愛する家族を「守りたい夫」の迷惑行為エピソード…新幹線の乗務員を責めた理由に妻「はあ?」

愛する家族を「守りたい夫」の迷惑行為エピソード…新幹線の乗務員を責めた理由に妻「はあ?」

妻や家族を「守る」のは男の役割なのだろうか。夫たちのその姿勢がどうもズレていて、周囲を困惑させるケースもある。

男性というのは、なぜかすぐに「愛する人を守り」たがるもの。それが世間的にも受け入れられやすいので、「別に守ってもらわなくてもいいけど」と感じている女性は「かわいげがない」と思われる。

もちろん夫婦や恋人同士で互いを「守りたい」と思うのは個人の自由。だが、それによって他者に不快感を与えるとしたら、それは正しいといえるのだろうか。


■夫が乗務員に文句を言い出した!
ときどき起こる新幹線等の座席間違い。この夏、家族で旅行したとき、この類いのことが起こったというサチコさん(42歳)。夫と10歳の息子と3人で指定席へ行くと、すでに初老の男性が座っていた。

「ここ、私たちの席なんですがというと、『いや、オレの席だ』って。私たちの指定席券を見せて、そちらも見せてくださいと言ったら、『オレの席だと言ってるだろ』と。

乱暴なのか酔っているのかわからなかったけど、とにかく怖かったので、乗務員を待ったほうがいいと思ったんです。たまたまそこに運良く乗務員さんが通りかかったので、状況を説明しました。

結局どうなったかわからないのですが、初老の男性は連れて行かれ、私たちは座ることができました。まあ、よくあることだしと思っていたら、いきなり夫が乗務員さんに詰め寄ったんです。『いったい、どうなってるんだ』って」


■はあ? 一件落着した途端にキレはじめた夫
それまで夫は一言も発しなかった。初老の男性と乗務員に対応したのはサチコさんだ。それなのに一件落着したら、突然、夫が乗務員を責めたのだ。

「だいたいあんたがしっかりしないからいけないんだ、みたいなことを言ったんです。オレの家族が傷ついたって。はあ?と思いました。乗務員さんが謝るので、もういいからと割って入りました。

夫は『オレが謝らせたから、もういいよね』って。いや、そもそもあんたは何もしてない、しかも乗務員さんに文句を言うのは筋が違うと言ったら、『オレがおまえたちを守ろうとしているのに、どうして感謝しないんだ』と今度は私たちに逆ギレ」

以前から似たようなことはあった。そのたびに「私に起こったことは自分で解決できるから」とサチコさんは言ってきた。かつて、近所の噂好きの奥さんのことや、根も葉もないところからのママ友のマウンティングなどで悩んだとき、夫に相談したことがある。

夫は「逆に噂を流してやれ」だの「こっちからマウントとってやればいい」だのおよそ現実的ではない方法を思いつくままに言っただけ。結局、サチコさんが自力で解決すると、「やっぱりオレの言った方法が正しかっただろ」と威張る。そうではなく、こういう方法で解決したと話してもそれは聞く耳を持たず流すだけ。

「それ以来、夫には何も相談しなくなりました。今回の新幹線の件で、ますます夫を信頼できなくなった」

夫は、困って頼ってくるサチコさんを期待していたのかもしれない。あるいは“やってる感”を出したかった可能性もある。いずれにしてもサチコさんは頼んでいない。


■ジーンズを強要すれば「娘を守れる」のか
うちの夫も「家族を守る」という言葉を口にすることがあるとマユミさん(46歳)は言う。高校生になった長女が休日、出かけるときはやたらと洋服をチェックするようにもなった。

「性犯罪が叫ばれているので、私も心配ではあるけど、娘には自由に生きてもらいたい気持ちもある。夫が服装についてあれこれ言うのはわかるんですが、私はむしろ、誰とどこへ行って何をするのかを尋ねます。

娘は絵画が好きで、高校でも美術部に入っているので、だいたいは美術展や画廊巡りなどを同じ志の友人としている。その程度なら多少スカートが短くてもいいと思うんです。夕方までには帰ってきますし」

ところが夫はジーンズをはけとうるさい。娘はジーンズが好きではないのに。ジーンズをはかないなら出かけるのは許さないと夫は言う。


■高校生の娘は泣き出してしまい……
「娘が泣き出してしまったので、私は行っていいと言いました。夫は私に『オレは家族を守りたい。娘を被害者にしたくない』って。気持ちはわかるけど、娘のことを尊重したいと私は言いました。すると夫はおまえに娘が守れるのか、と。だったらジーンズさえはいていれば被害に遭わないと言い切れるのかと私も言い返しました」

このままだと夫は娘を束縛し、支配する。娘はどんどん夫を嫌うようになる。マユミさんは夫に娘の気持ちや美術に対する情熱を語ってきかせたが、夫は「娘を守る」の一辺倒。だったら会社を辞めて娘に張り付くしかないわねと彼女は夫に盾突いた。

「心配でたまらないというならまだわかるんですよ。でも夫はひたすら、自分には娘を守る義務がある、と。そういう気持ちが支配につながるんだと言ってもわからない。だからといって娘の心のうちを深く知ろうとはしない。矛盾だらけなんです。娘が本当にかわいいなら信頼することも必要だと思うんですけどね」

10代の子をもつ親なら誰でも心配はするだろう。だが夫の「守る」はどこか観点が違うし、それが本当の愛情なのかと疑いすら抱いてしまうとマユミさんはつぶやいた。

▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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