「“想像する介護”が本当に怖かった」、阿川佐和子が語る介護と認知症のこと

「“想像する介護”が本当に怖かった」、阿川佐和子が語る介護と認知症のこと

「“想像する介護”が本当に怖かった」、阿川佐和子が語る介護と認知症のこと

脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台にチャレンジしている人をゲストに迎え、その“挑戦”に迫るTOKYO FMの番組「Dream HEART」。10月20日(土)の放送では、作家の阿川佐和子さんが登場。最新作「ことことこーこ」の話を中心にさまざまなお話を伺いました。

左からパーソナリティの茂木健一郎、ゲストの阿川佐和子さん(右)


茂木:最新作「ことことこーこ」、一気読みしちゃいました。もう読み始めたら止まらなくなっちゃって。このタイトルは、続けて“ことことこーこ”と読めばいいのですか?

阿川:これね、2つの意味を込めたダブルミーニングにしているんです。香子という名前の主人公の職業がフードコーディネーターなので、鍋で煮込み料理を“ことこと”している“こーこ”にしたんですけど、この小説は香子の母親が認知症になっていきモノを忘れていくという介護問題がテーマなんです。このお母さんの名前が琴子なので、“琴子”と“香子”という母親と娘の関係を表すタイトルにもなっているんです。

茂木:すごくいいですね。この小説は最後のほうで着地というか、ピタッとはまる場面があって。作家って最初からここを考えて書いてるんだ!って思いました。

阿川:考えてない(笑)!

茂木:考えてないんですか? そのわりには、月面宙返りみたいにピタッと着地してます!

阿川:そうならないときのほうが多いんです(笑)。

◆介護の本質は暗いけど、楽しいこともときどきある

茂木:「ことことこーこ」は、今多くの方が関心を持たれている認知症と介護の問題を扱われていますが、ご自身がそういう経験をされているんですよね?

阿川:父(阿川弘之さん)は2015年の夏に亡くなりましたけど、それよりちょっと前から母が“これは普通の物忘れじゃないぞ”っていうような状況が始まって。1つずつ方策を考えて……という生活が、もう8年くらいになります。そういう日常のなかで、いろいろな事件も起こって、苦しいこともあるけれど、おかしいこともあって。実際、介護の問題を抱えている人は山のようにいて、だからこそ映画や小説で介護モノってすごく増えてきていると思うんですね。そのなかに、自分が自分の親のことを小説に書いてみるという手はあるかなと、思ったんです。でも介護のことを考えると、ひたすら暗い、ツライ……だから、なんとか明るい介護小説が書けないかなと思って。母は基本的に性格が明るいので、見ていると笑っちゃうことがいっぱいあるんです。そんなエピソードをつなげて、本質は暗いけど、楽しいこともときどきあるよ、ということが伝わるような小説を書いてみたいというのが、ひとつの起因ではありました。

◆介護される側の気持ちを理解したい

茂木:「ことことこーこ」は文学としてもおもしろく、素晴らしいのですが、一方で介護について“こういうことがあるんだ”とか、“こういう考え方をすればいいんだ”とか、参考になる人が多いと思うんですよね。

阿川:私は母を見ているときに思ったのが、“介護する側”の便宜を優先されることが多くて、“介護される側”の気持ちはあまり考えられてないなと思ったんです。完全に何もわからなくなったわけじゃない段階だと、はっきり認識していることもいっぱいあるんですね。そんなときに、「あなたは役に立たない人間になりましたから、家事はいっさいやらなくていいです。その代わり、施設に入ってください」って言われたら、心が傷つくと思うんです。“できること”ってまだ残っていて。うちの母は庭いじりがすごく好きだったので、庭いじりを楽しみにしている間は、この家から離したらかわいそうだなって思っています。介護する側だけのシステムを押しつけるのって、ちょっと違うんじゃないかな。

茂木:なるほど。

阿川:専門家から、「徘徊する人間は、徘徊する理由がちゃんとある。目的を持って家を出る」と聞きました。普通の人は頭がおかしくなっちゃったと思ってしまいますが、本当は自分の意識のなかで“何かをやりたい”という感情が残っている。その気持ちを理解したいと思って、徘徊する側のお母さんの語りで場面を書いてみたんです。

茂木:この小説は、ときどきお母さんの視点で書かれていますね。

阿川:想像ですけどね。私が40代で、まだ(母の)介護が始まってない頃に“まもなく介護っていうことをやらなきゃいけないのかな”って、“想像する介護”が本当に怖かったんです。いろんな嫌な場面ばかりを想像して。だから、まだ介護が始まる前の人たちに“こんな楽しいことや考え方がありますよ”っていう参考になるとうれしいです。

茂木:人生のいろんなことをあらかじめ知っておけるという意味でも、とてもいい小説。単純に読んで心を動かされ、感動しました。

阿川:本当? ありがとうございます。

次回10月27日(土)の放送も、引き続き阿川佐和子さんを迎えてお届けします。次週は、小説「ことことこーこ」のプレゼントもあります。お楽しみに!

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聴取期限2018年10月28日(日)AM4:59まで
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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYOFMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00〜22:30
パーソナリティ:茂木健一郎
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/dreamheart

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