花粉症「自然治癒説」の真偽
2023年03月22日 20時45分All About

「花粉症は自然治癒することがある」 「花粉症が突然治った」などの、花粉症にまつわる気になる噂。つらい花粉症の症状があると色々な説や治療法を信じたくなりますが、それらの真偽を検証します。
■花粉症は突然治る? 「自然治癒する」説は本当か
気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのその他のアレルギーと比べても、花粉症やアレルギー性鼻炎は、自然に治ることが少ないです。
「去年、突然花粉症が治ったと思っていたのに、今年はまた目がかゆい」「出産したら花粉症が治ったみたい!」「宣伝されていたお茶を飲んだら治った!」など、個人の体験談として「花粉症が治った話」を耳にすることがあるかもしれません。しかし実際には、花粉症の症状は、花粉の飛散量やその時の個々人のコンディションによっても左右されるものです。
たまたま運がよく花粉の飛散量が少ない年が続いたり、何かしらそのときの身体の状態が花粉症に対するアレルギー反応に抗える状態になっていた場合、自覚する辛い症状がほぼ現れず、「治った!」と思えるシーズンもあるかもしれません。
しかし、花粉の飛散量が多い年やコンディションが悪い年には、やはり症状が出てしまって、再発してしまった……と思うことでしょう。これは一度治って再発したわけではなく、たまたま運よく花粉症の症状が出なかった年があっただけにすぎない可能性があります。
1~2年落ち着いていても結局身体が花粉に反応してしまっている以上、花粉症が治ったと言えないわけです。例えば、症状がなくても、スギ花粉症に対するIgE抗体と呼ばれる数字が高いままということがあります。
■「花粉症が治った」という調査結果も…高齢者には少ない花粉症
では一度花粉症を発症してしまった場合、一生涯、花粉の季節のたびに辛い思いをしなくてはならないのでしょうか? 実は「花粉症が勝手に治ること」も可能性としてはあるのです。
スギ花粉症の自然治癒率は報告に差がありますが、福井大学病院の調査では、2006年と2016年の両方の調査を受けた集団(334人)の解析において、20歳代から40歳代の10年間の同一人物の変化を追跡した結果、スギ花粉症の発症者から症状が消失、または感作が陰転化した自然寛解率は12.7%であったと報告されています(『鼻アレルギー診療ガイドライン2020』より)。
12.7%を多いと見るか低いと見るかは人によるでしょうが、実際に花粉症が治ったという人もいるのです。ただ、「治った」と判断できる検査方法がなく、スギに対するIgE抗体が陰性化しても再度陽性になることもあり、症状が治まった人がわざわざ治ったか確認をしに病院を訪れることはまずないため、実際に治った割合の調査がしにくいと言われています。
ただ、高齢者の花粉症の有病率が低いことから、自然治癒している人が一定数いる可能性も考えられるわけです。
もし1~2年ではなく概ね5年間(少なくとも3年間)、全く花粉症の症状がなければ、治ったと考えてもよいかもしれません。また、スギ花粉に対するIgE抗体が陰性化している状態であれば、治ったと言えるかもしれません。
■花粉症は出産によって治る? 悪化する?
花粉症は「出産すればよくなる」というほど単純ではありません。逆もしかりで、出産のせいで発症する人が多いというわけでもありません。しかし、どちらのケースも起こっています。出産しても花粉症症状に変化のない人もいます。そもそも、花粉症の症状は非常に個人差が大きいことや、出産の時期や出産以外の要素の関与もあり、一概に言えないのです。
「出産後に花粉症が良くなった(軽くなった)」という場合に、その理由は不明ですが、可能性としてはホルモンバランスの変化や、体質の変化によって免疫の状態が変わったことも考えられます。一概によいこととも言い切れませんが、免疫反応が弱くなることで、過度なアレルギー反応も弱くなり、結果として花粉症の症状が軽くなる可能性があります。
■花粉症デビューは高齢者でもあり得るの?
