パリ花善「おにぎり鶏めし」(6ユーロ)〜駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.17「花善」編(4))

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E751系電車・特急「つがる」、奥羽本線・前山〜鷹ノ巣間

秋田の田園地帯を貫いて走る、奥羽本線の特急「つがる」号。
秋田〜大館間は特急でおよそ1時間半、普通列車では1時間45分ほどかかります。
一方、大館〜新青森間は特急でおよそ1時間ですので、東京から大館へは、東北新幹線・新青森経由のほうが早く到着できるほか、空路では大館能代空港、青森空港も使えます。
近年はJR東日本とANAが組んだ秋田エリアのフリーきっぷが発売されることもあります。

大館駅観光駅長「あこ」(秋田犬)

大館駅前に今年(2019年)、新たにオープンしたのが大館市観光交流施設「秋田犬の里」。
施設内には秋田犬展示室があり、駅からすぐの場所で、可愛らしい秋田犬が見られます。
訪れた日は、大館駅観光駅長も務める「あこ」の当番でしたが…ちょっとお疲れかな!?
ロシアのフィギュアスケート選手・ザギトワさんに贈られた秋田犬・マサルのきょうだい犬が、やって来る日もあり、まさに世界に飛躍する「秋田犬」を象徴する場所となっています。

(注)秋田犬展示室は月曜休・ただし祝日の場合は翌日休、随時、秋田犬の休憩時間あり。

株式会社花善・八木橋秀一社長

秋田から世界へ進出という点ではいま、大館駅弁「株式会社花善」も大きく注目されています。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第17弾は、花善の8代目・八木橋秀一社長が登場。
八木橋社長は、かつてプロレス団体に勤めていた時代、日本とメキシコを行き来しながら、興行を行っていた経験もあると言います。
今回は、「鶏めし弁当」の駅弁大会出場、そしてパリ進出の話を伺いました。

花善

●駅弁大会を通じて全国区になった「鶏めし弁当」

 

―いまやすっかり全国区となった花善の「鶏めし弁当」ですが、手ごたえを感じられるようになったのは、いつ頃ですか?

本当に全国区になれたかなと思ったのは、いまから17〜8年前、初めて京王百貨店新宿店の駅弁大会に出たときのことです。
それまで花善は駅弁大会に出たことがなく、京王さんには何度もお誘いいただいていました。
祖母は頑なに「駅弁大会には出ない」と決めていましたし、輸送するにも当時のやり方では、保存がきかず、なかなか運ぶことができませんでした。

―出店を決めた経緯は?

中野区出身で大館へ行った私にとっては、「駅弁大会でこのすごい鶏めし弁当を、東京のみんなに食べてもらいたい!」という沸々とした思いがありました。
そこで「全部自分で責任を取る!」と言って自前でお金を調達し、京王さんの要請を受ける形で出店したところ、TVなど40本以上の取材を受けました。
これをきっかけに、「鶏めし弁当」は全国的な知名度を得ることができたと感じています。

Paris鶏めし弁当(現在は販売終了)

●駅弁で「秋田から直接、世界へ行ける」姿を見せたい!

 

―去年(2018年)には、駅弁屋さん5社共同でパリ・リヨン駅に進出しましたが、手応えは?

パリ・リヨン駅に出店したのは、大館が持つポテンシャルの大きさを示したかったからです。
子供たちと話していると「大館だからできない、秋田だからできない」と話す子が多いんです。
大館の人の感覚だと、まずは仙台で成功をおさめ、東京へというのが1つのプロセスです。
でも、「秋田からだって世界へ行けるんだ!」ということを見せたくて、4年ほど前に、駅弁の出店にふさわしい国を探して、世界各国を回りました。

―4年前から、世界進出を考えていたんですか?

