ふかわりょうが“スマホなし旅”で感じた生活の彩り、心の平穏

タレント、ふかわりょうが、岐阜県美濃地方へ“3泊4日のスマホなし旅”に行った。4月15日に発売された新著『スマホを置いて旅したら』(大和書房)では、ふかわのスマホなし紀行がまとめられている。旅を経て見えてきたものとは? 今回のインタビューでは、ふかわの“大切にしたいこと”に迫った。

▲ふかわりょう

■スマホの画面を見ていると気づかない体験がある

――この本を書くことになった経緯を教えてください。

ふかわ そもそもスマホなしの旅をしてみたくてウズウズしていた時期が続いていたんですが、なかなかタイミングがなく、その間にも、スマホへの依存度が高くなりました。だから、スマホがないと不安や不都合もあるだろうから、“ちょっとした冒険になりそうだな”という気がしたんです。

昨年の秋にタイミングがあって“スマホなし旅”を決行してみたら、予想以上の収穫があったので、以前から僕のことを気にしてくれていた大和書房の方に「こういうものでしたら書けそうです」とお伝えしました。

――昔からスマホに対する考えはあったんですか?

ふかわ 本の冒頭にも書きましたけど、まだスマホがなくて携帯電話(いわゆるガラケー)を使っていた時代、アイスランドに行ったんですが、圏外で全然つながらなかったんです。最初は不安だったのに、徐々に気持ちが軽くなった“あの実体験”が、ひとつの種になっています。

飲食店に入るとき、グルメサイトを利用することもあると思いますが、他人の価値観を経由してからじゃないと自分で判断できない。 その“もどかしさをどうにかしたいな”という思いもありました。もちろん、便利なものなので、利用する生き方があってもいいと思うんですけど、僕の中には「スマホに目を向ける時間がなくなったとき、その隙間から何が見えるんだろう」というワクワク感や期待感があったんです。

▲スマホを置いて見えたものが多かったそう

――その違和感って、なかなか気づけないですよね。

ふかわ 近所で、電線の上を歩くハクビシンを何度か見かけたことがあるんですけど、そういうのってスマホの画面を見てると気づかないじゃないですか。たぶん、そんな“ハクビシン的な体験”がたくさんあるんじゃないかなと。スマホから得られる果実もあるけど、スマホから離れて得られる果実も食べてみたいなと思ったんです。

どこかで“そぎ落とされて”しまったものって、無意識で気づかないと思うんです。ボーッとする時間だったり、思いを巡らせる時間だったり、自分で判断することだったり……そういうことを僕は大事にしたくて。

――もともと違和感に気づくタイプだったんですか?

ふかわ どこかに陽が当たったときに、日陰になってしまったほうに関心がいくことがありますね。今回だと「この便利さを享受してるときに、 何を失ってるんだろう」と思いましたが、ただ、この光を悪にはしたくない。今回もベースには「スマホを悪者にしたくない」という思いがあります。

――「『スマホのある生活』にもいいところはあるし、『スマホを手放す生活』もいいところがある」。ふかわさんは、どちらの目線も大切にして本を書かれていると思いました。

ふかわ 文明やテクノロジーの進化って素晴らしいことだと思うんですよ。ただ、僕みたいな精神が疲弊してしまうタイプは、スマホの小さい窓ばかり見てると情報が多すぎて、 “人生の迷子”になるのではないか、と危惧してしまうんですよね。

▲旅では人々との出会いも財産になったという

■スマホを置いたからこそ出会えたもの

――スマホを持たない旅は、台風もあって新幹線が停電するなどトラブルから始まりますよね。そこもワクワクしていたんですか?

ふかわ 大前提として、日本のインフラに対する安心感はありました。ただ、限られた日数のなかで、どこまで進めるか不安でしたし、本来であれば、停車中にスマホで情報収集したり、メールしたりすると思うんですけど、(スマホがないから)何も情報が入ってこない。そういった退屈も果実として味わいました。

今回「スマホを置くだけで、生活の彩りに変化があるだろうな」と、ほぼ確信に近い状態で旅に行ったんですけど、結果的にスマホを置いたからこそ、出会えたものがたくさんありました。“利便性”というひとつの価値観がありますが、生きてて「いいな」と思うことって、それだけじゃないじゃないですよね。効率の良さだけが幸せじゃないわけで。非効率なこの旅の中に、これからの豊かさが潜んでいた気がします。

――旅を文章に書き起こす際に意識したことは?

ふかわ 「スマホで埋められていた隙間から、どんな景色が見えるだろう」ということですね。この目で見た色や掴んだ感触を、いかにして言葉で伝えるか、どれだけ伝えられるかを意識しました。

――執筆中は、楽しい旅を思い出すことにもなりますし、有意義な時間だったのでは?

ふかわ 旅を追体験できるのも楽しみだったりするので、すごく好きな時間ですね。海外の旅だと、素材があって心配することないんですけど、今回は「アフリカ旅行」とか「〇〇縦断」とかそういった大袈裟なものではなく、3泊4日の国内旅行というスタンダードなもの。「スマホを置くとどうなるのか」に焦点を絞っただけなのに吸収度が違ったので、僕的にはちょうど良かったなと思います。

▲執筆中に思い出すことで旅を追体験できた

――新生活を過ごしている方も本を手にすると思います。新しい学校生活や、新しく仕事を始めた方に、何かアドバイスを送るとしたらどういう言葉をかけますか?

ふかわ 僕の場合は海外によく行きました。いろんな価値観に触れるのはいいなと思います。あと、周りの顔色が気になる人も多いと思うんですけど、周りの顔色を気にしてると、自分自身が疲れてしまうので、疲れてしまったら、スマホを置いてほしいなと思います。もちろん、無理強いはしないですけど。

もしかすると、それによって心の平穏が取り戻せるかもしれない。スマホを置くことで、彩りが変わって、見える景色も変わってくるのかなって。「世界を変える」のは難しいと思うんですけど、「彩りを変える」って難しいことではないと思うんです。もし疲れたら、そういうことをやってみてもいいんじゃないかと思います。

――最後に、この旅を終えて、ふかわさんはスマホについて、どんな未来を期待していますか?

ふかわ 「スマホを悪にしたくない」というのは前提で、スマホを持っていなくても驚かれない社会、選択肢のひとつとして「スマホを持たない」が普通にある社会になるといいなと思います。この資本主義社会で、なかなか道のりは長いのかもしれないですけど、それが健全な社会のような気がします。便利さ・利便性を追求していくと、最終的にスマホのない“手ぶら”にたどり着くのではないか、そんな期待を抱いています。

▲スマホを置いて旅してみませんか?

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