、Bメロが軽やかでいて美しいです。

この曲は、長崎国際テレビやテレビユー福島の朝時間帯のお天気情報のBGMに使われたり、卒業式に歌った人も多いとか。

また、オーケストラアレンジとファミコン版のメロディは絶妙に違うので、ドラクエフリークは両方を要チェックですね!

余談ですが、私はこの難易度の高い『ドラクエII』に妙な思い入れがあって、超長い「ふっかつのじゅもん」(パスワード)を覚えているくらいでした。

ふっかつのじゅもんと言えば、入力する画面で流れるBGMを牧野アンナさんが歌った「Love Song 探して」も、いかにも80年代的なアレンジで、2021年でもナウいです。死語ですね。

■「この曲が作れたら死んでもいい」と言わせた名曲

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』より「おおぞらをとぶ」

勇者ロトシリーズ、三部作の最終作にして、シリーズ屈指の人気作『ドラゴンクエストIII』。

仲間を編成し、転職もできる自由度の高いゲームシステム! 悪のカリスマ、大魔王ゾーマが登場したときの衝撃!

発売日前日には、販売店の前に徹夜の行列ができるなど、社会現象にまでなったそうです。

この曲は世界中を冒険し、7つのオーブを集め、ついに復活した不死鳥ラーミアを乗り、空を飛んでいるときに流れるBGM。

しかし、このメロディの美しさを、何に喩えられましょうか。言葉にしたら嘘にならないでしょうか。

私はあまりの衝撃にゲームの手を止め、世界を何周もぐるぐると回ってしまったくらいでした。そしてきっと、数多の少年少女も自分と同じようにゲーム音楽に打ちのめされたのではないでしょうか。

4音しか同時に鳴らせない、ファミリーコンピューターの電子音は、オーケストラやロックバンドの伝説のライブに劣ることなく、雄弁に鳴っていました。

『ストリートファイターII』?などの音楽を手がけた作曲家、下村陽子氏(『ライブ・ア・ライブ』や『聖剣伝説レジェンドオブマナ』…最高です!)は、この曲を「最も衝撃を受けたゲーム音楽」と絶賛し、もしこの曲が作れたなら「その瞬間に死んでも構わない」とまで語っていたとか。?

スマホで撮影する写真1枚ほどもない記憶容量のゲームソフトに広がる壮大な世界。ドット絵のグラフィックを雄弁に彩ったのは、すぎやまこういち氏のBGMだったと思います。

ちなみに、オーケストラアレンジでもフルート・オーボエ・クラリネットなどを大々的にフィーチャーし、美しくアレンジされ、新しく追加された中間部が完璧です。

『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』では「おおぞらに戦う」という曲で本曲が抜群のアレンジを施され、そして究極的なまでに感動的なタイミングで流れます!

なお、スクウェア・エニックスは、ドット絵をベースにした背景に、3D的な効果を加える“HD-2D”と呼ばれる手法で制作を行う『HD-2D版 ドラゴンクエスト III』としてリメイクされることを発表しています。これからもワクワクがとまらないですね!

■競馬のGIファンファーレもすぎやまワークス!

いかがだったでしょうか。お粗末ながら、神曲と呼んでもさしつかえない楽曲を紹介できたかと思います。

申し訳ないですが、3曲では全然紹介し足りないので、選びきれなかったのを早口で紹介させてください!

『ドラクエ』は街や戦闘のBGMも格別です。バトルBGMならなんといっても『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の最後の戦いで流れる「勇者の挑戦」のスピード感! 最終決戦の高揚感、これからはじまる死闘をメロディで「物語」ります。あるいは『ドラゴンクエストIV』の通常バトルBGM「戦闘〜生か死か〜」の変拍子具合もたまらないですね。『ドラクエIV』はラスボスも組曲形式になっていて、ボスの変身とマッチしてる演出が凄まじいです! 思わず8回逃げたくなってしまう人も多かったのでは……。

街のBGMでは『ドラゴンクエストVI 幻の大地』で流れる「木漏れ日の中で」や『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』の「やすらぎの地」あたりが大好物です。メロディからマイナスイオンが発生しているかのように、心が浄化されていきます。オーケストラバージョンとファミコン版の違いも味わい深いので、ぜひサウンドトラックをチェックしてください!

本記事ではドラクエシリーズをメインに語らせていただきましたが、『風来のシレン』シリーズ、スーパーファミコンの『46億年物語』のサウンドトラックもさすがの完成度。

そして、親の声より聴いたかもしれない、東京競馬場・中山競馬場のG1ファンファーレ! あの勇壮なメロディも、すぎやまこういち氏によるものです。

まだまだあります。エンディングが衝撃的なことで有名な、アニメ『伝説巨神イデオン』の主題歌も、これでもかと唸るすぎやま節。

特撮映画『ゴジラvsビオランテ』のサウンドトラックは、『ドラゴンクエストIV』と同時期に手がけていたためか、かなりメロディが似ている曲もあって、ドラクエフリークの人はビックリするかもしれませんよ。

そうそう! 『帰ったきたウルトラマン』の主題歌「戦え!ウルトラマン」も、すぎやまこういち氏によるもの。

ドラクエの戦闘曲が好きな人にはニヤリとさせられる曲調になっています!

■ゲーム音楽は「聴き減りのしない音楽」

すぎやまこういち氏は、ゲーム音楽について「何百回も聞くものであるから、聴き減りのしない音楽」という信念で作られていたようです。

「理屈でこね回したメロディより、すらっと思いついたメロディのほうが自然」、そう発言されていました。

自分語りになりますが、わたしは『ドラゴンクエストIII』の「ほこら」のメロディを、物心つく前から、おもちゃのピアノで演奏していたそうです。おそらくですが、生まれて初めて演奏した曲といえるでしょう。

オーケストラの音を「3音でどう表現するか」ということに注力していた、すぎやまこういち氏。

久しぶりに弾いてみたら、左手の伴奏がなくとも、神聖で厳かな雰囲気は伝わるのだなぁと、これからも永遠に残る曲に祈りを捧げたくなりました。

なお、本記事ではネタバレにかなり配慮しているつもりなのですが『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』や、最新作である『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』でも、本作で紹介したBGMが落涙のタイミングで流れます。

すぎやまこういち氏が、作曲を手掛けた最後の作品となってしまった『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』は、今のところ発売日も未定ですが、発売を待ちわびるゲームがあるって、大げさかもしれませんが、それだけで生きる理由になりうると思えませんか?

最後になりますが、すぎやまこういち氏へ謹んでご冥福をお祈りいたします。

いやー、音楽って、本当に素晴らしいものですね!

■プロフィール

高野メルドー

紫色を偏愛するギタリスト。SuiseiNoboAzなどでギター・ピアノを担当。2020年12月、フルアルバム『3020』をリリース。 「アプリゲット」で今まで数千本のスマートフォンゲームを遊び、紹介しているゲームライター。「MOTHER」や「地球防衛軍」シリーズ「さよならを教えて」がフェイバリット。サウナ&銭湯、もつ焼き等が大好き。好きな水風呂の温度は16度。愛するラーメンは荻窪の「味噌っ子 ふっく」。

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