新津駅「数の子ずし」(1080円)〜駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.18「神尾弁当部」編(4))

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E129系電車・普通列車、信越本線・荻川〜さつき野間

稲穂が垂れる越後平野を駆け抜けて行くE129系電車。
平成26(2014)年12月のデビューから、早いもので間もなく5年を迎えます。
この間に多くの国鉄形電車を置き換え、すっかり新潟地区の主力車両となりました。
朱鷺色のピンクと稲穂の黄色い帯を巻いたステンレスの電車は、鉄道の街・新津の工場で作られていることから、“地産地消”の電車とも云われています。

神尾弁当部・神尾雅人社長

その新津駅前に本社を構える駅弁屋さんが、明治30年創業の「神尾弁当部」。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第18弾は、神尾弁当部・神尾雅人社長のインタビューをお届けしています。
今回は「鉄道のまち・新津」ならではのエピソードから、昭和・平成・令和と移り変わるなかで、駅弁事情の変化などを伺いました。

 

●昭和〜平成、新幹線と地震を乗り越えて令和へ!

―「鉄道のまち」として知られる新津ですが、街もだいぶ変わってきているんですよね?

上越新幹線ができるまでは、国鉄職員の方が多く、新津はとても賑わっていました。
特に新津には、「鉄道学園」という国鉄の若手職員を教育する施設がありました。
この職員食堂を「神尾弁当部」がやっていた時代があります。
現在は、「新津鉄道資料館」になっているところです。
いまも資料館でイベントがあると、商店街の皆さんと協力してお店を出すことがあります。

昔の神尾弁当部の売店(昭和38(1963)年ごろ、「神尾弁当部 創業100年」より)

―昭和57(1982)年の上越新幹線の開業は、どのような影響がありましたか?

新幹線が通るとなったときは、新津も、東京と上野のような位置関係になるのかなと、期待も抱きましたが、(結局、新津を通ることはなく、)見事に裏切られました。
それまでは、駅弁も新津だけで十分に商売が成り立っていました。
売れに売れて銀行が逆に両替に来たなんて話もありました。
いまでは考えられませんが、昔は2・3番ホームに洋風っぽい売店もあったんです。

―駅弁の販売箇所については、どうやって乗り切っていったんですか?

国鉄OBの方たちが「新鉄構内営業」という会社を立ち上げていましたので、この組合員になって、販売員もここで雇ってもらい、売店を設置して、駅弁の販売を行う形になりました。
いまも新潟駅の新幹線ホームにあるちょっと懐かしい雰囲気の売店が、その名残りです。
売れれば「追加、追加!」とすぐ連絡が来て、その都度、新潟駅までよく持っていきました。
現在は基本が新潟駅で、新津駅では「SLばんえつ物語」号の発車時のみの販売です。

E3系新幹線電車・現美新幹線「とき」、上越新幹線・長岡〜浦佐間

―2000年代初め、新潟では地震が相次ぎましたが、この影響も大きかったでしょうね?

平成16(2004)年の新潟県中越地震のときは、上越新幹線がストップしてしまいましたので、その間は、ほとんど開店休業状態でした。
なので、復旧工事に当たっていたJRの社員さんへの炊き出しを手伝ったりしていました。
新潟は駅弁屋さんが13社あった時代もあったんですが、この地震で長岡にあった「野本弁当部」さんの社屋が被災して、生産が継続できなくなり、辞められてしまいました。

 

●販売環境の変化に対応が求められる駅弁作り!

―今年(2019年)に入ってからは、上越新幹線の車内販売が大きく縮小されてしまいましたが、コチラの影響はありますか?

駅弁の車販がなくなってしまったのは、通年で一定の販売量があっただけに大打撃です。
神尾弁当部では「朝採り枝豆」を出して好評をいただいたこともあったので、少し残念です。
新潟駅のリニューアル工事の進捗と合わせて、新たな販路開拓は待ったなしの状態です。
今後の見通しはまだ不透明ですが、お客様がバリエーション豊かな新潟の駅弁を安心してお求めいただける仕組みを作っていけたらいいのですが…。

新津駅

―様々なご苦労があるなか、今年で20年を迎えた「SLばんえつ物語」号の運行は、明るい話題ですよね?

新津にも、改めて活気が戻ってくるきっかけになりました。
新津〜会津若松間、3時間半の汽車旅が楽しめるのは、他にないことなんです。
しかも、阿賀野川ギリギリの所を走ったりして、景色も楽しめる列車です。
車内販売向けには、「オコジョのたからばこ」という限定商品も製造しています。
基本は土・日運行ですが、好きな方のなかには2日連続で乗って下さる方もいるんです。

(神尾弁当部・神尾雅人社長インタビュー、つづく)

数の子ずし

一時期、寿し駅弁にほぼ特化していた時期もあったと言う「神尾弁当部」の駅弁。
なかでも、昔からこの地域で、お祝い事で食べられていたとされる「数の子ずし」(1080円)は、ひと際ユニークな存在です。
昔、シンガーソングライターのみなみらんぼうさんが取材に来られたときに、大変気に入って、各メディアで発信されたことがきっかけで、人気駅弁の仲間入りを果たしたと言います。

数の子ずし

数の子ずし

竹を模した容器を開けた瞬間、フワッと香るのは、酢飯の上にまぶされた「おかか」の匂い。
いざ口へ運べば、一面に載った数の子は、塩気があまり強くなく、コリコリとした食感と共に酢飯の酸味と相まって、どんどん箸が進みます。
いまも古くからの駅弁好きの方は、新津のお店にやって来て「数の子ずしありませんか?」とおっしゃって下さるので、もはや、“やめられない駅弁”となっているのだそうです。

次回は、神尾弁当部の食材へのこだわりなどをご紹介していきます。

駅弁 望月崇史 ライター望月 駅弁膝栗毛

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