老後破綻を回避するには?住宅ローン組み方の注意

老後破綻を回避するには?住宅ローン組み方の注意

住宅取得を検討している世帯にとって、マイナス金利政策は追い風のように思えます。しかし、住宅ローンの組み方次第では、老後に負債を残すことになりかねません


■3年前と比較すると、購入できる物件価格は130万円プラスに
住宅ローン金利は相変わらずの最低水準。しかし、2018年7月末に日銀が長期金利上昇を容認したことから、大手銀行の固定期間選択型の金利が、即座に上昇しました。りそな銀行は10年固定、三井住友銀行、みずほ銀行は15年固定の金利を、それぞれ0.05%の引き上げを実施。ただ、金利上昇は限定的で、日銀自体の「超低金利政策」は継続されるため、大幅な金利上昇には向かわないとみられています。

今回は、住宅ローン金利タイプのうち、長期金利(10年物国債)の影響を受ける、固定金利型に影響がでましたが、変動金利型は基準とする指標が異なるため、影響はでていません。相変わらずの低金利競争のようで、まさに借り時?という状態が続いています。

しかし、こういうときに資金計画を甘く考えてしまうと、のちのち返済困難に陥ってしまうキケンも潜んでいるのです。

3年前のフラット35(融資額9割以下、返済期間21年以上)の金利は1.58%でした。仮に、毎月返済額10万円、ボーナス返済なし、返済期間35年で試算すると、借入可能額は3220万円。2018年8月現在の金利1.34%では、借入可能額は3350万円となり、3年前と比較して約130万円多く借りられる計算になります。頭金が600万円だとすると、3年前は同じ条件で購入できる物件価格は3820万円。現在は3950万円までが可能です。

購入可能な物件価格が上がれば、それだけ選択肢は多くなります。そこに、資金計画を甘く考えてしまうキケンがあるのです。毎月10万円が家計に無理のない返済額であったにも関わらず、金利が低いからという理由で、融資額を増やしてしまうと、結果、毎月返済額が増え、家計に思わぬ負担がかかることになるのです。少し頑張れば手が届くとばかりに、当初の計画から逸脱してしまうと、長期の返済を考えれば、余計なリスクを背負うことになってしまいます。

もし頭金600万円で4500万円の物件を購入しようとすると、借入額は3900万円。毎月返済額は約11万6000円になります。当初予定から1万6000円のオーバー。年間で約20万円増えるわけです。最初は、家計を切り詰めれば、なんとかなる、と思っていても、10年、20年先に何が起こるかわかりません。毎月の赤字分をボーナスで補てんするようになったり、節約生活が続くことに嫌気がさしてしまう可能性もあります。昇給の見込みが不確定な状況で、返済負担が重くなることを安易に考えてはいけません。

前述の試算は、全期間固定金利のフラット35でのものです。もしも、固定金利選択型や変動金利であった場合、返済途中で金利が上昇すれば、さらに返済負担は増える可能性もあります。今後、金利上昇の可能性がゼロではない以上、過剰な借り入れは避けたほうが賢明でしょう。


■返せる額が借りられる額。基本の借り方は変わらない
時代とともに、お金のセオリーは変化していきますが、基本となる部分は変わらないものです。住宅ローンでいえば、金利は上下したり、新しい仕組みのローンが出てきたりと変化はありますが、基本となる「返せる額が借りられる額」というのは変わりません。毎月8万円が無理なく返せる額であれば、ローン金利が下がったからといって、借りられる額を増やしていいことにはなりません。

基本の考え方は、
1) 毎月返済額で無理のない金額を設定し、借りられる額を試算する
2) できるだけ毎月返済のみで試算、ボーナス返済は補完的にとらえ、1〜2割程度にとどめる
3) 35年返済で試算し、繰り上げ返済をうまく活用する
4) 頭金の不足を気にしすぎて購入を後送りすると、定年退職後も返済が続く可能性大
5) 必ずしも、60歳定年とは限らない。また、退職金をあてにした資金計画はキケン
6)夫婦でそれぞれローンを借りるなら、妻は低金利の変動金利で早期返済を

挙げればキリがありませんが、上記6つのポイントを抑えておけば、無理な資金計画をすることもないでしょう。


■60歳で完済を目指さなくてもいい。収入を得る道も視野に
最近は、晩婚化の影響で住宅購入の時期が遅くなり、60歳定年時にも住宅ローンが残っていることも多く、預貯金金利の低下で頭金が増えず、借入額を増やす傾向にもあります。しかし、50代に入ると、子どもの教育資金がもっとも重くかかる時期にさしかかり、教育費と住宅ローンの返済で、自分たちの老後資金を準備する時間が足りなくなります。今は、返せる額の住宅ローンであっても、教育費とダブルの負担に耐えられるのか、そういった観点も必要になるでしょう。

前述の基本の考え方3で「35年返済で試算する」と書きましたが、仮に毎月返済額を少し増やせる余裕があれば、30年返済、25年返済でローンを組むこともリスク回避になります。今は返済に問題がなくても10年後に負担が重いと感じたときに、35年返済に延長し、毎月の返済負担を減らすことが可能になるからです。

また、定年退職前に完済を目指そうと、こまめに繰り上げ返済をするのも大事なことですが、あまり無理をしすぎないことです。教育費のめどが立つまでは、あえて繰り上げ返済をせずに、その分を教育費に回すということもひとつの考え方です。少なくとも住宅ローン控除を受けられる期間は、所得税軽減の恩恵を受けるのもいいでしょう。

退職金で住宅ローンを完済すれば、すっきりするかもしれませんが、65歳まで再雇用、継続雇用で収入を得られるようなら、必ずしも退職金で精算することがいいとは限りません。老後資金の準備も十分でないままに、退職金がローン返済でなくなってしまうのは、さらに不安を高めてしまうことになりかねません。

住宅ローンは借りるときの状況だけではなく、教育費との兼ね合い、退職金をどう活用するのか、退職後も返済が続くなら、働き方はどうするのか、といった長期的なライフプラン、将来のイメージをもっておくことが重要です。住宅ローンが老後破綻の始まりとならないような、資金計画をしっかり立ててください。
(文:伊藤 加奈子(マネーガイド))

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