じつはそうなんです。
そのなかで鉄道網がしっかりしていて、ビジネスになりそうだったのが、フランス・パリでした。
独自にマーケティングを続けるなか、ちょうど昨秋、NREさんがパリに1ヵ月間出店することになりましたので、花善はモニタリングの場として一緒に出店することにしました。
なので、去年の出店中には、すでにパリの「現地法人」を立ち上げていたんです。

Paris鶏めし弁当の掛け紙(裏側)

●フランスの商習慣と闘いながら、パリ出店!

 

―パリの現地法人は、どんな活動をしているんですか?

今年(2019年)1月に、1度ビジネスをやりました。
フランスはお店の形態が日本と全く違って、「営業権」という考え方があります。
新たなお店を出すときには、ゴルフの会員権みたいに「買う」必要があるんです。
こういったフランスならではの商慣習とぶつかりながら、(5月のインタビュー時は)出店準備を行っています。

―しかも、現地法人の社員は“女子大生”なんですよね?

平成29(2017)年8月、SNSでいきなり1通のメッセージが来ました。
一瞬、出会い系かと思ったんですが、「花善」大好きな大館出身の女子学生でした。
進学した北海道の大学で、「鶏めしは世界進出すべき」という論文も書いていました。
彼女と面談すると「実際の経営を学びたい」と言うものですから、「パリに会社を作ろうとしているのでイチから作ったら?」という話をしたところ、「やる!」ということになったんです。

おにぎり鶏めし(5月に試作品を撮影)

●フランスで実感! やっぱり駅弁は「水」が肝!!

 

―バイタリティーのある学生さんですね?

佐々木朝菜(ささき・あさな)という学生です。
平成30(2018)年4月から2年間休学という形をとって、花善で働いてもらっています。
まずは半年、鶏めしの作り方を覚えてもらい、去年の9月からフランスへ行っています。
2020年3月までは現地で、その後は復学してもらって、しっかり卒業してもらいます。
パリでは孤独な戦いを強いられているので、結構苦労しているようです。

―大館とパリを行き来されている八木橋社長ですが、パリで「鶏めし」を作るご苦労は?

「水の硬度」ですね。
秋田は軟水で硬度50くらいですが、フランスは硬水で硬度250くらいあるんです。
そのままではご飯を炊くことができないので、日本にある最も硬度が高いミネラルウォーターを秋田の水で割ってフランスの水を再現し、実験を繰り返して何とか乗り越えられました。
やっぱり水は駅弁の肝です。
水1つで味付けなど調理が変わってきますから。

(株式会社花善・八木橋秀一社長インタビュー、つづく)

おにぎり鶏めし(完成版・花善提供)

今回は、特別にパリ花善の「おにぎり鶏めし」(6ユーロ)を作っていただきました。
花善自慢「鶏めし」のおにぎりには、ツナマヨ+いぶりがっこが入っているのが特徴。
これが何度もいただきたくなる、素晴らしい食感!
フランス人はスモークが大好物で、秋田名物が現地の食文化ともマッチしているんですね。
もう1つはひじきと枝豆のおにぎりで、こちらの秋田名物は枝豆が使われています。

花善

「パリ花善」は、7月5日(金)、パリ市内に開店を果たしました。
八木橋社長が開店後、駅弁膝栗毛の取材に対し、次のコメントを寄せました。

『この度オープンしたのは路面店です。駅でのビジネスではございません。
しかしながら、フランスで外国人として一歩一歩丁寧に鶏めし弁当を販売していくことが、“EKIBEN”へと繋がっていくと信じ、いまは毎日日本と同様の味を再現しております。
必ず日本の駅弁文化は受け入れてもらえるはずです』

キハ110系気動車・普通列車、花輪線・大館〜東大館間

豊かな水に恵まれ、すくすくと育っていく秋田の米。
その水は、美味しい駅弁の源でもありました。
フランスでの食材調達には課題があるそうですが、秋田から世界へ、格闘は続きます。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第17弾・花善編。
次回は、いよいよ八木橋社長インタビューの完結編です!

駅弁 望月崇史 ライター望月 駅弁膝栗毛

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