東武動物公園駅前にある「ごわっとして掴みにくい」絶品そば

東武動物公園駅前にある「ごわっとして掴みにくい」絶品そば

©坂崎仁紀

 田舎のおかあさんの打ったそばはうまい。

 小麦粉を上手に使っているからだ。それが評判になって大衆そば屋をはじめたという店も多い。

 つなぎとして使用される小麦粉は、大衆そば誕生のゆりかごということができる。 

 小麦とそばを作付けしていた地域としては、埼玉、群馬、栃木あたりの北関東、北海道、山形、岩手、岐阜や長野などがあげられる。

 その中で、大衆そばの名店といえる店が埼玉県宮代町、東武動物公園駅からすぐにある「一茶宮代」である。岐阜の「更科」と、ここ「一茶宮代」は大衆そばの名店だと考えている。

「一茶宮代」は昭和48年頃、女将さんの戸張みち子さんが始めた店だ。

「一茶宮代」のそばは異次元の麺である。田舎そばをはるかにしのぐ太い手切りの麺で、世界中を探してもここにしかないだろう。地元では相当な人気店だ。

 東武動物公園駅を降りると、そこはまさに関東平野の中心だ。田園地帯が広がっている。西口のロータリー広場からまっすぐ続く駅前通りを歩いていくと3分程。左側の路地を入ったところに店はある。店の看板には大きく「昔の味」「本気で打った本当のそば」と掲げられている。店は広く、昼時に行けば、ほぼ満席。年配の方が友人やご夫婦で来店し、なごやかにゆっくりとそばを食べている。

■1分ほどで太く平たい麺がどっさり

 お品書きをみると、もりそばが380円と驚く安さだ。他にもそばすいとん(950円)、なべ焼きそば(980円)、きのこ丼(750円)などの他ではみないメニューがある。お持ち帰りのそば弁当、うどん弁当や、生そばセットなどもあり、しかもとっても安い。

 まずは大もりそば(580円)を注文した。するとほぼ1分で登場。その麺の姿をみて目を見張った。乱切りした手打ちうどんのような太い平たい麺がどっさりとせいろにのって登場したのだ。早速箸で持ち上げてみると、ごわっとしていて掴みにくい。断ち切りの手切りだろう。

 小さめな猪口に不器用にそばを入れ辛汁に付けて早速食べてみると、しっかりそばの香りが口に広がる。辛汁は江戸の濃いタイプとは違い、ややあっさりとしてこの太麺とよく調和している。この麺は竜泉の「角萬」や浅草の「翁そば」に近いが、それら以上に田舎っぽさが残っているし、硬すぎることはない。聞くと蕎麦粉4割、小麦6割で打っているそうだ。蕎麦粉は北海道産というが、小麦粉は地粉も使っているのだろう。小麦の旨さが蕎麦全体を格上げしている。

 辛汁が少なくなったお客さんには机上に大きな徳利が常備されており、いつでもつゆを補充できる。粋な江戸っ子のように食べることができない私にとっては大変ありがたいサービスだ。ネギも地物だろうか、香りが高くつゆによく合っている。

■大衆そばは家庭の味の延長

 多くのお客さんが大天もりそば(980円)や天ざるそば(980円)を注文している。天ぷらがまた大変綺麗な揚がり具合で、少しうらやましい。カレー南ばんそば(580円)は濃い色のカレー餡がかかってアツアツでうまそうだ。そんなことを観察しながら悶えているとあっという間に大もりを平らげてしまった。

 そこで、冷したぬきそば(630円)を追加注文した。そして、また、1分もしないでそばが登場した。冷したぬきそばは、どんこ、千切りしたきゅうり、その下に天かすが大雑把に入った野趣あふれる一杯である。つけ汁はやや酸味が利いている。これはよい味である。

 また、別の機会にたぬきそばをいただいたのだが、この太い麺が温かいつゆに入ると、天かすの甘みと相まって傑作。

「一茶宮代」で食べていると、大衆そばは家庭の味の延長だということ、小麦粉は大衆そば誕生のゆりかごだということをより一層、実感することができる。お店は息子さんも手伝っているのだろう。うまく継承してこの味を末永く守り続けてほしいと思う。

INFORMATION

一茶宮代
住所   埼玉県南埼玉郡宮代町中央2-4-3
営業時間 火〜日 11:00〜15:00 
定休日  月曜日

写真=坂崎仁紀?

(坂崎 仁紀)

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