「偏見をなくしたい」大崎由希が語るグラドルとドラマーの“二刀流”

グラビアアイドルとして活躍する一方で、バンド「Little Lilith」のドラマーとしても活動している大崎由希。そんな彼女が一躍注目集めることになったのが、2016年からYouTubeに投稿している「グラドルが叩いてみた」と題した、露出の多い衣装でドラムを叩くという斬新なスタイルの動画だ。

現在最も多く再生されているLiSAの「紅蓮華」を演奏した動画は大きな反響を呼び、日本のみならず海外からも注目されるなど、YouTubeにおける演奏動画として、ひとつのムーブメントを作り上げたといってもいい。

そんな大崎にグラビアを始めたキッカケから、先駆者ならではの苦悩、Little Lilithの活動にかける思い、そして活動を通して実現したいことまでニュースクランチがインタビュー、率直な思いを語ってもらった。

▲大崎由希

■グラビアでの新しい表現を模索していきたい

――大崎さんはグラビアアイドルとLittle Lilithの二刀流で活躍されています。まずは原点でもあるグラビアを始めたキッカケから教えていただけますか?

大崎由希(以下、大崎) 高校生の頃から女性の体のラインを見るのがすごく好きだったんです。当時は美術専攻だったので、彫刻で女性の裸体を彫ってみたりとか、文化祭のポスターに女性の体を描いて怒られたりとかしてました。父親が買ってきた『週刊少年マガジン』の表紙のグラビアを見ながら、私もなれたらいいなと思っていたタイミングで事務所からスカウトをしていただきました。

――スカウトは、町を歩いていたら声をかけられた、みたいな感じだったんですか?

大崎 当時はSNSとかがまだなくて、今よりも原宿にスカウトマンがたくさんいる時代で、歩いているとたくさん名刺をもらえたんです。そのなかから、どこの事務所にお世話になったら一番いいかなと考えて選びました。

――ちなみに当時、憧れていたグラビアアイドルはいましたか?

大崎 ほしのあきさんが好きでした。体が本当に綺麗ですし、はっきりとバストがあるのに、くびれがキュッと引き締まっていて、憧れの存在でしたね。

――自分の体を見せるという部分で、抵抗やギャップは感じなかったのでしょうか?

大崎 そこはなかったですね。ずっと大好きで憧れていたものを自分が表現できる、ということへのワクワクが大きくて。“こういうふうに腰を入れると、こういうラインができるんだ”とか、“ここに力を入れて、ここの力を抜けば、このポーズになるのか”とか、そういう研究をするのが好きでしたね。

――自分でやっていくうちに、よりグラビアの楽しさに気づいたというか。

大崎 そうですね。もちろん大変なことやツラいこともあったんですけど、総じて楽しさのほうが大きかったです。グラビアが好きという気持ちがあったから、これだけ長く続けられたのかなと思っています。

――周囲にはグラビアをやりたいということは公言していたんですか?

大崎 あまり根の明るいタイプではなかったので、隠していたというより言わなかったというか……。学校の活動と、グラビアの活動を完全に分けて考えていて、特に学校の友達に言うことはしなかったですね。

――これまでいろんな活動されていて、過去には写真集も出しているじゃないですか。新しい写真集を出したいという思いはないんですか?

大崎 写真集は出してみたいです! 2015年に「第1回FLASH写真集争奪オーディション」という企画に参加して、グランプリを獲得して写真集を出せたんです。そのときは、まだ自分がこうしたいというのをはっきり口にできなくて。絶対に自分の理想通りに作りたい、というほどの強いこだわりはないんですけど、より良いものを作るために意見を出し合えたらいいなと思ってます。

――こんな感じにしたいな、みたいな構想はあるんですか?

大崎 写真集も含めて、今まで出してきたDVDとかもそうなんですけど、団地妻感というか、哀愁が漂うような方向性になることが多かったので、もう少しフェチズム的なことだったり、明るいエッチな感じだったり、少し影のある感じだったりを表現できるといいなって。アングラでエッチな感じって、壇蜜さんがひとつ大きな表現を成し遂げられたと思ってるので、それとは違う方向性の表現を模索したいなとは考えています。

■ドラムの初心者だと思われることが多かった

――2016年からは「グラビアドラマー」としてYouTubeなどで活動されていますよね。YouTubeを始めようと思ったキッカケは?

