味わえるのは昼だけ! 高円寺の焼肉屋で千葉名物「竹岡式らーめん」を食べてきた

味わえるのは昼だけ! 高円寺の焼肉屋で千葉名物「竹岡式らーめん」を食べてきた

食楽web

 2年前、友人たちと「千葉三大ラーメンを制覇しよう」ということになり、「勝浦タンタンメン」、「アリランラーメン」と続けざまに食べ歩いたのですが、なぜか残りの「竹岡式ラーメン」で有名な『梅乃家』に行きそびれました。そして、月日は経ち、つい最近、友人から「そういえば、高円寺で“竹岡式”を出している店があるみたいよ」と教えてもらい、すっかり忘れていたことに気づいたのです。

 言い訳するつもりはありませんが、実は“竹岡式”にはそこまで期待していなかった、という本音があったのは事実です。千葉の友人の情報によれば「竹岡式のスープは、チャーシューの煮汁を茹で汁で割っただけで、麺は乾麺」とのことだったので、なんとなく駄菓子屋で売っているようなカップ麺のようなものを想像していました。

 今の日本のラーメンといえば、スープは鶏ガラや豚骨、魚介などからエキスを何時間もかけてとり、麺も手塩にかけた自家製だとか、醤油や塩までこだわりまくるのが常識なので、わざわざ食べに行く価値があるのだろうか、と少々疑問に思っていたわけです。

JR高円寺駅北口より徒歩3分の場所にある『オホーツク北見焼肉のっけ』。3坪、6席の小さなお店です

JR高円寺駅北口より徒歩3分の場所にある『オホーツク北見焼肉のっけ』。3坪、6席の小さなお店です

 そんな、まだ見ぬ謎の竹岡式ラーメンが、このコロナクライシスの折、わざわざ富津市竹岡町の『梅乃屋』まで行かずとも、東京の高円寺で初体験できる……。これは不幸中の幸い。

 というわけで、知人に教えられたその店に行ってみることにしました。それは、高円寺北にある小さな焼肉屋『オホーツク北見焼肉のっけ』。情報によれば千葉県木更津市出身のご主人が、不定期かつ昼間だけ、竹岡式ラーメンを出しているそう。

竹岡式ラーメンを初体験してみた

気まぐれに開店する昼だけの『ひるのっけ』の「竹岡式らーめん」メニュー

気まぐれに開店する昼だけの『ひるのっけ』の「竹岡式らーめん」メニュー

 さっそく「竹岡式らーめん」(並もり650円)を注文。登場したのは、濃い醤油色のスープに茶色の縮れ中華麺。ぶ厚いチャーシューと極太のメンマ、刻み玉ねぎと海苔。意外にも、見た目はちゃんとしたラーメンでした。

「竹岡式らーめん」並もり650円

「竹岡式らーめん」並もり650円

 とはいえ、心中では「どうせチャーシューの煮汁を薄めただけなんでしょ」と少し冷ややかな目で丼を見てしまいます。とにもかくにもスープを一口飲むと、意外や意外、スーッと染み入るようにスープが舌に浸透してきます。コク、甘み、塩味のバランスがいい。肉の旨みも感じるのに、しつこくなくてさっぱりしています。「ん? 深みもコクもあるし、これ、思ったより全然ちゃんとしてないか?」

 さらに麺は、パツパツした乾麺でジャンク感がありますが、スープの染み込みがよく、さらに麺自体に得もいわれぬ香りと味があって。「ん? 噛みごたえがあって、ほんのり醤油風味もあって、これ美味しくないか?」

 そして特筆すべきは豚バラを使った煮豚。とろりと柔らかく、ベタな表現ですが、口の中で溶けていきます。これはまさに絶品中の絶品チャーシュー! なんと言いますか、この角度違いの“期待外れ”な美味しさに、「おいおい、話が違うじゃないか」と思いつつ箸が止まりません。

『ひるのっけ』の竹岡式が美味しい理由

このチャーシューがトロットロで最高。スープもめっぽう美味しい

このチャーシューがトロットロで最高。スープもめっぽう美味しい

 しかし、やはり疑問です。これ、本当にチャーシューの煮汁を茹で汁で割っただけのスープなのでしょうか? そこで、ご主人の望月利一さんに質問。するとスープ鍋の蓋を開けて見せてくれました。そこに入っていたのは……

右が茹で汁、左がただのお湯

右が茹で汁、左がただのお湯

「はい、 茹で汁です。そして、隣の鍋はただのお湯。麺を何度も茹でると麺のエキスが出過ぎてしまうので、薄めるためにお湯を継ぎ足すんです」とニッコリ。「竹岡式の基本はコレです。ただ、本家の作り方とはちょっと違う点もあると思いますよ」と言うのです。

