本千葉の国道357号線沿い トラック野郎も愛する超ワイルドな立ち食いそば屋

本千葉の国道357号線沿い トラック野郎も愛する超ワイルドな立ち食いそば屋

(c)坂崎仁紀

 あなたが一番好きな立ち食いそば屋はどこですか?

 立ち飲み屋で飲んでいると、まわりの常連さんとついつい立ち食いそばの話をしてしまう。私の場合、それしか話題がないから仕方がない。

 そんな時、いつも聞かれるのが、「一番好きな立ち食いそば屋はどこですか?」という質問だ。

 そう訊ねられた時はいつも逆に「あなたが一番好きなのはどこですか?」と聞き返すことにしている。先日も、新橋駅前ビルの喜楽で飲んでいたら隣にいた阿部克巳さん(52歳)から同じように質問されたので聞き返した。すると、阿部さんは待ってましたというように話し出した。

「本千葉の寒川そばです。さりげない素っ気ない味だけど、そのバランスが言うことなしです。店が昭和っぽいのもいいんです」

 都心の有名店を差し置いて、「寒川そばが日本一うまい」とは大したものだ。その視点に妙に感心したわけである。

■それで「寒川そば」に行ってみることにした

「寒川そば」は本千葉の街道沿いにある孤高の立ち食いそば屋だ。

 本千葉駅あるいは蘇我駅から歩いて十数分はかかる国道357線沿いの立地だ。

 スキー場のロッジみたいなかわいい三角屋根の店といえば、見覚えのある方も多いだろう。

 店の正面には交通量の多い357号線、京葉線の高架が見え、その向こうには運河があり、そのさらに先には千葉の港が広がっている。海風が吹き、港湾からの音が響く。

 私が訪問したのは土曜の昼前、太陽がまぶしく温かい日だった。店前には自家用や商用の車が停車している。車でそばを食べにきている客が多い。散歩がてら来店する高齢の常連さんもいる。

 早速入店してみる。店は意外に広く、大きなL字の黒いカウンターが厨房を囲む。
カウンター上の各所には、沢山のゆで卵が置いてある。1個50円。

 常連さんたちは入店してすぐそばなどを注文し、同時にゆで卵をカウンターに打ち付けておもむろに殻をむき出す。

■そのゆで卵を、どうするのか?

 どんぶりが到着すると、そこにドボンとゆで卵を投下して食べ始める。中には一口かじってどんぶりを待つ人もいる。長年にできあがった「寒川そば」の儀式みたいなものだろう。

 メニューをみると、カレーライス(500円)、カレーそば・うどん(500円)、かけそば(350円)、月見そば(400円)、たぬきそば(400円)、きつねそば(400円)、山菜(400円)、天ぷらそば(400円)とシンプルな構成だ。

 早速「天ぷらそば」(400円)を注文した。女将さんは茹麺をさっと湯通しし、つゆをかけ、大きいかき揚げ天をのせて手際よく完成させた。つゆを一口飲んでみる。赤味のきれいなはっきりとしたつゆで、出汁がしっかり感じられる。千葉の大衆そばの味だ。

 そばは茹麺だが、角のあるコシのしっかりした麺である。最近、東京ではお目にかかれない麺である。昔はこういう茹麺を使った店がもっとあった。

 かき揚げは具がしっかりと大きめ。クリスピーなタイプではないが、つゆにひたすと徐々に旨さを花開くタイプだ。どれも突出しているというわけではないが、はっきりしたつゆ、角のある茹麺、しっかりしたかき揚げと三拍子そろっている。食後の満足度が高い一杯に完成されている。

■早朝4時に開店すると大勢の常連さんが押し寄せる

 カレーライスも人気のようだ。ターメリックの明るい黄色が食欲をそそる。人参やたまねぎが大きめにカットされて十分煮込まれている。こういうカレーを出す店も随分少なくなったとしみじみ思う。

「寒川そば」は創業50年を越えているそうだ。創業当時から利用者は湾岸労働者やトラックの運転手が多かったのだろう。早朝4時に開店すると大勢の常連さんたちが一杯の旨いそばやカレーライスを求めて押し寄せてくる。

 ドライブインみたいに沢山のメニューを作るわけではなく、そばうどんの味を極め、カレーの味を追求して、手軽に食べられるメニューに絞った結果、今のさりげない味と人気が定着した。そんなヒストリーが感じとれる。近所にあれば毎日通うことは間違いない。

 よく食べた旨い大衆そば・立ち食いそばの味は、その人の生き様や人生の記憶にさりげなく寄り添って残り続ける。だからこそ、どの人にも自分にとって日本一の味があるのだと思う。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

寒川そば
千葉県千葉市中央区寒川町3-41
営業時間 4:00〜22:30
日曜定休

(坂崎 仁紀)

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