大崎 じつは、YouTuberになりたいという気持ちで動画を撮ったわけではないんです。お仕事で知り合った方に「ドラムを演奏できる」という話をすると、見た目の印象もあるのか、初心者だと思われることが多いんですよ。

自分のことをすごくうまいと言うつもりはないんですけど、周りが思っている程ド素人という訳でもないと思うんです。でも、それって自分から話したところでわかってもらえないじゃないですか。なので、映像として資料があれば「これくらいの演奏ができるんだ」ということが伝わるんじゃないかと思って始めました。

▲ドラムの初心者だと思われることが多かったんですよね

――なるほど。周りへの反骨精神という部分もあったんですね。大崎さんってグラビアと音楽をかけ合わせたチャンネルの先駆けじゃないですか。なぜこの2つを合わせたのでしょうか?

大崎 グラビアを始めてからは、ドラムをやってなかった時期があるんですけど、結局はドラムを演奏したくなってしまう自分がいるということに気づいて、私の中には常に音楽をやりたいという気持ちが根付いているんだなと。改めて自分にできることは何かと問いかけてみたときに、自分ができることってグラビアとドラムだったんです。

――大崎さんのチャンネルって、グラビアと音楽、両方から見に来てくれると思うんですけど、どんな反応が多いんですか?

大崎 グラビアの人たちやプレイヤーの方々はウェルカムで受け入れてくだされるんですけど、音楽方面からは「ふざけんなよ」とか「真面目に音楽をやれ」という声もありましたね。

――そんな反応があったんですね。それが変化したタイミングってありましたか?

大崎 チャンネルの数字が伸びてきて、それがビジネスにつながるということが周りに知れ渡ったときに、少しずつ受け入れてもらえるようになったような気はします。

――ビジネスにつながると周りの反応も変わるんですね(苦笑)。

大崎 手のひらを返すといいますか…(笑)。もちろん、いろんな捉え方があるのはわかっていますし、そういう多様性を認めてもらうという意味でも、数字が伸びて良かったなと思います。

――それって大崎さんが先駆者であることも大きいですよね。

大崎 今でこそ、グラビアと音楽をかけ合わせて活動されている方はいますけど、当時は本当に誰もいなかったので、私への風当たりが強かったんですよね。でも、そういういろんな意見が飛び交うことで、見てくれる人が増えているんだということを私も実感したので、批判的な意見から得られることも多かったです。

■これほどバズってくれるとは思ってなかった

――YouTubeのターニングポイントで言うと、やっぱり「紅蓮華」になるんですかね。

大崎 一番伸びたのは「紅蓮華」でしたね。最初に日本でバズって伸びて、それから台湾とか海外で何回か伸びた結果、475万回という大きな数字になったんですけど、ターニングポイントっていうところで言うと、やっぱり1本目に投稿したゲスの極み乙女さんの「ロマンスがありあまる」がバズったのが大きかった気がします。

ファンの人から言われたんですけど、小籔(千豊)さんが川谷(絵音)さんと一緒に出演している番組でドラムを叩いていて、その動画の関連動画に私の動画が出てきて、そこから多くの人が流入してくれたという経緯があるみたいなんです。

――そういうことだったんですね。「グラドルが叩いてみた」というタイトルも惹きつける要因だったような気がします。

大崎 最初は資料のつもりだったので、「ドラム叩いてみた大崎由希」みたいなシンプルなタイトルだったんですけど、せっかくグラビアをやっているし、その要素を入れたいなと思ってつけたのが「グラドルが叩いてみた」だったんです。

――ここまで多くの方に見られるというのは想定していましたか?

大崎 当時、Twitterでも何万人規模でフォロワーの方がいたので、全く伸びないとは思っていなかったんですけど、これほどまでにバズってくれるとも思ってなかったので、びっくりしました。「なにごとですか?」ってなっていましたよ、最初は(笑)。

――動画を見ていると、新しい動画はカメラワークが細かく意識されていると感じたんですけど、そこもこだわっているところですか?

大崎 1本目は、本当にもうYouTuberだなんて言えるほどちゃんとしてなかったので(笑)。ただ固定で、とにかく演奏をメインで映すことしか考えてなかったんですけど、いろんな人が見てくれるようになるにつれて、その曲を演奏したいドラマーの方が演奏の参考資料として見てくれている、みたいなことを知って。

だとしたら、足のパターンが見られたほうがいいなとか、グラビアドラマーって言い出したからには胸元はよく見えたほうがいいなとか、いろんなことを考えたんです。その結果、見せ物としてはカットが割られていたほうが面白いし、いろんな方向から見られるほうが参考になると思って、現在のスタイルになりました。

■グラビアとバンド活動は両立していきたい

――音楽遍歴についても聞かせてください。そもそもなぜドラムを始めたんですか?

