楽天、アマゾンに「見劣り」鮮明…急速な多角化進め株価低迷

楽天がアマゾンに『見劣り』鮮明 楽天市場の敗北や携帯電話参入での株価急落など

記事まとめ

  • 楽天の携帯電話やネットスーパーへの参入に、アマゾンへの対抗説が指摘されている
  • しかし、楽天市場はアマゾン・ドット・コムに敗れ、携帯電話参入で株価は急落した
  • 楽天は経営のスピードがアマゾンより遅く、『見劣り』が鮮明になっている

楽天、アマゾンに「見劣り」鮮明…急速な多角化進め株価低迷

楽天、アマゾンに「見劣り」鮮明…急速な多角化進め株価低迷

楽天・三木谷浩史会長兼社長(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 IT大手の楽天が急ピッチで新規事業の仕掛け花火を打ち上げている。1月29日、野村ホールディングス(HD)傘下の中堅損害保険会社、朝日火災海上保険の株式を約450億円で買い、完全子会社にすると発表した。

 楽天は朝日火災の全株式を対象に1月30日から3月13日に株式公開買い付け(TOB)を実施。1株当たり2664円で買い取る。野村HDが持つ75.22%(議決権ベース)が成立の下限で、野村HDはTOBに応じる。大手銀行など他の株主の持ち分を含め、全株式の取得を目指す。今夏をメドに完全子会社にし、社名も変える。楽天は楽天生命保険を傘下に持っているが損保事業への参入は初めてとなる。

 朝日火災は野村證券や大和銀行(現りそな銀行)、第一銀行(現みずほ銀行)などの出資で1951年に設立された。保険料の安さを売り物にした長期契約の自動車保険が主力。2017年3月期の総資産3689億円は業界8位、売上高に当たる正味収入保険料は366億円で業界14位。

 損保業界は、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングスの大手3社の寡占化が進み、中堅損保との業績格差は拡大している。

 朝日火災の親会社である野村HDは北米やアジアでの投資銀行ビジネスにシフトしており、損保子会社は本業との相乗効果が薄れていた。昨年9月に楽天からの買収提案を受け、朝日火災株式の譲渡を決めた。野村HDにとっては「渡りに船」の子会社の売却といえるだろう。

●携帯電話、ネットスーパーに相次ぎ参入

 楽天は17年12月14日、19年に携帯電話事業への参入を目指すと発表した。18年1月にも、自ら回線網や基地局を持つ携帯電話事業会社を設立した。総務省が第4世代(4G)移動通信システムの電波の利用受付を開始したのを受けて申請する。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社も申請する見通しで、3月末頃に割当先が決まるが、「楽天にアドバンテージがある」(関係者)とみられている。

 認可を得られれば、19年中にサービスを始め、1500万人以上の顧客獲得を目指す。25年までに最大6000億円を投じ、基地局整備を進めるとしている。NTTドコモ、au、ソフトバンクの大手3社に対抗する第4勢力となる。

 また、17年12月19日には、家電量販店大手ビックカメラと新会社を設立することで基本合意した。新会社は18年4月、インターネット通販サイト「楽天ビック」を立ち上げる。ビックカメラは、自社のインターネット通販サイト「ビックカメラ.com」とは別に楽天市場に出店している。新会社は楽天市場内のサイトを「楽天ビック」に刷新し、商品購入や家電の設置依頼などが一括してできるようにする。

 さらに、年明けの1月26日、米小売り最大手のウォルマートと電子商取引(EC)分野で提携すると発表した。楽天と、ウォルマートの子会社である西友が共同で新会社をつくり、18年9月までに「楽天西友ネットスーパー」を展開する。年内にネットスーパー専用の配送拠点も開設する。

