WHOが警告! 食べてはいけない「パン」の危険物質 たった一つで基準値超え商品の実名

■食べてはいけない有名ベーカリー「パン」の危険物質(1/2)


 日本人の死因の第2位は心疾患。毎年多くの命を奪う国民病の原因の一つとも言われるのが「トランス脂肪酸」である。WHOも警告するこの危険物質は、実は我々の日常食の中にも含まれている。有名ベーカリーの「パン」を徹底調査し、その値を比較してみた。(以下は「週刊新潮」6月6日号掲載時点の情報です)

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 リスクの備え方には、その人の「哲学」が色濃く反映している。食事や生活習慣に気を遣って健康長寿を目指す人もいれば、「太く短く」をモットーに毎日遊び暮らす向きもある。アリで生きるかキリギリスで生きるか――はどちらが良いとか悪いとかではなく、個人の選択の問題。そもそもリスクを複合的に捉えること自体が難しく、健康を意識した人が早死にし、暴飲暴食を繰り返した者が長寿を全うするなんてパラドックスもないワケではない。

 また、あるリスクを過大視して避ける余り、それによる利益を失ったり、新たなリスクを背負うこともある。飛行機事故を恐れ、どこに行くにも自動車を使うことに固執するという例を考えてみよう。小さなリスクに拘った結果、飛行機使用による時間的、経済的な便益を逸するばかりか、自動車事故という、より高いリスクも背負うことになる。物事にゼロリスクはありえない。それぞれのリスクと便益、必要性を鑑みた上で、どのリスクを排除、あるいは選択するか。それはその人の生き方そのものである。

 ただし、そこには前提がある。物事にどんな危険性があり、それがどの程度のものなのか。避けることが出来るのか。それを正しく知ることだ。それなしにこの世を生きることはそれ自体が最大のリスク。身の回りの物事についてのことであれば尚更である。

 総務省の家計調査で米の支出をパンが上回ったのは2011年のこと。すぐに米が逆転を果たしたが、2014年にはパンが返り咲き、以来その差は開いたままだ。この10年弱で日本人の主食の座に躍り出たと言える「パン」。であれば、そこにどんなリスクが潜むのかを知っておくことはムダどころか、むしろ必要なことだ。しかも、そこにはここ30年、世界中で知られるようになった危険物質が潜んでいるのだから。

■パン1個あたりの「トランス脂肪酸」含有料リスト


 掲載の表を見ていただきたい。これは、一般に人気の高い、売れ筋12種類のパンについて、各店1個単位でトランス脂肪酸がどれくらい含まれているのかを調査したものだ。

 対象は11の店や企業。

(1)リトルマーメイド、神戸屋など、スーパーや駅ナカ等に店舗を構え、パンをその場で製造、販売する「有名ベーカリー」6店。

(2)山崎製パン、フジパンなど、スーパーやコンビニなどで加工済みの「包装パン」を販売する3社。

(3)大手スーパーで、 PB(プライベートブランド)としてパンを販売するイオン、セブン&アイ・ホールディングスの2社。イオンにはグループブランドのダイエーやマックスバリュ、マルエツ等が、セブン&アイにはイトーヨーカ堂やヨークマート等が含まれる。

 誰もが一度は利用したことのある店だろう。これらのうち、HPで主要商品のトランス脂肪酸量を公開している社(2)はその数字を記し、非公開、あるいは限定公開の社(1、3)については、取材で回答を得た。経営元でも測定していないパンについては、本誌(「週刊新潮」)が独自にISO取得の食品検査機関に検査を依頼し、その結果を掲載した。なおイオンは取材にも非公表を貫いた。

 パンによっては、0グラムとトランス脂肪酸の影が見えないものもある一方、2グラムを超えるものもある。この数値は何を意味するのか。そしてそもそもトランス脂肪酸にはどのような危険が潜むのか。

