「在職老齢年金」の注意点!損しないもらい方って?

「在職老齢年金」の注意点!損しないもらい方って?

「在職老齢年金」とは何でしょうか? 60歳以上で厚生年金に加入して働いた場合や、基本月額と総報酬月額相当額の合計に応じて、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる仕組みのことです。


■在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは60歳以上の人が厚生年金に加入して働いた場合に、年金月額(老齢厚生年金額の1/12)と総報酬月額相当額(年間給与・賞与の1/12)の合計に応じて、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる仕組みのことです。

厚生年金に加入して働く人の年金の一部または全額が止まるだけで、60歳を過ぎて自営業等で働く場合や厚生年金に加入しなければ、いくら稼いでも年金が止まることはありません。


■在職老齢年金の計算の仕方って?
令和4年4月の年金法改正により、60歳から65歳までの在職老齢年金を計算するための年金月額と総報酬月額相当額の合計額上限が47万円に引き上げられました。65歳以降の在職老齢年金を計算する際の合計額上限はもともと47万円だったため、計算方法は同じになりました。
 
在職老齢年金は、「年金月額(老齢厚生年金額の1/12)」と「総報酬月額相当額(年間給与・賞与の1/12)」の合計が「47万円以下」だと、年金額は全額支給されます。

例えば、年金月額が7万5000円、総報酬月額相当額が25万円なら、7万5000円+25万円<47万円なので、在職老齢年金による調整はされず、支給される年金は月額7万5000円のままです。

一方で、「年金月額(老齢厚生年金額の1/12)」と「総報酬月額相当額(年間給与・賞与の1/12)」(年間給与・賞与の1/12)」の合計が「47万円超」だと、47万円を超える1/2の額が年金月額から支給停止になります。

例えば、年金月額が10万円、総報酬月額相当額が52万円なら、10万円+52万円>47万円なので、在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式は以下になります。

10万円-{(10万円+52万円-47万円)÷2}
=10万円-(62万円-47万円)÷2
=10万円-15万円÷2
=10万円-7万5000円
=2万5000円

在職老齢年金による調整後の年金支給月額(老齢厚生年金部分)は、2万5000円です。


■65歳以上だと支給される「老齢基礎年金」はどうなる?
65歳以上になると「老齢厚生年金」と「老齢基礎年金」の両方が支給されるのですが、「老齢基礎年金」はたとえ働いていたとしても全額支給されます。働いていて支給停止になるのは「老齢厚生年金」の部分です。
 
例えば、老齢基礎年金が年額72万円(月額6万円)で、老齢厚生年金が年額102万円(月額8万5000円)、総報酬月額相当額が50万円の場合、計算式は以下になります。

8万5000円-(8万5000円+50万円-47万円)÷2=2万7500円

在職老齢年金による調整後の年金支給月額(老齢厚生年金部分)は、2万7500円です。したがって、老齢基礎年金の月額6万円と合計して月額8万7500円の年金がもらえます。


■65歳以降の働き方と給与、年金についての注意点
64歳までは雇用保険の失業等手当と年金は同時期に受けることはできず、どちらか選択になります。65歳以上は雇用保険の失業等手当と年金は同時期に受けることができます。

また、60歳を過ぎても仕事をバリバリしている人で、給料も高い人は「年金を繰り下げ受給しよう。もらうのを遅らせれば年金が増えると聞いたぞ」と思うかもしれませんが、65歳までの間に支給される特別支給の老齢厚生年金は繰り下げて増額させることはできません。

65歳以降も残念ながら、給与が高いため年金が支給停止になっている部分は、年金の「繰り下げ受給」の対象にはならないので注意が必要です。

年金を最大限受けることを第一に考えると、「特別支給の老齢厚生年金をもらう60歳から64歳(生年月日・性別、繰り上げするか否かにより異なりますが)以後は厚生年金に入らないで働く」のが一番確実な方法と思われます。

引き続き会社に残る働き方だと、厚生年金に入らざるを得ないことも多いでしょう。ただ、令和4年4月の改正で、60歳以降の在職老齢年金の基準額が上がったことで、給与を引き下げなくても全額の老齢厚生年金を受けられる人が激増しました。

ただし、60歳時点で給与をもし引き下げたいのであれば、60歳以後労働契約を結びなおす形で、社会保険の手続きを会社にお願いした方がいいでしょう。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行う。現在は年金事務所にて、年金相談員も担当している。
(文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))

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