「うちでは、千葉の宮醤油と香味野菜で豚バラ肉を煮て、煮汁と上に浮いたラード、豚バラを別々に分けています。特にラードを別にする点が、よそと大きく違うんじゃないでしょうか」と望月さん。

 ちなみに煮汁はラーメンのカエシに、ラードは後入れの油に、豚バラはチャーシューとして使用しているそうです。麺は、あの『梅乃家』も使っているといわれる千葉の製麺屋『都一』の乾麺。

「これを茹でて、最後にその茹で汁と煮汁、ラードを合わせてスープを仕立てます。こうしたほうがギトギトしないし、塩梅も調整できるんです」とのこと。

中華乾麺作りの老舗『都一』の「中華そば」を使用

中華乾麺作りの老舗『都一』の「中華そば」を使用

 ジャンク感がありつつも、バランスが良くて美味しいと感じるのは、チャーシューの煮方や脂の扱い方などに関する、望月さんの絶妙な手加減なのかもしれません。しかし、チャーシューを作って、その煮汁やラードを余すところなく使うとは、なんとも無駄がないというか、最近よく聞く“サステナブル”な感じもしますね。

「うーん。どちらかというと、チャーシューを作るというよりは、ラーメンのカエシや油をとるために豚バラと香味野菜をコトコト煮ているといった感覚が正しいですかね。つまり、チャーシューは出がらしとも言えるんですよ」と笑う望月さん。

ご主人の望月利一さん。こちらのお店を始めたのは6年前。奥さんの地元・北海道北見の食文化・北見式焼肉の店をやりたいと、今の店をオープンしたそう

ご主人の望月利一さん。こちらのお店を始めたのは6年前。奥さんの地元・北海道北見の食文化・北見式焼肉の店をやりたいと、今の店をオープンしたそう

 そもそも、どうして今、この時期に竹岡式ラーメンを東京で出そうと思ったんでしょうか。しかも本業は焼肉屋なのに。

「子供の頃、親父が『梅乃家』の竹岡式ラーメンが大好きで、しょっちゅう連れて行かれたんです。でも私はあの味が苦手で、むしろ嫌な思い出しかなかったんですよね」と笑う望月さんですが、実は若いころイタリアに渡って料理修業し、帰国後にトラットリアを開店、大手出版社からレシピ本も出したという実力派のシェフなんです。

「竹まぜ」750円は、望月さんオリジナルの竹岡式混ぜそば

「竹まぜ」750円は、望月さんオリジナルの竹岡式混ぜそば

 今年7月から竹岡式ラーメンを始めた理由は、1つにコロナ禍の影響もあるそうですが、竹岡式ラーメンとの深い縁もあったようです。

「考えてみると、嫌いだと思っていた竹岡式ラーメンが、実は好きだったんだろうなって思うんですよ。以前のイタリア料理店の賄いでも竹岡式ラーメンを何度か作ったりしてね。すると、若い子たちが旨い旨いって言うんですよ。最初は嘘だろって思っていたんだけど、その子たちがどんどんハマっていくのをみて、なぜか嬉しかったんですよね」

「竹まぜ」にはチャーシューがたっぷり入っていて大人気

「竹まぜ」にはチャーシューがたっぷり入っていて大人気

 取材の日、同席していたお客さんが「“ウマズい”だよね〜」と言っているのを耳にしました。その言葉、なんとなくわかります。ちなみにお客さんから混ぜそばバージョンが食べたいとリクエストを受け、オリジナルの「竹岡式まぜそば」もメニューに加えたそう。そちらも食べてみると、醤油だれと脂感が美味しくて、やっぱり中毒性があります。

 やはり、望月さんの広く深い経験からのセンスが決め手なんだと思います。ということは これは“望月式竹岡式らーめん”ってことですかね。ぜひ、皆さんも食べに行ってみてください。ところで、筆者はこれで「千葉三大ラーメン」を制覇したって言っていいのでしょうか? ダメですよね。やっぱり、今度、『梅乃家』に行って来ようと思います。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

竹岡式らーめん 外観

店名:オホーツク北見焼肉のっけ 竹岡式らーめん ひるのっけ

住:東京都杉並区高円寺北3-2-19
TEL:03-6338-2844
営:11:30〜14:30(わがまま営業のため、Twitter@ok_nokkeでご確認を)
休:水
https://www.ok-nokke.com

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