免疫の低下に伴い、花粉症の有病率は50~59歳で33.1%、70歳以上で11.3%と低下します(2008年の報告)。そのため、一般的には「高齢になると花粉症の発症リスクは減る」と言えます。しかしゼロではありません。「スギ花粉に対するIgE抗体の感作率」の調査では、初回調査時に50歳代の患者の場合、13年後には15%程度がIgE抗体が陽性から陰性になっていたのに対し、60歳代の患者の場合、13年後には60%近くが陽性から陰性になっていたことが報告されています。
そして、50歳代以降でスギ花粉に対するIgE抗体が陰性になった場合、スギ花粉の大量飛散があっても再び陽性になることは少ないとされ、高齢者はそれ以外の成人より、多くが花粉症の症状が治っていることがわかります。
しかし、スギ花粉症の有病率は、60歳代では2008年の21.8%が2019年には36.9%に増加、70歳以上では、2008年の11.3%が2019年には20.5%に増加しています。他の年齢と比べずに見てみると、高齢者になってからスギ花粉症になる人は昔よりも増えており、今までスギ花粉症でなかった人も、高齢になってから発症することがあることがわかります。
特に花粉飛散が多い年は、「これまで何のアレルギーもなく70歳になったから、今さら花粉症なんて」と自信過剰になってはいけません。「高齢者は花粉症を発症しない」というわけではないのです。
■花粉症だと「がん」の発症が少ないって本当?
また、巷の噂とは違いますが、興味深い調査結果も発表されています。群馬県で行われた疫学調査によると、「花粉症があると、ガンで死亡する危険率が52%減少する」との報告があるのです。これには免疫の関与が考えられています。つまり、アレルギーの強さと免疫の強さが関連することによるかもしれません(東京大学 小西祥子先生の論文 Clin Exp Allergy 46:1083-1086,2016)。
一方でガンだけでなく、全体的な死亡リスクも43%減少していることから、今後のさらなる検証が必要です。
■花粉症を治癒する治療法は「免疫療法」
自然治癒の可能性が低い花粉症ですが、皮下または舌下にスギ花粉の成分を毎日継続的に投与することで、花粉に対する体のアレルギー反応を抑える治療法があります。花粉症に対するアレルギー反応が減れば、症状はよくなり、花粉の飛散量が少ない時には、症状が出なくなる可能性があります。
免疫療法が効果的な理由としては、
・アレルギーを起こす物質を毎日体内に入れることで、免疫細胞が花粉を異物と判断しなくなる可能性
・免疫細胞が産生するヒスタミンなどの物質が常にない状態になっているために症状が出なくなる可能性
・スギに反応する免疫グロブリンであるIgEを低下させる可能性
・IgEを抑えるIgGが体内で作られる可能性
などが言われていますが、まだ新しい治療法で不明な点もあります。
しかし免疫細胞が反応しなくなれば、ほぼ治癒したと考えられますので、花粉症を治す治療法の1つです。
免疫療法の中でも、比較的副作用が少ないのが、舌下免疫療法です。この免疫療法は、花粉の飛散時期には開始できません。もし今年タイミングを逃してしまった方は、飛散時期が終わってから数カ月後、なるべく早めに開始した方が良いでしょう。遅くとも来年の花粉シーズンに備えて6月頃から11月頃までには開始するのが望ましいです。
今年、スギ花粉症の症状がひどいと思った方は、今年の夏ぐらいから舌下免疫療法を開始すれば、スギ花粉症が治る可能性はあるでしょう。
▼清益 功浩プロフィール小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
(文:清益 功浩(医師))
皆保険制度や公金医療を全廃すれば数字はUSA並になるんじゃね?
文中にある「免疫療法」という文言に違和感あるな。 異物に対して免疫反応で排除・無害化という事なので。 この場合はやはり「減感作療法」とか「免疫順庸化療法」の方がより適切かと。 いずれにしても国力・国内生産にも影響するので抜本的に何とかしてほしい。 杉、手入れも出来ないくせに植え過ぎなんだよな。
記事の終盤のスギ花粉の成分を摂ることで花粉症の症状がでなくなったり、なくなったりは確かにあるかもしれない。 むかし、酷い症状で毎年悩みの種だった花粉症。 ある時、仕事で杉の山の麓で毎日毎日、朝から晩まで過ごすことになり、地獄かkの会社は・・と思っていたが、しばらくするとあら不思議。治っていました。 その後、その会社は違う意味で鬼悪魔のような所なので辞めましたが、その後、一切症状は出ません。 もう20年くらい前のこと。