NSC主席で卒業した金魚番長「学生時代は遊んでてよかった!」

2023年6月18日に決勝戦が開催された“芸歴5年目以下”の超若手芸人限定の賞レース『UNDER5 AWARD2023』で優勝した金魚番長。NSC東京24期を首席で卒業し、芸歴1年目にして『M-1グランプリ』3回戦進出。さらに神保町よしもと漫才劇場では、先輩芸人に混じり上位クラスに選出されるなど、次期東京吉本のエースとして期待される箕輪智征と古市勇介による若手コンビだ。

そんな彼らの名を全国に知らしめるのものとなった今回の『UNDER5』。ニュースクランチ編集部が、改めて優勝の喜びや大会当日の心境、さらに結成までの道のりをインタビューで聞いた。

▲金魚番長(箕輪智征、古市勇介)【WANI BOOKS-NewsCrunch-Interview】

■『UNDER5』は優勝しないといけないと思った

――『UNDER5』優勝おめでとうございます! 開催が決まった時点でラストイヤーとなりましたが、出場時の心境はいかがでしたか。

古市勇介(以下、古市) うれしい気持ちもありつつ、勝たなきゃいけないっていうプレッシャーもありました。最初は大会の規模もわからなかったんですけど、優勝しないとダメなんだろうなって。

――ラストイヤー組となるNSC東京24期を主席卒業されていることもあり、特に周囲の期待も高かったんじゃないでしょうか。

箕輪智征(以下、箕輪) そうですね。優勝できなかったら単純に名を落とすんじゃないかと思いました。

――ファイナリスト9組が決まったとき、他のメンバーの印象はいかがでしたか。

箕輪 あくびぼうやとかは、今回の大会で初めて知ったので、どんなネタをするのかわからないので怖かったですね。

古市 逆に東京組は知ってる人ばかりでした。特にハマノとヘンミは同期だし、ユニットとかも一緒にやってたので、戦いたくなかったですね。

箕輪 最終決戦は、あくびぼうやとキャプテンバイソンとの戦いになったじゃないですか。2組のネタをよく知らなかったのもよかったですね。よく知ってるメンバーが上がってきてたら、2本目のネタも予想できちゃうんで、もっと緊張してたと思います。

――決勝1本目では全票獲得、最終決戦でも6票中4票と圧巻の優勝でしたが、手応えはありましたか?

古市 ありましたね。1本目が終わった時点で、会場の空気を持っていけたかなと。

箕輪 1本目終わってすぐ、ライムギのれんぺいが「もー、番長ですやん、番長すぎるって!」みたいに言ってくれたので、いけたかなと思いました。だから、審査待ちもそこまで緊張しなかったし、MCのニューヨークさんとも何回か絡ませてもらってるので、気負いせずボケちゃいましたね。まぁ「つまんない」とか「ネタがダサい」って言ってきたのはね、まぁ……。

古市 おかしいですよ、あの人たち(笑)。

――(笑)。『UNDER5 AWARD』直後のニューヨークさんのラジオでも、めちゃくちゃイジられてましたね。

箕輪 でも、なぜかあれを皆さん、すごい褒めてくれるんですよ(笑)。

古市 単純に僕らのテンションおかしかったですよね(笑)。なんか、よくわかんないまま出てたからなー。

箕輪 僕はビールを飲んでたし、ニューヨークさんからは矢継ぎ早に悪口を言われるし。ありがたかったですけどね(笑)。

――審査員の方も大絶賛でしたが、特に印象に残っているコメントはありますか?

古市 「コンビのバランスがいい」みたいに言ってもらえたのはよかったですね。

箕輪 ナイツの塙(宣之)さんに「結局、ボケがいいからこそのツッコミ」みたいに言ってもらえたんですよ。ツッコミがフィーチャーされる時代だし、僕らもそういう意図でネタは作ってるんですけど、ちゃんとボケにも注目してくれてるんだなってうれしかったですね。

▲印象に残る審査員のコメントを教えてくれた

■先輩にも物怖じせず絡めるようになった理由

――優勝の実感はいつ湧きました?

