不倫が第六感でわかるのは匂いのせいだった?

不倫が第六感でわかるのは匂いのせいだった?

夫は妻の浮気に気づかないことが多いけれど、女性のカンというのは鋭いものだったりします。でもそれはなぜなのでしょうか。


■遺伝子と不倫の関係とは
一度不倫をした人は、二度目もする確率が高いような気がしてならない。特に結婚している男性の場合、「家庭と恋愛は別」とばかりに不倫を繰り返しているケースをよく見るからだ。ひょっとしたら男女の性別を決定する遺伝子があるように、「不倫決定遺伝子」もあるのではないか。

『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)を執筆するにあたり、そんな思いを抱きながら、行動遺伝学の専門家である東北大学大学院生命科学研究所教授の山元大輔さんに話を聞いた。


■遺伝子とはどういうものか
「不倫決定遺伝子なんてものがあったらおもしろいけど、そういうものはありません」

にこやかに否定された。

そもそも遺伝子とは、短くても何千年、ひょっとしたら何万年という単位でしか変化が起こらないのだそう。

「生物学においての勝ち組は、どれだけ子どもを残したかに尽きます。ただ、それはどれだけ養えるかという問題にもなります。男は無責任に多くの精子をばらまくのが得かもしれないけど、女としてはそれでは困る。このあたりは男と女の利害が一致したり対立したりするところです」

原始の昔であれば、獲物を捕って運んできてくれる男が、女にとっていちばんいい男だった。ただ、現代ではそうはいかない。経済力、地位、力が強いとか頭がいいとか、いろいろな条件によって男は選ばれていく。そうやって長い年月をかけて、「いい男」の遺伝子が残ってきたのだろう。ヒトが淘汰されていく、あるいは淘汰されずに生き残っていくというのはどういうことか。

「アフリカには、鎌形赤血球症という遺伝性の貧血があります。これは赤血球が歪んだ鎌形に変わってしまって酸素を運びにくくする病気。走るとすぐ苦しくなって倒れてしまう。明らかに人間としては損なんです。それなのにその遺伝子はなくならない。なぜかというとその遺伝子をもっているとマラリアにかからないから。逆にいうと、マラリアにかからない人たちが生き残ったから、その遺伝子が生き続けている。ただ、世界的に見ると、この遺伝子をもっていない人のほうが多い。それはマラリアが日常的にかかる病気ではないからです」

一見問題がありそうでも、淘汰されない「残る遺伝子」は理由があって残っているわけだ。日本では少子化、草食化が問題となっているが、世界的には人口は増え続けている。

「だから日本で人口が減ってもヒトの遺伝子は生き続け、種として滅亡しないわけだから、それでいいとも言えますね(笑)」


■自分とかけ離れている遺伝子ほど相性がいい
不倫決定遺伝子はないが、相性には遺伝子が関係しているという。

「相性を判断するとき、唯一、それなりの根拠があるのがMHCと呼ばれる100種類以上もの遺伝子が作るタンパク質。これはもともと臓器移植をするときの相性を決める物質として見つかったんです。せっかく臓器移植をしても体がその臓器をよそ者とみなすと、いっせいに攻撃をしかけてうまく生着しません。そのとき自分かよそ者かを見定める物質がMHC遺伝子からできているタンパク質で、人と人との相性もこのMHC遺伝子の型の影響を受けることがわかっています」

さまざまな実験からわかったのは、人はMHC遺伝子の型が自分とかけ離れていればいるほど相性がいいということ。

逆にMHC遺伝子の型が似ている男女が夫婦になると子どもができにくいと言われている。妊娠はするものの、女性自身が気づくより早い段階で流産しやすいと考えられているという。

「われわれの体はMHC遺伝子の型において、なるべく似ていない相手と添い遂げたがっているように思われてなりません。MHC遺伝子自体が意志をもっているわけではなく、それはやはり突然変異と自然淘汰が培ってきたものなんです」


■不倫が「第六感」でわかるのはフェロモンのせい?
動物は性フェロモンで異性を認識、交尾に至る。人間にもフェロモンがあるかどうかは広く議論されてきたが、今は「ある」とされている。

「人間の性フェロモンは愛し合うカップルに親近感を呼び覚ましたり、性行為のさなかに性感を高める働きがあると言う人もいますが、その作用については微妙です。ただ、それは鼻孔から吸い込まれ、嗅いだ人の意識にのぼらないままに感情を左右し、行動に影響を及ぼします。まさに神秘の匂いを振りまく物質、それがフェロモンです」

非常に興味深いのは、男性の性フェロモンを嗅いだ男性の脳は、それを「匂い」として感知するのに、女性の脳は本能やリズムを整える視床下部が反応すること。逆に女性の性フェロモンを嗅ぐと、男性の脳は視床下部が反応して、女性はただの「匂い」として処理する。

つまり、人間の性フェロモンは異性にとっては「特別なシグナル」なのに、同性にとってはただの「匂い」に過ぎないのだ。どちらも感覚としては無臭であるにもかかわらず。

「その背景には恋人獲得を巡る熾烈な同性同士の競争があるのかもしれません。競争相手がフェロモンを出したことをすぐに察知して、すかさず対抗策を打ち出すために同性のフェロモンは脳で『匂い』として感知できるようになっている可能性はありますね」

ここでふと気づく。夫が不倫をしていることを、妻は「第六感」でわかるとよく言われている。この第六感こそが不倫相手のフェロモンなのかもしれない。夫が身に纏った「いつもとは違う匂い」を感じ取って、妻は夫の不倫を確信するのではないだろうか。

妻が不倫をしても、夫はすぐには察知できないことが多い。それは何らかの匂いを夫の脳が感じ取ったとしても、夫ははなから「妻が不倫するなどありえない」と思い込んでいるから気づかないのかもしれない。

動物として「子孫を残すこと」だけに集中して生きているわけではないのが人間。だからこそ、動物でありながら動物的でない面が多々あって興味深いのである。
(文:亀山 早苗)

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