アドラー心理学から考える本当の豊かさを手にする方法

アドラー心理学から考える本当の豊かさを手にする方法

成功したい、お金を稼ぎたい。それが目的であるうちはあなたは成功はできないかもしれません。アドラー心理学によると、自己犠牲、他者に与えることができる人が成功するといいます。その最終法則について解説します。


■お金はあくまでも付属物。それを目的にしないことが大事
「私たちは自分で人生を作っていかなければならない。」「私たちは自分自身の行動の主人公である」とアドラーは著書の中で言います。アドラー心理学に詳しい岩井俊憲さんに、人間の心の持ち方とお金&成功の法則について聞きました!

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そもそも本当に成功している人、お金にも人にも恵まれている人は、最初から成功やお金を目的に行動していません。彼らはお金はあくまでも結果として付いてきたものであり、本来の目的は別にあると考えています。

たとえば、大リーグの大谷翔平選手はおそらく移籍を1年遅らせていたら、契約金はもっと上がっていたでしょう。しかし彼はお金ではなく大リーグで二刀流を試すという目的があり、それに従ったのです。

古くは日本人選手として大リーグにほぼ初めて挑戦した野茂英雄投手も、日本球界での年俸とは比較にならない安い年俸でドジャーズに移籍しました。

経営者でいえば、最近ならばJAL再建にまい進した稲盛和夫さんでしょう。JALという大企業を立て直すのに、なんと無報酬でその大役を引き受け、見事再建に成功しました。

では稲盛さんは全くのタダ働きで損をしたでしょうか? 結果として世間の彼に対する評価は高まりました。彼を慕い尊敬する若い人たちが彼のもとを訪ね、稲盛さんは盛和塾という経営塾を開き、後進を育てています。

真の成功者というのは、彼のように多くの人が集まる。人が集まればそこに縁が生まれ、機会が生まれ、仕事が生まれます。そして結果としてお金も集まり人生は豊かになっていくのです。


■お金を目的にしたら人生はしぼんでいく
お金はあくまでも結果として付いてくるもの。ところがお金を目的にしてしまう人がいます。お金を稼ぎ、増やすことが最終目標ですから、なりふり構わない。

一時的にそういう人は稼ぐことができるかもしれませんが、結局長続きしません。バブルの時に派手にお金儲けした多くの人が、その後消えたように、継続的な成功は難しいのです。

そういう人の周りには本当に力になってくれる人が集まりません。羽振りの良さにあやかろうという人や、上手にだましてお金を巻き上げようというよこしまな人物、怪しい人間たちが寄ってきます。結局お金の切れ目が縁の切れ目で、状況が悪くなるとクモの子を散らすように去っていきます。

つねに自分がトクをしたいと考える人は、継続的に成功することは難しい。さらに言えば本当に豊かな人生を送ることはできないのです。


■「共同体感覚」を育むことが人間の最終的な目的
アドラーは人間の最終的な目的は「共同体感覚」であると言います。社会的存在である私たち人間は、共同体の中でそれぞれが自分の役割と存在意義を持ち、居場所を持つことで幸せを感じるようにできているのです。

アドラーから言わせれば、どんなにお金をたくさん持っていても家族や仲間たち、自分を支えてくれる仲間たちがいない人は決して幸福ではないということです。

人間の悩みや問題は、突き詰めるとすべて人間関係から来るものだというアドラーの指摘も、そこに関連しています。つまり人間として私たちが生きる最終目的は、いかに良い共同体を作り、そこで他者と関わりながら成長するということなのです。


■give and takeではなくgive and giveが大事
では、よい共同体を作り、そこに属し、良い関係を築くにはどうしたらよいのでしょうか?

それは究極的には我欲を捨てること。そして他者に与えること。それもgive and takeではなく、give and give。ひたすら与え続けることだとアドラー心理学では考えます。

与え続けたら自分のものがなくなってしまう? とてもそんな余裕はない? もちろん自分のすべてを与えることは難しいでしょう。

しかし他者に対して何かしてあげたい、役に立ちたいという思いを持っていれば、日常のちょっとした行動にその片鱗が現れてくるはずです。

たとえば人が嫌がるような仕事もあえて引き受ける。一見すると何の得にもならない新年会や社内行事の幹事や役員を引き受ける。同僚や部下と飲みに行ったときに奢ったり、少し多めに払う……。ちょっとした日常の自己犠牲を積み上げていくことで、大きな流れとしてそれは必ず返ってきます。


■陰徳を積み、見返りを求めない人が成功する
あるいは人の見ていないところでごみを拾ったり掃除をしたりする陰徳を積むこと。見返りを求めず、他者のために労を惜しまない人は、不思議と人の評価が上がり、人が寄ってくる人物になっていくのです。

独特の存在感、説得力がある人物があなたの職場にもいるのではないでしょうか? おそらくそういう人は自己犠牲と陰徳ということを実践しているはずです。聖書ではこの事を「与えられるより、与える方が幸いである」と表現しています。

他者に与えること、そして見返りを期待せず、陰徳を積むこと。それが他者との関係を豊かに築き上げ、アドラーのいう人間の最終目的である共同体感覚を目覚めさせます。その結果として、お金も含めて、豊かな人生を実現することになるのです。

教えてくれたのは……岩井俊憲さん

1947年、栃木県生まれ。1970年早稲田大学卒業。外資系企業の管理職などを経て、1985年有限会社ヒューマン・ギルドを設立、代表取締役に就任。アドラー心理学カウンセリング指導者。上級教育カウンセラー。

取材・文:本間大樹
(文:あるじゃん 編集部)

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