大崎 先ほど根が明るくないって言ったんですけど、人前に出るのが苦手な子どもだったんですよ。グラビアをやっていると「なに言ってんの?」ってよく言われるんですけどね。

でも、カメラの前に立つことと、大衆の前で自分を表現することというのは全然違うじゃないですか。私はステージに立って、フロントマンとして何かを表現するということは苦手なので、支えるポジションに興味があったというか。ドラムって、立ち位置的にも物理的にも一番後ろにいてメンバーが全員見えるし、目の前にはドラムセットがあって、少し落ち着くんですよ。

▲グラビアとバンド活動は両立していきたいです

――どんな音楽が好きだったんですか?

大崎 小学校の頃からビジュアル系が好きで、当時は特にDIR EN GREYというバンドに憧れていました。

――これまでもバンドでドラムをされていたと思うんですけど、今回、パーマネントなバンドに所属して活動するって、大きな決断だったんじゃないかと思うんですけど。

大崎 リトルリリスはポップロックのバンドとして、事務所に所属せずに活動していたんですけど、今の状態では頭打ちになってしまいそうというバンドの状況もあって、全くチャレンジしたことのない音楽ジャンルに取り組んでみよう、というところからスタートしました。

――Little Lilithは、どういったつながりで組まれたバンドなんですか?

大崎 全く面識はなかったんですけど、メンバーの方から連絡をいただいて「サポートしてくれませんか」と言われたことがキッカケですね。最初はお手伝いとしてスタートしたバンドがLittle Lilithになりました。

――バンドをやることによって、グラビアの仕事が制限されたりとか、単純に両立が大変だったりもすると思うんですけど、それでもバンドにこだわってやることの意味ってどんなところにありますか?

大崎 私はドラムや音楽がすごく好きで、自分の演奏の幅とか知識の幅が広がっていくっていうことが面白いですし、バンドを好きでいてくれるお客さんがいるということもすごくうれしいことですし、バンド活動自体に大きな魅力があるので、どんなに難しくてもグラビアとバンド活動は両立していきたいです。

――普通に考えると、どちらかの選択を迫られる場合が多そうですけど。

大崎 それはやっぱり、私の意思を配慮してくださっていることが大きいですね。どちらかに専念したほうが見栄えがいい場合もあると思うんですけど、私がどうしてもやりたいということで、名前を変えて活動するならいいよと言ってもらっています。

――グラビア活動とバンド活動、お互いに還元しあえたらいいですね。

大崎 そうなれたらいいなと思います。Little LilithのYUKIとして活動しているときは、グラビアをやっていることは自分から言わないようにしているんですけど、ファンの人たちが勝手に紐づけて“大崎ちゃんがやってるバンドだ”って見つけてくれるのは、すごいうれしいです。

■Little Lilithで海外ツアーをするのが目標

――2023年3月には2nd EP『STRIKE』をリリース。Little Lilithとしての活動も順調ですね。

大崎 メンバー4人とも、それぞれいろんな道で苦労して活動してきた子たちの集まりなんですけど、一緒に支え合ってやってますし、メンバーも「YUKIちゃんのおかげで名前が広がって、ありがとう」と言ってくれたりするのはとても嬉しいです。

――音楽活動とグラビア活動をやっていて、それぞれで良かったと思える瞬間を教えてください。

大崎 ピックアップするのはすごく難しいんですけど、今この状況にたどり着いたということが一番うれしいですね。どっちかをやめたほうがいいんじゃないか、という批判もあったなかで、バンドはバンドでしっかり活動できていて、グラビアはグラビアで個人で呼んでいただくこともできるようになったので、今がすごく楽しいなと思います。

――今後の目標、将来的にやっていきたいことは?

大崎 バンドとしては、音楽のジャンルもあってか、海外の方からのヒキがすごく強くて、海外でチャートインしてたり、YouTubeがバズってたりとかがすごく多いので、いつか海外ツアーをしたいという気持ちがあります。それで大きくなって、日本に帰ってきたいですね。

個人としては、グラビアドラマーというものを作り上げてきたので、もっと精力的にやっていきたいなという気持ちはすごくあって、私の活動を通じてグラビアと音楽を融合することへの偏見がなくなってほしいです。

綺麗サッパリなくなることはないと思うんですけど、自然な気持ちで受け入れて楽しんでくれる人たちが増えるのはとてもいいことだと思うので。新しいことにチャレンジするプレイヤーも増えてほしいですし、それを受け入れてくれるお客さんも増えてほしいです。

Little Lilith ONE MAN LIVE 「Euphoria」
日程:2023年8月4日(金)
会場:代官山SPACE ODD
O/S :18:30/19:00

全ての写真をみる(https://wanibooks-newscrunch.com/articles/photo/4292)

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