魅力溢れるキャラクターが、物語を牽引する。キャラメルボックス最新作が開幕

魅力溢れるキャラクターが、物語を牽引する。キャラメルボックス最新作が開幕

『リトル・ドラマー・ボーイ』 撮影:伊東和則

キャラメルボックスの最新作、『リトル・ドラマー・ボーイ』が12月1日、東京・八王子市芸術文化会館で幕を開けた。

12月のある日、恩師の病気の報を受け、18年ぶりに地元である八王子に帰ってきた矢野トオル(鍛治本大樹)。右手で触れただけで他人の怪我や病気を治す能力を持つ彼は、その力が人に知られないよう居場所を点々と変えて生きてきた。ところが恩師の家から帰る途中、瀕死の男(畑中智行)を発見したトオルは、思わずその力を使ってしまう。翌日、トオルの家に十文字(阿部丈二)と名乗る男がやってくる。トオルを縛り上げ、男の行方を問いただす十文字。十文字の仕事は殺人代行業、つまり殺し屋だった……。

成井豊の書き下ろし新作である今作。往年のキャラメルファンなら「あれ?」と思うのではないだろうか。ヒーリング能力を使うたびに自らの身体を犠牲にしていくという青年・矢野トオルは、1996年に上演された『TWO』の主人公。そして昭和マニアでうんちくを延々と語り続ける殺し屋・十文字は、昨年公演『ティアーズ・ライン』に登場し強烈な印象を残した。いわばクロスオーバー作品というわけだ。魅力的なキャラクターには、物語を動かしてゆく力がある。特に今回は人を“救う”能力を持つ男と、“殺し屋”という対象的な組み合わせ。そこにトオルが助けた男の謎めいた行動、病の恩師を助けたいというトオルの葛藤、トオルを呼び寄せた幼馴染の本意など、さまざまな人の思惑が絡んでストーリーが進む。十文字によるトオルの監禁シーンから回想形式で物語がスタートするのは『ティアーズ・ライン』と同じ構成。昨年公演を観ているとクスリとなる、これも“お楽しみ”のひとつだ。

トオルを演じた鍛治本は、キャラメルボックス本公演での主役は初めて。彼自身が持つ、不器用ながらも優しそうな雰囲気が、トオルという役柄にぴったりとはまった。自己犠牲的なトオルの力は、結局は彼の家族を傷つけることと紙一重だ。それでも力を使ってしまう、そんな“弱さ”をも魅力に昇華している。ユニバース世界の映画ではないが、再び彼が登場したら?……そんな未来へのワクワクも感じさせてくれる。 

タイトルは、キリスト生誕のエピソードを歌ったクリスマスソングから。三賢者のように贈り物はなくても、代わりに太鼓を叩いた貧しい少年のように、“他者のために何かをしたい”と思うのがそもそものクリスマスではなかったか。そんな本来のスピリットを改めて感じさせてくれるような、心温まる作品だ。

公演は12月7日(金)から9日(日)大阪・サンケイホールブリーゼ、12月15日(土)から25日(火)まで東京・サンシャイン劇場で上演される。

取材・文:川口有紀

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