新津駅「小町ちらし」(1080円)〜駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.18「神尾弁当部」編(6))

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E653系電車・特急「いなほ」、羽越本線・村上〜間島間

上越新幹線「とき」と接続して、新潟〜酒田・秋田間を結ぶ、特急「いなほ」号。
主に夕日・稲穂・海をイメージしたカラーリングのE653系電車が7両で活躍しています。
新潟を発車すると、豊栄(とよさか)、新発田(しばた)、中条、坂町、村上、府屋、あつみ温泉、鶴岡、余目、酒田の順に停車し、一部の列車は遊佐、象潟、仁賀保、羽後本荘と停まって、3時間半あまりをかけ、秋田まで足を伸ばします。

(参考)JR東日本新潟支社ニュースリリース、2017年10月13日分

神尾弁当部・神尾雅人社長

「とき」〜「いなほ」と乗り継ぐと、東京〜酒田間は約4時間、秋田までは6時間近い長旅となりますので、新潟駅での食料補給は極めて重要です。
そんな新潟駅弁の一角を担う、明治30年創業の老舗駅弁屋さん「神尾弁当部」。
全国各地の駅弁屋さんにお邪魔してレポートする「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第18弾、「神尾弁当部」編は、いよいよ本日完結です。

 

●春・夏はツアー、秋・冬は催事が支える「駅弁」!

―神尾社長は、先代から受け継がれてまもなく15年、どんなご苦労がありましたか?

じつはちょうど本社が移転するときに、父が倒れてしまいました。
ずっと工事の進行を気にしていたので、病床の父にも新しい社屋を見せたかったのですが、間に合わず、それがいまでも心残りです。
工場の新築に当たってはHACCPではお金がかかりすぎてしまうため、新津にできた「新潟薬科大学」の先生に指南していただきながら、衛生基準を満たす清潔な作りとしました。

神尾弁当部

―いまはどのくらいの規模で、駅弁を作っているんですか?

会社の規模は、パートさんを入れて、全部で30人程度です。
現在は、「駅弁」の製造・販売のみを手掛けています。
新津駅前の本社売店と新潟駅のほか、東京・大宮などの首都圏と仙台で販売しています。
このほか、旅行会社さんが催行するツアーバスへの積み込みや全国各地の百貨店・スーパーなどで行われる催事に出店・納品することで、売り上げを支えている格好です。

―ツアーバスへの積み込みは、どんな形で行われているんですか?

概ね上半期・4月〜9月の行楽シーズンに、長年取引させていただいている旅行会社さんが催行するツアーバスへの積み込みを行っています。
例えば、「SLばんえつ物語」号でも、(長時間停まる)津川駅まで貸切バスで来て、津川からSLに乗られるツアーがあったりすると、津川駅へ積み込みに行ったりすることがあります。
一方、百貨店の催事は概ね下半期・10月〜翌年3月が中心となります。

C57形蒸気機関車+12系客車、快速「SLばんえつ物語」、磐越西線・津川駅

●「リピーターになっていただける」お米の美味しい駅弁を作り続けたい!

―神尾弁当部が駅弁作りで最も大切にしていることは何ですか?

新潟の駅弁としては、何と言っても「お米が美味しいこと」です。
そして、「また食べていただける駅弁の製造を続けていくこと」に尽きると思います。
リピーターになっていただけることが、本当にありがたいですから。
神尾弁当部は、ずっと「地元と鉄道」と共に歩んできた会社です。
これからも地域と鉄道が共に潤う会社として、「神尾弁当」の暖簾を残していきたいです。

―これからニッポンの駅弁をどんな形で盛り上げていきたいですか?

駅弁とは、駅ごとの特色ある食材を使って作る、独特な弁当のことだと思います。
これからも、地域らしさを出した「駅弁」を頑張って作り続けて、地域を盛り上げたいです。
地方では「駅弁が売れない」「後継者がいない」といった理由で、辞められる駅弁屋さんが多いのが実情ですが、小さな駅の駅弁屋さんには、小さいなりにできることがあるんです。
駅の規模に見合った魅力の出し方というものは、間違いなくあります。

E653系電車・特急「いなほ」、羽越本線・今川〜桑川間

●名勝・笹川流れを眺めながら、神尾弁当部の弁当を!

―現在、「新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーン」の開催中ですが、神尾社長お薦め、新潟の“駅弁が美味しい”車窓は?

羽越本線の「笹川流れ」でしょう。
10月からこの区間に「海里(かいり)」という、新しいリゾート列車がデビューしました。
じつはこの下り列車で、新潟・古町の名店「加島屋」の食材を使って、神尾弁当部が作っている「予約制」のお弁当(海里特製 加島屋御膳)があります。
様々なすり合わせを経て、ようやく1800円という価格で弁当化にこぎつけました。

小町ちらし

―10月から始まった「駅弁味の陣2019」にも、駅弁をエントリーされていますよね?

「駅弁味の陣2019」には、「小町ちらし」(1080円)をエントリーしています。
「新潟美人」プロジェクトとコラボして、去年(2018年)秋に開発したものです。
10月2日〜15日の間は、東京駅「駅弁屋 祭」でも実演販売していますので、首都圏近郊の方も、気軽に手に取っていただけると思います。
いつの日か、「これぞ神尾の駅弁!」と胸を張ることができる自信作を作りあげますので、ぜひご期待ください!

(神尾弁当部・神尾雅人社長インタビュー、おわり)

小町ちらし

【おしながき】
・酢飯(新潟県産コシヒカリ)
・紅鮭酢漬け
・いくら醤油漬け
・数の子醤油漬け
・雪国まいたけ煮
・椎茸煮
・錦糸玉子
・赤かぶ漬け

小町ちらし

「新潟美人」プロジェクトとコラボしただけあって、彩りが女性らしく華やか!
新潟県産コシヒカリの酢飯の上に、サーモン・いくら・数の子の海鮮と、雪国まいたけ、椎茸、赤かぶなどの野菜がすき間なく載せられています。
女性の方が手に取りやすい小ぶりの器ですが、ご飯も程々、ちょうどいい分量です。
見て晴れやか、食べて満足、新潟の旅が楽しくなりそうな駅弁です。

E653系電車・特急「しらゆき」、信越本線・荻川〜さつき野間

一世紀以上にわたって、新津駅前で駅弁を守り続けている「神尾弁当部」。
様々な時代の波が押し寄せるなかで、美味しいお米にこだわり、一本、筋が通った駅弁作りを続けられている背景からは、会津藩士の流れを汲む神尾家の誇りが感じられます。
今年(2019年)も実りの秋を迎えた新潟、「食」をテーマとしたデスティネーションキャンペーンのいまこそ、黎明期から、鉄道の食文化を支えてきた老舗の駅弁を味わってみてはいかがでしょうか。

駅弁 望月崇史 ライター望月 駅弁膝栗毛

関連記事(外部サイト)