退職金から天引きされた所得税も確定申告で取り戻せる

退職金から天引きされた所得税も確定申告で取り戻せる

退職金からは所得税と住民税が源泉徴収(天引き)されており、基本的に確定申告は必要ありません。ただ、確定申告をすると税金が還付されることも。いくら戻ってくるのかを試算しました。


■退職金の確定申告は基本的に必要ないが、税金が戻ることも
年の途中で退職し再就職をしなかった給与所得者(サラリーマンやパート・アルバイトなど)の場合、確定申告をすると、給与天引きされていた所得税が還付される可能性があることは広く知られています。

では退職金にかかる所得税ではどうでしょうか?

退職金は分離課税です。一般に退職金を受け取る時点で「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、それをもとに所得税と住民税、平成25年からは復興特別所得税が計算されて源泉徴収されます。

これで税金関係は終了しますので確定申告は不要となります。

しかし「不要」ということは「所得税と復興特別所得税(=以下「税金」とする)は頂いているので確定申告しなくてもいいですよ」ということであり、「してはいけません」ではありません。

確定申告することで、退職金から源泉徴収された税金が還付されるケースもあるのです。その仕組みをみてみましょう。


■退職金は退職所得控除のおかげで税金がかなり軽減
分離課税の退職金にかかる税金は、次の通りです。

・所得税=(退職金−退職所得控除)×0.5×所得税率
・復興特別所得税=所得税額×2.1%(平成25年1月1日〜令和19年12月31日まで)

なお、退職所得控除は下記の通りです。

・勤続20年以下の場合=40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円とする)
・勤続20年超えの場合=800万円+70万円×(勤続年数−20年)


■退職金にかかる所得税額の計算例
60歳で退職(勤続38年)する人が退職金2300万円を受け取るとします。

そのときの税金は、退職所得控除2060万円という素晴らしい軽減効果により、6万1260円で済みます(ただし別途、住民税(10%)が12万円徴収されます)。

・退職所得控除=800万円+70万円×(38年−20年)=2060万円

・退職所得=(2300万円−2060万円)×0.5=120万円

・退職金に課税される所得税:120万円×5%=6万円(課税される所得金額が195万円未満の所得税率は5%)

・退職金に課税される復興特別所得税:6万円×2.1%=1260円

→所得税+復興特別所得税=6万円+1260円=6万1260円

これで退職金に対する課税関係は、一応終わります。しかし、退職した年の所得総額によっては、確定申告することで、この退職金から源泉徴収された所得税が還付される可能性があるのです。

なお、住民税については、退職所得からの天引き(特別徴収)によって課税が完結することになっていますので、残念ながら還付はありません。


■退職金から源泉徴収された税金はいくら戻ってくる?
退職金に対する課税はかなり優遇されているので、税金は数万〜数十万円程度。驚くほどの金額ではありませんが、確定申告で還付されるのであれば、ぜひぜひ受けたいものです。では、計算してみましょう。

●条件
勤続25年、令和元年年5月に退職し再就職はしていない。妻と子どもが2人(高校生と大学生)。
・退職金=1500万円
・5月までの給与収入=265万円
・給与から源泉徴収された税金=10万4000円
・給与から天引きされた社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料)=40万円
・任意継続被保険者保険料=21万5000円
・生命保険料控除および地震保険料控除=11万5000円

●退職所得控除
800万円+70万円×(25年−20年)=1150万円

●退職所得
(退職金−退職所得控除)×0.5=(1500万円−1150万円)×0.5=175万円

●退職金から源泉徴収された税金額
・所得税額=175万円×5%=8万7500円
・復興特別所得税額=8万7500円×2.1%=1837円
→合計8万9337円

●給与より源泉徴収された所得税額
10万4000円

●年間所得額
・給与所得=167万3600円

計算方法:
265万円÷4=66万2500円(1000円未満の端数を切り捨て)⇒66万2000円
66万2000円×2.8−18万円=167万3600円(確定申告書の給与所得の計算手順より算出)

・退職所得=(1500万円−1150万円)×0.5=175万円

●確定申告時の所得控除額
・人的控除=177万円(基礎控除・配偶者控除・扶養控除(一般および特定))
・6〜12月の社会保険料控除(国民年金保険料)=1万6410円×7カ月×2人=22万9740円
・6〜12月の社会保険料控除(任意継続被保険者保険料)=21万5000円
・1〜5月の社会保険料控除=40万円
・生命保険料控除および地震保険料控除=11万5000円

●課税所得額
【給与所得だけで確定申告する場合】
・給与所得−(人的控除+社会保険料控除+生命保険料控除+地震保険料控除)
=167万3600円−(177万円+22万9740円+21万5000円+40万円+11万5000円)=0円

【退職所得を含めて確定申告する場合】
(給与所得+退職所得)−(人的控除+社会保険料控除+生命保険料控除+地震保険料控除)
=(167万3600円+175万円)−(177万円+22万9740円+21万5000円+40万円+11万5000円)=69万3860円
→69万3000円(1000円未満切り捨て)

●税額
・給与所得だけで確定申告する場合=0円
・退職所得を含めて確定申告する場合=69万3000円×5%(所得税)+69万3000円×5%×2.1%(復興特別所得税)=3万5377円

●還付される税金
・給与所得だけで確定申告する場合=10万4000円−0円=10万4000円
・退職所得を含めて確定申告する場合=10万4000円+8万9337円−3万5377円=15万7960円 

給与所得だけで確定申告すると、還付される所得税額は給与から源泉徴収された10万4000円だけです。

それが、退職金も含めて確定申告すると、給与から源泉徴収された所得税だけでなく退職金で納めた所得税の約60%が還付されることになります。この差は大きいですね。


■結論:退職金を確定申告すると得する人って?
このように、年間の所得額が少なく、それに対して所得控除(人的控除や社会保険料控除、生命・地震保険料控除など)や税額控除などが多い場合は、退職金を含めて確定申告すると、退職金から源泉徴収された税金(除く住民税)が還付される可能性がきわめて高くなります。

税務署の話では、「退職金を確定申告する人はきわめて少ない」。これは、「退職金に関する税金は、退職時点で精算が終わる」という思い込みゆえでしょうか。所得控除や税額控除が多い人は、退職金の確定申告に挑戦してみませんか。
(文:大沼 恵美子(マネーガイド))

関連記事(外部サイト)