AMEFURASSHIが作る熱狂の磁場 TOUR 2023 “Spring”レポート

■半年ぶりにAMEFURASSHIのライブへ

2020年から2021年にかけての約100週間、僕はこのNewsCrunchで『毎週アメフラっシ!』という連載を担当してきた。

毎週、記事をアップしなければならないのでライブ、リリースイベントはもちろん、番組の収録にまでお邪魔して密着取材を続けてきた。本当に毎週、彼女たちに会っているレベルだった。

その連載が終わっても、2ヶ月に1回ぐらいのペースで取材を続けてきたのだが、昨年の秋を最後にちょっと縁遠くなってしまった。

連載を始める前も、ももクロ(ももいろクローバーZ)の現場などで年に3~4回はパフォーマンスを見てきたので、半年近くブランクができるのは、結成以来はじめてのことになる。

別に興味がなくなって追わなくなったわけではない。いろいろと規制が解除され、ライブやイベントの数がコロナ前の状況に戻りつつあり、スケジュールが調整しにくくなったこと、AMEFURASSHIの単独ライブがしばらくなかったこと……いろいろあるけれども、やっぱり半年も足を運ばなかったことには、申し訳なさしか感じない。

そんなこともあり、春ツアー取材のお誘いがあったときには「行きます! 昼も夜も!」と二つ返事で参加を表明した。なぜか東京公演の日は一日中予定が空いていたので、しっかりと腰を据えて取材させていただくことにした。

そして、のちのち気がつくのである。東京でツアー千秋楽が開催される3月10日が金曜日、つまり平日である、ということを。なるほど、僕のスケジュールが空いているはずである(ちなみに翌日からの週末は複数のアイドルイベントの取材が……)。

ん? ということは、昼の部って平日の午後3時スタートになるのか。夜の部のチケットは完売したようだが、さすがに平日の昼間では集客は難しい。大丈夫なんだろうか?

いささかの不安をおぼえながら会場入りすると、フロアには結構な数の観客が。オールスタンディングで座席があるわけではないので、何割の入りかは判別しにくいが、二階席から眺めた印象だと「うっすら満員」という感じ。なかなかの動員力である。

昨年、開催されたAMEFURASSHIのライブは、どれもこれも完成度が高いものだった。ももいろクローバーZのベルーナドームコンサートでのオープニングアクトを含めて、誰が見ても充実ぶりがほとばしるステージばかりだった。

単独ライブでは映像や照明にも凝りまくり、それらの派手な演出にも負けない、生身のパフォーマンスで観客を沸かせた。

その印象が強かったのだが、この日のステージにはそういった装飾は見受けられない。今まではツアータイトルにもメッセージやテーマが盛り込まれていたのだが、今回はあっさりと『Spring』のみ。

久々のライブをフラットに楽しもうと、大阪と名古屋でのツアー情報をシャットアウトして臨んでいたので、いささか面食らってしまった。

■シンプルな構成だからこそ完成度が際立つ

そして幕が開く。

やはりステージにスクリーンなどが降りてくることはなかったが、すぐにそんなものは必要ない、と理解した。

シンプルに4人のパフォーマンスだけで満足できるし、ステージ上の動きを追っているだけでも見どころが多すぎて、ここに映像なんかが加わったら、きっと脳内がバグってしまう。

▲愛来

 パフォーマンスの完成度の高さは今さら論ずるまでもない。もっと大きな箱で、もっとたくさんの観客の前でスポットライトを浴びるべきだと思う。

▲市川優月

こればっかりは、なかなか思うようにいかないのがエンターテインメントの世界の難しさなのだが、ここ数年、彼女たちはレベルアップすることを怠らなかった。途中でサボったり、諦めたりしていたら、きっとこのレベルには到達していなかったはず。

あとは報われるだけ、だ。

半年ぶりに見て感じたのは、パフォーマンスにしなやかさが増したこと。アイドルにこういう評価をするのはどうかとは思うが、艶っぽさすら感じるようになった。

その一方で、指の先まで意識したパフォーマンスをしながらも、客席に向ける笑顔や表情がめちゃくちゃナチュラルになっていた。本人たちが楽しんでいないとできない芸当である。

