糖尿病になっても危機感がない偏食夫。夜中のコンビニ通いが止められない夫に失望した瞬間

糖尿病になっても危機感がない偏食夫。夜中のコンビニ通いが止められない夫に失望した瞬間

夫の健康をめぐって、夫婦の間に亀裂が入ったら……。40代女性は、「さすがに疲れた」とため息を漏らした。

誰もが病気になどなりたくてなるわけではない。だが、防げるものなら防ぎたい。そう思うのは間違いではないだろう。


■夫が糖尿病と診断されて
知り合って15年、結婚して13年。カズエさん(42歳)は同い年の夫と、11歳と8歳の子どもたちとの4人暮らしだ。

「知り合ったころから、夫の偏食が気になっていました。好きなものは大量に食べるけど、嫌いなものには見向きもしない。食べようという努力もしない。なんとかしたいとずっと努力してきたんですけどね」

カズエさんはため息をつく。彼女は管理栄養士として高齢者施設で働いているプロだ。だからこそ、夫の健康にも人一倍、気をつけてきた。

「夫も若いときは、『気をつけてくれてありがとう』なんて言っていたんですよ。だけど子どもができてから、私は夫と私用には、子どもたちのおかずより脂質を減らすようにしていた。子どもたちより一回りハンバーグを小さくするとか。唐揚げも夫の分は少なくするとか。ところが夫は揚げ物が大好き、野菜も芋類は好きだけど葉物は嫌いという偏食で、しかも煮干しや昆布も苦手なので出汁はインスタントがいいと」

新婚当初は夫も頑張っていたようだが、下の子が産まれたころ「家で食べると味が物足りなくて、ついスナック菓子を食べてしまう」と、あたかもカズエさんのせいで太ってしまったと言わんばかりになっていた。

「私は元々薄味が好きなのですが、それも夫が文句をつけるようになっていました。私たちがいがみあうのは子どもたちにもよくない。私はあなたの体が心配なんだからねと言ったら、夫も素直に『なるべく頑張って食べるよ』とは言ってくれました」

それが6年ほど前のことだった。だが様子を見ていると、やはり野菜は残してしまう。細かく刻んで夫の好きなものに混ぜ込んでも、味でわかって残すことが多い。

「それに結局、通常の一食では足りなくて、夜中にこっそりコンビニに行って唐揚げとかスナック菓子を買ってきちゃう。食べ終わった袋をゴミ箱に押し込んでいるけど、見ればわかりますからね。お酒も大好きだし、暴飲暴食も多い。なるべくしてなったとも言えるんですが」

そしてとうとう、昨年、夫は「栄養指導のための緊急入院」をさせられた。糖尿病予備軍と言われていたのが、立派な糖尿病となったのだ。すでに薬は手放せなくなっていた。


■危機感がない
ところが夫は栄養指導を受けても、いまひとつ危機感を覚えていないようすだという。

「私もそのあたりのことを勉強していたから、これからは私が作る食事以外はなるべく食べないでほしい。それがあなたのためだからと言ったんです。そうしたらすでに欲求不満だったんでしょうね、夫は『せっかく退院したのだから、今日くらい好きなものを食べさせろ』と怒りだして。そんなことしたらまた逆戻りだよと言ったけれど、やはり夜中に抜け出してコンビニに行ってましたね」

長年の妻の苦労をまったくわかっていない。自分で自分の健康を損ねるようなことをしている夫に、彼女はだんだん疲れてきてしまったという。

「子どもだってまだ小さいのだから、これから経済的にも大変になる。それ以上に、夫自身が病気はつらいでしょう。合併症だって起こるんだからねと言ったら、さんざん病院で脅されたらしく、『もういい、聞きたくない』って。子どもみたいなんですよね」

一緒に散歩しようと誘っても、「暑いから嫌だ」「寒いから嫌だ」と言う始末。子どもたちが犬を飼いたがっていたので、保護犬を飼ったら夫も散歩してくれるかもと淡い期待を込めたのだが、散歩はもっぱら子どもたちが担当している。

「危機感がないんですよね。おおらかな人だし、それが魅力でもあるんだけど、自分の体のことなんだからもうちょっと真剣に取り組んでほしい。それを言うと不機嫌になるので本当にどうしたらいいか困っています」

カズエさんは主治医にも長年、それを訴えている。だからこその入院だったのだが、夫にはあまり効果があったとは思えない。

子どもたちが父親の誕生日に、「パパ、元気で長生きしてね」という手紙を書いた。夫はそれを見て涙ぐんでいたし、「わかった」と言ったのに、骨身に染みてはいなかったようだ。

「誕生日の翌日です。私が夕飯時に忘れ物を買いに近所のコンビニに行ったら、帰宅途中の夫が唐揚げを店の外で頬張っていた。私の顔を見て気まずそうにしていたけど、さすがの私もこのときばかりは腹が立って腹が立って」

その日は夫と口をきくにもなれなかったという。それでもこのままにしておいていいはずはない。

「ケンカになっても夫の性根をたたき直すか、どうなっても知らないと見捨てるか。最後はふたつにひとつでしょうね。それは先日、夫にも伝えました。さすがにここ数日は我が家の食事だけで我慢しているようですが、精神的に不安定になっているのがわかります」

これからまだまだ長い闘いになりそうだとカズエさんはため息をついた。

▼亀山 早苗プロフィールフリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

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