月曜夜だけ “羊好き”が集まる謎のラーメン店『人と羊』(荻窪)で前代未聞の「ひつじそば」を食べてきた

月曜夜だけ “羊好き”が集まる謎のラーメン店『人と羊』(荻窪)で前代未聞の「ひつじそば」を食べてきた

食楽web

 好きな食べ物を普段から周りに公言しておくと、たまに良いことがあります。今回の場合、「マトンやラムのクセがたまらなく好き」と吹聴していたら、知人が「羊好きなら荻窪に面白い店があるよ」と教えてくれました。「ただし……月曜の夜しかやってないんだけどね」と。“月夜の晩の狼”ならぬ羊。

 店名は『ひつじそば 人と羊(ひととよう)』。「ひつじそば」なるラーメンが看板料理で、羊の白湯スープに羊肉のトッピングづくしで「とにかく“羊感”があふれまくっている」というのです。なんでも「ラーメン屋なのにラーメン屋を間借りしている」という不思議な店らしく、さらに「開店前から“羊好き”たちの行列ができているから早めに行ったほうがいい」という忠告も。そこで、気合いを入れて行ってみました。場所は杉並区・荻窪にあるラーメン屋『ねいろ屋荻窪本店』。

羊愛&羊感たっぷりのラーメンに驚愕!

JR荻窪駅から徒歩5分ほど。教会通りにあります。ラーメンとかき氷で有名な『ねいろ屋 荻窪本店』で、今年(2020年)6月22日から間借り営業を開始。こちらは開店前

JR荻窪駅から徒歩5分ほど。教会通りにあります。ラーメンとかき氷で有名な『ねいろ屋 荻窪本店』で、今年(2020年)6月22日から間借り営業を開始。こちらは開店前

 月曜18時開店の30分前に到着。すでに店横には先客が5名ほどいました。みんな間違いなく“羊好き”。親近感が湧きます。18時にきっかりに入店すると、まず目に入るのは壁のアクリルボードに書かれたメニュー。手描きで羊男のイラストが描かれており、メニューは定番の「ひつじそば」(1370円)と限定そばの「番紅花そば」(1450円)。さらにこの日は限定「ハイビスカスのラムビンダルー」という料理や、ご飯もののサイドメニューも並んでいます。

壁には、看板メニューの「ひつじそば」と、トッピングやご飯、さらにその日の限定メニューが手書きで書かれています

壁には、看板メニューの「ひつじそば」と、トッピングやご飯、さらにその日の限定メニューが手書きで書かれています

 サイドメニューの「ひつじコンフィ」(260円)や「マトンティッカ」(600円)、「ラムコンフィごはん」(400円)、「ペコリーノごはん」(削りたての羊乳チーズと羊オイルのごはん)など、まるでビストロのようなメニューも非常に気になりますが、今回は「ひつじそば」と、トッピングに「ひつじコンフィ」をオーダーしてみました。

「ひつじそば」は、ラム肩ロースとラムテリーヌのトッピングがデフォルトでのっています。そこにさらに「ひつじコンフィ」260円を追加したのがこちら

「ひつじそば」は、ラム肩ロースとラムテリーヌのトッピングがデフォルトでのっています。そこにさらに「ひつじコンフィ」260円を追加したのがこちら

 数分後、登場した「ひつじそば」。その見た目にびっくりしました。これがラーメン!? とくにラーメン史上初トッピングに違いない“ラムテリーヌ”に目が点になります。分厚くて肉々しいテリーヌ。食べてみると、羊肉の個性的な香りにクミン&山椒などのスパイス。ガツンとクセのある羊らしい香りがたまりません。「いやいや、これレストランの一品料理だろ」と突っ込みたくなるほど、レベルが高いんです。

 続いてスープを一口。これまた羊の旨みを凝縮した味と香り。塩加減も最高。「これ、一流レストランのコンソメスープだろ」と、またまた突っ込みを入れたくなります。そして、麺は全粒粉が練り込まれた細麺で、羊のコンソメスープの脂と絡まり、麺をすするたびに羊らしさが口中を暴走。そして低温調理のラム肩ロース。ふんわりしっとり柔らかく、ますます羊の味わいが口中に広がります。