古市 大会のあと、最初に劇場行ったときですかね。いろんな人に「おめでとう」って言われて、“本当に優勝したんだ”って思いました。

箕輪 神保町よしもと漫才劇場のインスタにライブのために集まった人たちが、テレビの前で応援してくれてる様子を映した動画が上がってたんですけど、それを見たときですかね、みんなが「金魚番長いけー!」とか言ってくれてて。でも、劇場に行ったら、素敵じゃないかの柏木(成彦)さんとかに「まぁ、子どもの大会やからな」みたいに言われて(笑)。そういうのもうれしいんですけどね。

古市 上の人はもう関係ないんで、素直に喜んでくれますね。あと、僕は100万円って書かれたパネルをもらったんで、帰るたびにそれを見て“あー優勝したんだな”って思ってます。今はソファーの後ろに置いてるんですけど。

▲優勝賞金のパネルを持って帰った古市

――かなり大きかったですよね(笑)? 欲しいと言って驚かれませんでしたか?

古市 「本当にいりますか?」とは言われました(笑)。でも、欲しかったんで。

箕輪 僕も最初はもらおうかなと思ったんですけど、「もしかしたら、持ち帰りになるかもしれません」って言われたんで、すぐやめました。さすがにデカすぎるんで。

古市 結局、送ってもらえましたけど、デカいですね。

――他の大会でも持って帰る人は珍しいと思いますよ(笑)。祝福コメントといえば、オズワルド伊藤(俊介)さんは祝福しながらも「古市には、とにかく不幸でいてほしかった」とツイートされてましたね。

古市 伊藤さんは僕らのこと「おもしろい」と言ってくれてて。しかも以前、ライブで言ってたみたいなんですけど、伊藤さんは生まれ変わったら“なりたいツッコミ”が僕らしいんですよ。でも、ずっとイジってくるんですよね。ふざけやがって(笑)。

箕輪 僕も思いますけどね。なんでこんなヤツが人生充実してんだよ!って。

古市 そっち? 俺だってイヤな思いもしてるよ。

――(笑)。チャンピオンになってもイジれる人柄というのも、お二人の魅力じゃないでしょうか。

箕輪 これはNSCを主席で卒業してよかったなって思うことなんですけど、僕らは(優勝したことで)劇場のランクが他の同期よりも上からスタートしたんですよ。だから、最初からまわりは先輩ばかりだったんで、それで先輩に対する慣れみたいなのはできましたね。

古市 しばらく同期と一緒にならなかったです。

箕輪 だから、後輩と絡むのはめちゃめちゃ苦手です。

古市 後輩はイジってくれないし、だからといって僕らからパス出せないんで(笑)。

――でも、先輩たちと同じ舞台に立つというのは大きな経験ですよね。学んだことも多かったんじゃないでしょうか。

古市 ネタに関しては、すぐに影響を受けちゃうんで、僕はあんまり見ないようにしてるんですけど、平場とかコーナーとかエピソード系はめっちゃ勉強になりますね。

箕輪 平場って、なんも持っていかなかったら、何もできないんだって気づきました。

古市 平場のボケも急に出るものじゃないんで。あれだって今までの蓄積ですからね。

――『UNDER5』でやっていた勢いよく倒れるやつも、めちゃくちゃおもしろかったです(笑)。

箕輪 ほんとですか! (ボイスレコーダーに向かって)ニューヨークさん、聞いてる? 

古市 届いてるかな(笑)。あれはネタに入ってたボケなんですけど、なんかのライブのときに平場でも使ってみたらめっちゃウケたので、そこからたまにやるようになりました。ニューヨークさんには「時代に合ってない」って言われましたけど(笑)。

▲ニューヨークさんがイジってもらえるんでありがたいです(笑)

■大学お笑いをやってなくても活躍できる

――最近は大学お笑い出身の方の活躍が目立ちますが、お二人は違いますよね?

古市 そうなんですよ。二人とも大学は出てるから、大学お笑い出身だと勘違いされることが多いですね。僕はテニサーだったんで、まったくなんですけど。

箕輪 僕もオーラン(オールラウンドサークル)でした。

――大学お笑いには興味なかったんですか?

