【第28回】大須商店街で変わらぬ味と時を刻み続けている「モカ珈琲店」

【第28回】大須商店街で変わらぬ味と時を刻み続けている「モカ珈琲店」

大須商店街で生まれて57年。店看板やロゴもレトロでかわいい

大須観音の門前町として発展した大須(名古屋市中区)。1912(大正元)年に生まれたと言われる大須商店街には、古くから続く老舗のほかに、多様なカルチャーが集い次々と新しい店がオープンしている。新旧の顔を併せ持つ魅力あふれる商店街で、創業当時からの変わらぬ味と空間を守り続けているのが創業57年の「モカ珈琲店」。今日も常連客と観光客が隣り合わせで珈琲を味わっている。

■ 先代オーナーから受け継いだ味を変わらずに提供

創業時の先代オーナーから縁あって、店を受け継いだ樋口信子さん。受け継いだのは1990年なので、オーナー歴は約27年だという。次々と常連客が訪れる店で、息子さんと2人で先代から受け継いだ味を供している。「コーヒー豆は先代の時と同じものを使用しています。看板メニューはブレンドコーヒー(370円)。店名と同じモカ珈琲の豆は酸味が強いから、少し飲みやすくブレンドしたものを使っています。ある程度の量を一度にいれることや、ネルドリップを使い、いれ方も先代にしっかり伝授していただきました」

樋口さんは大須商店街で長く愛されてきた大須演芸場の娘さん。先代のオーナーが樋口さんにお願いしたのは、大須を愛し、大須を知り尽くしている人だったからだろう。毎日のように訪れる常連客は訪れたらコーヒーを飲み、樋口さんとテレビを見ながら楽しく会話をして過ごす。実にアットホームな雰囲気が心地いい。「喫茶店って昔はこういう場所だったと思うの。近所の人と会って世間話をする。毎日会えるから家族みたい」と樋口さんは楽しそうに話す。

訪れた常連客はあたりまえのように、飲んだあとの食器や使った灰皿を片付けて帰っていく。そういうシステムなのかと尋ねると「違うんです。みんな自ら片付けていってくれるんですよ。初めて来たお客さんがその姿を見て、片付けてくれることもあって。『いや、違いますよ、大丈夫ですよ』って言うんです」。何も決まりごとがないのに、自然と訪れる人たちが思いやりながら過ごす姿は、見ているだけで心が温かくなる。

■ 有名女優が愛した、あんトーストやコーヒースイーツも必食

モカ珈琲店を訪れたなら、ぜひ食べておきたいのが「あんトースト」(420円)だ。かつて泉ピン子がおいしいとよく食べていたという。5枚切りサイズの少し厚めのパンをカリッとトーストし、マーガリンを塗ってから、あんをたっぷり挟んで仕上げる。甘さ控えめのあんと、塩気のあるマーガリンとの相性が絶妙で、ボリュームがあるのにあっという間に食べられる。モーニングタイムの11:00まではドリンクにトーストが付いてくるのだが、プラス50円であんトーストにできるのもうれしい。

珈琲店ならではのコーヒースイーツも評判だ。自家製の「コーヒーゼリー」(400円)はぷるぷるの食感で、噛むとコーヒーの苦みが口に広がり大人のテイスト。濃く出したアイスコーヒーを加えて作っているモカソフトとの相性もよい。甘すぎずさっぱり食べられることから、男性のファンも多いという。

「モカソフト」(テイクアウト280円、店内300円)は単体での販売もしている。店でゆったり味わうのもいいし、隣のテイクアウトスペースで買って大須商店街を散策しながら食べるのもおすすめだ。

■ いつまでも変わらぬ姿で憩いの場所として

全20席の店内はえんじ色のベロアのソファが並んでいる。隣の人との距離が近いのも、この店ではどこか少しうれしい。レリーフが施された木枠の大きな鏡や、温もりを感じる白熱灯の照明、壁に掛けられた時計やカレンダーなども、気持ちをほっとさせてくれる。

大須商店街には外国人の観光客も多い。その外国人観光客の反応を尋ねると「小さな場所にぎゅっと集まっているのがめずらしいみたいで喜んでくれます。あと、珈琲に付けるミルクのピッチャーが小さくてかわいいとよく写真を撮っていますね」。日本の商店街で永く愛されてきた空間は、グローバルな人気も獲得しつつある。

「今は“レトロかわいい”と言うんでしょ。若い子も来てくれます」と樋口さん。常連客も観光客も魅了するモカ珈琲店、長く愛されるのには確かな理由がある。大須商店街に来たなら、その理由を確かめに訪れたい。【東海ウォーカー/小玉みさき(エディマート)】

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