メンバーは『そんな余裕ないです! 始まる前は頭真っ白でしたから』と言うが、4人でニコニコ笑いながらそう語るところには、やはり昨年までにはなかった余裕を感じずにはいられない。

▲小島はな

このツアーでは新しい試みとして『AME6』なる企画が開催された。これはセットリストの1曲目から6曲目までを当てるもので、的中するとメンバーとのお話会(Springにかけて『バネ会』)に参加できる、という特典つき。来場した観客を楽しませる、という意味で好企画だったと思う。

昼の部では的中者がおらず、市川優月が「みんなで話し合って、いろんなパターンで投票すれば、誰か1人は当たるんじゃない?」と呼び掛ける一幕もあった。

▲鈴木萌花

■ホールへ進出の準備はもう整っている!

夜の部、ちょっと早めに会場に着くと、たくさんのファンが投票をしているところだった。みんなで話し合っている光景は見られず、それぞれが頭を捻って投票用紙に書きこんでいる。この時点で頭の中はAMEFURASSHI一色になっているわけで、最高のウォーミングアップになっている。

会場に来なければ楽しめないものを提供してくれるのは、観客にとってもありがたい話だ。

こういうクイズ形式の企画が成立するということは、毎回、セットリストがチェンジすることを意味する。

通常、ツアーというものは、同一のプログラムで全国を回るものなのだが、そこにひと手間もふた手間も加えて、新たなエンターテインメントをお届けしているわけで、それは満足度も高くなる。

2曲目のイントロが流れた瞬間、予想が外れた観客から大きなため息が漏れたが、それだけ集中してステージに没頭していたということだ(残念ながら夜の部も正解者はゼロ。ガチすぎる!)。

前述したように夜の部はチケットがソールドアウトしていたのだが、その入りがまさにパンパンで、2階席で準備をしていたカメラマンがフロアを眺めながら「これ、ライブが始まったら移動できないかも」と悩んでしまうレベルのギュウギュウ詰め状態だった。

こうなると、いやでも館内の熱気は高くなる。個人的には昼の部のように「平日の真っ昼間だけど、なんとか都合をつけて集まりました」という背徳感漂う空気も嫌いではないけど、やはり金曜夜の高揚感は格別すぎる。

メンバーも途中から楽しみすぎているのがわかった。前半はAME6対象なので、次になにを歌うのかはシークレットだが、逆に後半はイントロの前に客席のリアクションを煽るコーナーが挟まり、次になにが来るのかわかる構成になっている。

その部分や間奏を使って、バカ爆走モードが全開! いきなりメンバーの背中を使っての馬跳びがはじまったかと思えば、全力二重跳びを競いあったり、というカオスっぷり。

▲馬跳びをする愛来

とはいえ、あくまでもお遊びなので、みんな早々に切り上げるのだが、なにを思ったのか、市川優月の二重跳びが止まらない。次の曲に影響が出ても困るからメンバーも止めるが、それでも止めない。

これ、うまいこと写真に収められないかな、と思ったが、カメラマンはちょうどステージの反対側。移動が難しい超満員状態であることを考えると、絶対に間に合わない……と思っていたのだが、カメラマンが到達するまで、彼女はノンストップで跳び続けたのだ! 

▲全力で縄跳びをし続けた市川優月

まったく意味はないし、本筋には関係のない話でもあるのだが、そんなおかしなことが起きてしまうような熱狂の磁場が超満員のライブハウスに発生していた、という事実だけは記録しておきたい。

最後の挨拶ではソールドアウトの御礼、楽しかった時間への感謝に続き、メンバーは口々に「もっと大きな会場でやりたい!」と本音を漏らした。ホールへの進出、そしてホールツアーへ……もう彼女たちにはいつでもできる準備が整っている。

5月にはミニアルバムの発売が決定。それにあわせて3月31日からはリリースイベントもスタートする。11月には結成5周年を迎えるAMEFURASSHIの足どりを、ぜひ春から追いかけてみていただきたい。

▲5月16日にミニアルバム「Coffee」の発売が決定!

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〈小島 和宏〉

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