フスマが練り込まれた全粒粉の麺は、三河屋製麺の麺を使用

フスマが練り込まれた全粒粉の麺は、三河屋製麺の麺を使用

 そのほか、丼の中にはモロッコインゲンも入っており、箸休めとしてシャキシャキとした食感がいい感じなのです。後半になると、テリーヌから溶け出した山椒がコンソメスープをキリッと味変。食べ進む時間経過も計算されているかのように、じわじわ面白さをましていきます。

 そして今回、筆者が追加トッピングした「ひつじコンフィ」は圧巻でした。もはやラーメンのトッピングの1つとは思えないほど贅沢な羊肉料理。これだけで、ワインをボトル1本飲めそうです。

 というわけで、食べ終わってみると1370円の「羊そば」は、ちょっとした羊料理のフルコースなのです。なぜ、ラーメンにしたのか? 非常に気になるところです。そこで後日、料理人の方に取材することにしました。

“人と羊の個性”が光りまくる一杯はこうして作られる

『人と羊』の料理人は村山新さん。「羊そば」を作るに至ったきっかけを聞くと、「数年前、ねいろ屋の荻窪店、神保町店で限定メニューを作っていた頃に出したメニューの1つです」とのこと。

「発想の元になったのは実はトルコ料理のキョフテ(羊肉のひき肉を使った料理)。私はトルコ料理やモロッコ料理などを食べ歩くのが趣味で、ある時、キョフテを食べながら、この羊肉とスパイスの複合的な旨みをラーメンで表現したら面白いなと思ったんです」と村山さん。

 その限定メニューが評判となり、昨年(2019年)11月 には、神保町にひつじそば専門店『人と羊』をオープン。その店はすぐに人気となったものの、今年に入り、お店を移転。4月には神保町店を閉め、新しい物件が決まるまでの間、『ねいろ屋 荻窪本店』で“間借り営業”のスタイルにしたとのこと。

月曜の夜だけ店名もメニューもガラリと変わります

月曜の夜だけ店名もメニューもガラリと変わります

「ひつじそば」について詳しく聞くと、「羊のコンソメは実は手間がかかるんです。まず、羊の骨を炊いて白湯をとり、また別の鍋で鶏ガラから白湯をとって、両方を合わせて、さらにラム肉の挽肉を入れて炊き上げ、最後に濾してコンソメにします。厨房が狭いこともあり、この工程だけで実は3日かかるんです……」と村山さん。月曜夜だけのために、3日もかけてスープを作っているとは。

 羊と鶏を一緒に炊けない理由は、「羊は非常にクセが強いものの、出汁をとる場合は鶏と一緒にすると鶏の方が強くて、羊が負けてしまうから」なんだそうです。「うちに来るお客様は、羊らしさを求めているので、より羊の個性を出すようにと、いろいろ試して今の作り方になりました」(村山さん)

ラムテリーヌは分厚くて食べ応え抜群です

ラムテリーヌは分厚くて食べ応え抜群です

 ラムテリーヌも、フレンチではなくトルコ料理のキョフテからの発想で作られているそうで、ラムの挽肉に、クミンやヒマラヤの山椒、ハーブ、ドライトマトを入れて作るとのこと。最初は団子にしていたけど、丸める手間と時間がかかりすぎるため、型に入れてテリーヌ状にしたんだそう。

 ちなみに、毎週、登場する限定メニューも羊好きを虜にしている理由です。限定メニューのほとんどは、その日限りでほぼ二度と出さないというこだわりぶり。限定そばだけではなく、本日の替え玉や本日のごはんも然り。

「休みの日に食べ歩いていて思うのですが、東京に美味しい店は星の数ほどたくさんありますよね。でも、面白い店、楽しい店はまだ少ない気がするんです。そして私が面白くて楽しいと思える店というのは、それを作る料理人しか絶対に出せないような強い個性を感じられる店。うちのお店も、そうした面白さや楽しさを感じてもらえる店にしたいと思っているんです」(村山さん)

 “他の店もお客様も絶対に思いつかない料理”を目指しているという村山さん。羊好きにとっては間違いなくワクワクできる面白いお店です。ぜひ行ってみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

ひつじとそば 人と羊 画像

店名:ひつじとそば 人と羊

住:東京都杉並区天沼3-6-24 『ねいろ屋荻窪店』
TEL:非公開
営:月曜18:00〜22:00(売り切れ次第閉店)
https://twitter.com/hito_to_you
https://www.instagram.com/hito_to_you

関連記事(外部サイト)