●アマゾンへの対抗策で新規事業に連続参入か

 そして、今回の朝日火災の買収による損保事業への新規参入だ。楽天は、なぜここにきて急ピッチで新規事業を進めるのか。

 理由ははっきりしている。米アマゾンへの対抗策だ。楽天はインターネットサービスと金融が経営の2本柱で、創業事業が通販の「楽天市場」だ。

 ところが、楽天市場はアマゾンが展開する「アマゾン・ドット・コム」に敗れた。日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた「ジェトロ世界貿易投資報告」(17年版)によると、16年の日本のEC市場における企業別のシェアは、アマゾンの「アマゾン・ドット・コム」が20.2%でトップ。2位は楽天の「楽天市場」で僅差の20.1%、3位はヤフーの「ヤフーショッピング」で8.9%だった。

 アマゾンは先進諸国で軒並みシェアトップとなっている。米国は33.0%、英国は26.5%、ドイツは40.8%、フランスは10.7%でいずれもトップ。ちなみに、中国はアリババグループが43.5%で断トツだ。

 日本は長らく楽天をアマゾンが追う展開だったが、ついにアマゾンが楽天を追い抜きトップに立った。日本に上陸したアマゾンは、採算を度外視した手法でライバル社を蹴散らし、首位に駆け上がった。

 楽天がアマゾンに敗れたことは、如実に数字に現れた。楽天の17年7〜9月期の連結決算は、楽天市場や楽天トラベルなど国内のネット販売事業の営業利益が前年同期比6.7%減の193億円にとどまった。一方、楽天銀行、楽天カード、楽天証券、楽天生命保険など金融事業の営業利益は同15.7%増の180億円。得意のITを使った金融サービス(フィンテック)は好調だが、看板の楽天市場は苦戦しているという実態が浮き彫りになった。

 16年の個人向けECの国内市場規模は約15兆円で、15年比で約1割拡大した。なかでもスマートフォン(スマホ)を通じてネット通販を利用する人が増えた。ところが、ネット通販の日本における先駆者である楽天市場は、その波に乗れなかった。

●携帯電話参入で株価急落

 楽天市場は、どの商品を売るかといった判断や、配送すべてを出店企業に任せきりにする「モール型」だ。アマゾンは「直販型」のため、商品の取捨選択や価格の設定、配送などを自社の判断で決められる。経営のスピードで楽天はアマゾンに見劣りする。その点が、アマゾンに逆転を許した大きな原因と考えられる。

 そのためか、三木谷浩史会長兼社長は1月30日、自社のインターネット通販で「独自の配送ネットワークを2年で構築する」方針を明らかにした。自社の物流施設から直接、商品を届けるほか、駅のロッカーや郵便局でも荷物を受け取れるようにする。楽天が自前の倉庫で出店者の商品を保管して配送することで、アマゾンに後れをとってきた配送のスピード・アップにつなげる。

 楽天の強みは、金融分野を含めて幅広く楽天ポイントで顧客を囲い込む「楽天経済圏」を形成していることだった。

 ところが、ここ数年、同様の戦略を掲げる企業が次々と登場してきた。アマゾンは通販利用者の登録情報を活用した決済システムを日本でも18年以降に始めると表明している。

 携帯電話事業も損害保険も、規制に縛られている分野だ。新参者に競争環境を変える可能性があると同時に、大きなリスクもある。特に携帯電話事業は毎年、巨額の資金(投資)が必要となる。携帯電話への参入を公表して以降、楽天の株価は大きく下がった。

 朝日火災の買収が明らかになった1月29日も、楽天の株価は朝方こそ上昇したものの、その後は伸び悩んだ。株価の推移を見てみると、1月18日の株価は昨年来安値の952円に沈み、その後も1000円を挟んで一進一退を続けている。

 三木谷氏の経営のキーワードは「スピード」だが、次々と打ち上げた仕掛け花火は、拙速の感を免れない。そのため、笛吹けど株価は踊らず。オーナーの焦りが楽天の株価に投影しているのかもしれない。
(文=編集部)

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