箕輪 大学に入ったときは、この道に進むと思ってなかったんです。芸人になるのは大学卒業くらいで決めたんですよ。工業系の大学だったんですけど、僕みたいな人間が工場で働いたら、爆発させちゃいそうだなと。研究室に入った4月の段階で、僕が使った機械が壊れたんですよ。今まで20年くらい、なんの問題もなかったやつがいきなりダメになって。

古市 4(し)? 4(よん)? 4(し)で壊れたの?

――(笑)。そんなことあるんですか。

箕輪 人工関節のゲルを作る研究をしてて、どのくらいの衝撃に耐えられるか、みたいな実験をしてたんですけど、僕が作った材料で試したら真っ黒い粉が出てきて。

古市 しかも、こいつが1年かけて作った関節のゲルって、ダーツの動きにも耐えられなかったらしいですよ。

箕輪 最後の授業は質問攻めでしたね。「つまり、1年かけて何もできてないってことだよね?」って(笑)。だから、この道は向いてないなと思って芸人を目指しました。それに怠惰なんで、結局、研究者にはなれなかったと思います。

――古市さんは?

古市 小学校の卒業アルバムには、すでに芸人になるって書いてました。本当は高卒で始めたかったんですけど、親に「頼むから大学だけは行って」と言われたんで、大学は行きました。

――だからこそ、大学時代は遊んでたと。

古市 めっっっちゃ遊んでました(笑)。むしろ、大学お笑いをやる人の意味がわかんなかったです。だって、卒業してやるんだから今は遊ぶでしょ!って(笑)。

――NSCに入ってから、“大学お笑いをやっておけばよかったな”と思ったことはないですか?

古市 スタートは遅れたのかなとは思いますけど、やっておけばよかったとは思わないですね。

箕輪 結果論ですけど、逆に遊んでてよかったなって思います。遊んでるなかで蓄積できることもあると思うので。もちろん、学生お笑いをやったからこそ、おもしろくなれるとは思うんですけど、そこまで関係ないと思いますよ。大学お笑い経験者のおもしろい人って、やってなくてもおもしろくなっていただろうし。

▲大学時代はお笑いに関係ないサークルで楽しんでいた

――お二人はオーランとテニサー出身とのことですが、どんな雰囲気のサークルだったんですか?

箕輪 僕はオーランといっても、2軍みたいなやつの集まりで、ほかのサークルに入れなかったヤツらと作ったんですよ。あんまりないと思うんですけど全員男子だったし、お酒も飲めなかったら飲まなくていいよ、みたいな珍しい雰囲気で。活動としては3人でサッカーやったりしてました。

古市 3(さん)? 足りなすぎない? フットサルもできないじゃん。

箕輪 ディフェンダーもやったし、フォワードもミッドフィルターもやったんで、そういう意味では真の“オールラウンド”なサークルでした。まあ、小学生の放課後みたいな感じでしたね。

――ニュータイプのオーランですね。古市さんのテニサーは?

古市 僕はTHEですよ。みんながイヤがるようなTHEテニサーです(笑)。芸人だと珍しいと思うんですけど、ハマノとヘンミの逸見(亮介)もテニサーのリーダーやってたらしくて、『UNDER5』の日は二人でずっとテニサーの話してました。

箕輪 その会話、横で聞いててめっちゃイヤでしたね。

――古市さんもリーダーだったんですか?

古市 やってました。

箕輪 何人いたんだっけ?

古市 1000人くらいいました。全部のテニサーをまとめてたんで。

――カリスマですね(笑)。そんな方でも後輩と絡むの苦手なんですか。

古市 そういうタイプじゃないんですよ(笑)。まわりに祭り上げられて、やらされたタイプなんで、カリスマとかではないです。

箕輪 楽屋で10億円の山内(仁平)や9番街レトロの京極(風斗)さんに「これ言え」って動画撮らされたりしてますもん。

■相方探しでの古市の評価は星4だった

――お二人はどのようにコンビを結成したんですか。

古市 NSC入って1か月くらいはお互い別のコンビでやってたんですけど、それぞれ解散したんで僕が声をかけました。ネタ見せのときにやってたネタのうちの1個のボケがすごいよくて、いいなと思たんですよ。

箕輪 でも、そのボケがなんだったか覚えてないんだよね?