「トランス脂肪酸は、脂質の構成要素の一種です」

 と解説するのは、日本脂質栄養学会の初代会長を務めた、名古屋市立大学の奥山治美・名誉教授である。

「天然由来もありますが、問題視すべきトランス脂肪酸は、液体の植物油に水素を吹き込み、固形状にする『水素添加』と呼ばれる作業で発生するものです」

 そのため、トランス脂肪酸が検出されるのは、「水素添加」で生産される油脂商品=マーガリンやショートニングに多く、それらを原材料として作られるパンや洋菓子、揚げ物などの製品からも検出される。

『トランス脂肪酸から子どもを守る』著者で、杏林予防医学研究所の山田豊文所長も言う。

「これらの技術が開発されたのは100年程前で、目的はバターの代用品を作るため。バターなどの動物性油脂は固体で酸化しにくく、風味も豊かですが、値段が高いという難点がある。動物由来なので供給も安定せず、戦時中などは『バター不足』も起こった。そこで、安価で供給も安定している植物性油に白羽の矢が立ったのです。ただ、植物性油の大半は常温で液体ですから、水素を添加し、脂肪酸の構造を人工的に変えて固形化させた。これによって酸化もしにくくなりました。企業側からすれば安価な上に長持ちする。しかも“植物由来のヘルシーな油”と宣伝できるのでどんどん広がっていったのです」

 しかし、便利さのウラには必ず影がある。1990年代になって、これらマーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の健康への悪影響が公になり、世界中で問題視されるようになった。


■WHOの驚くべき報告


 この「魔法の油」は人体に明らかな害をもたらす。

「トランス脂肪酸の多量摂取を続けると、動脈硬化を招く。それによって、狭心症や心筋梗塞など冠動脈系の疾患を引き起こす可能性があるのです」

 とは、神戸大学大学院医学研究科の石田達郎・特命教授。

「もともと脂肪は安定した物質で体内に長く留まる性質がある。中でも特にトランス脂肪酸は分解されにくい性質を持ちますが、一部の脂肪は血液中に長く留まると血管に炎症を引き起こしてしまうのです。さらには、トランス脂肪酸には悪玉コレステロールの生成を促進する作用もあります。これらが相まって血管に大きな負担をかけ、動脈硬化を招くリスクを高めるのです」

 実際、WHO(世界保健機関)もこの心疾患リスクについて驚くべき報告を出している。曰く、

〈トランス脂肪酸摂取が原因の心血管疾患患者の死亡数は毎年50万人を超えると推定〉

〈トランス脂肪酸が多い食事は、心疾患リスクを21%、死亡を28%増加させる〉

 このリスクに加え、日本の食品安全委員会は、トランス脂肪酸の過剰摂取が及ぼす影響を、

〈肥満、アレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎等)について、関連が認められた〉

〈妊産婦・胎児への影響(胎児の体重減少、流産等)について、報告されている〉

 としている。

 また、国が認めるには至っていないが、がんやうつ病との関連を示す研究結果も出始めている。そもそも、トランス脂肪酸は食品からとる必要のない成分。にもかかわらず、現代人が苦しむ数々の病の原因となりうる「危険物質」と言えるのである。

 そのため、WHOはトランス脂肪酸の摂取量を1日の総摂取カロリーの1%未満に収めるよう推奨している。平均的な日本人の場合、これは1日2グラムに相当する。

 それを念頭に置いて、掲載の表に戻っていただこう。WHO基準の2グラムと対照すると、107商品中、多くのパンのトランス脂肪酸量は低めの値を示しているが、12商品は1グラムを超えている。1日3食、間食も含めて他の食品からもトランス脂肪酸を摂取する可能性があることを考えれば、これらは習慣的に食べることは避けた方が良いパンと言えそうだ。今回の調査でワーストとなったアンデルセンのデニッシュ系パン「スパンダワー」の値は2・10グラム。たった一つでWHO基準をオーバーしてしまう。これなどは恒常的に「食べてはいけない」パンと言われても仕方なさそうである。

 各店の見解については、つづく(2)にて。

「週刊新潮」2019年6月6日号 掲載

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