古市 はい!(笑) でも、なんかよかったんですよ。

――箕輪さんは声をかけられて即OKされたんですか。

箕輪 最初の相方探しのとき、全員に星つけて評価してたんですよ。そのなかに「星4」が2人いて、それが古市と最初の相方でした。最初の相方と組んだときは、ネタ合わせで集まったはずなのに気づいたらVR体験やってたり、進まない時間が多かったので解散しました。そしたら、もうひとりの星4が誘ってきたんで。

――古市さんの星4ポイントは?

箕輪 声質のみですね。

古市 のみ?

箕輪 のみ。

古市 他にもあると思うけどなー。

――(笑)。ボケとツッコミは最初から今のスタイルですか?

箕輪 最初は僕がツッコミやってました。僕もツッコミ志望だったんで。

古市 何個か逆のネタもありますよ。あと、ボケとツッコミを入れ替えてやるライブがあったんですけど、そのときのウケもよかったと思います。

――お二人は漫才のイメージが強いですが『キングオブコント』にも毎年出場されてますよね。コントもやりたいという気持ちもあるんでしょうか?

古市 出てるんですよ、1回戦しか通ってないんですけどね(笑)。でも、去年はめっちゃウケたんです。MCのピスタチオ伊地知(大樹)さんにも「お前ら、一番よかったよ!」と言ってもらったんですけど落ちてました。コントやっても漫才みたいになっちゃうんですよねー。

箕輪 立ち話というか、ただ衣装を変えて漫才やってるだけみたいになっちゃうんですよ。でも、コンビ組んで最初にウケたネタはコントでした。(NSC生時代の)夏くらいまでは“コント師”って言われてましたもん。最初にやったのなんだっけ?

古市 妊婦がずっと妊娠してるってやつ?

箕輪 そうだ。6年間ずっとお腹の中に赤ちゃんがいるっていう設定のネタだったんですけど、これはめっちゃウケました。

古市 でも、やっぱり僕らの良さが出るのは漫才だなって気づきましたね。二人とも演技力がないんで、自分のままでしかできないんですよ。なので、僕らは漫才のほうがいいのかなと。

▲今は漫才に注力したいという金魚番長

――『UNDER5』チャンピオンになり、これからメディアへの出演も増えていくと思いますが、出てみたい番組などはありますか?

古市 『相席食堂』のようなロケをやってみたいですね。ゆくゆくはアイドル番組のMCとか、普通にクイズ番組とかもいいなって。そういう番組ってゴール感ないですか? がんばらなくていい立場というか。達した人になりたいです。

箕輪 あの方々はゴールだと思ってないよ(笑)。ゴールしたと思った人がやってる番組なんて、絶対つまんないからね。

古市 俺の中でゴール感はあるけどな~。

――(笑)。でも、将来的にはテレビでも活躍していきたいと。

古市 そうですね。でも、テレビで活躍してる人も年末年始の特番とかではネタもやってるし、吉本だとルミネに立ってたりもするんで、ネタも続けていきたいです。

箕輪 僕もテレビはめちゃくちゃ好きですけど、やっぱりネタは作り続けたいです。憧れの芸人は千鳥さんなんですけど、あれだけテレビに出ながら、今も単独とかで新ネタを作ってらっしゃるので、そういうふうになりたいです。

――そのためにも、がんばらなくてはいけないのが『M-1』だと思いますが、『UNDER5』チャンピオンとして挑む今年の『M-1』の意気込みをお願いします。

古市 そういう意味では、今年はこれまでよりも負けられないですね。去年は箕輪がネタを飛ばしてしまって3回戦で落ちたんですけど、箕輪がミスってなくても落ちてたと思うんで。

箕輪 いや、ミスしなければ受かってたね!

古市 別に怒ってるとかじゃないよ(笑)。今年は少なくとも準決には絶対に行きたいです。

箕輪 とはいえ、毎年優勝を狙ってるんで。特に気負わず、負けたら頭下げようと思います(笑)。

(取材:梅山織愛)

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