老後資金は本当に3000万円も必要?

老後資金は本当に3000万円も必要?

「令和元年家計調査結果(貯蓄・負債編)」(総務省)によると、高齢者世帯の平均貯蓄額は2285万円。貯蓄額3000万円以上の保有割合は26%。老後に必要なお金、かかるお金は、いったいいくら?


■セカンドライフスタートまでに貯めておきたい金額は3000万円
松井証券株式会社が2020年9月に行ったアンケート調査「老後資金に関する調査」(対象:40〜60代の男性400人、女性400人)によると、老後資金として理想の世帯貯蓄額を50代は2000万円、60代は3000万円と考えています。

同年8月に日本生命保険相互会社が顧客の男女7543人(20代以下518人、30代1097人、40代1603人、50代2287人、60代1347人、70代以上691人)を対象に行ったアンケート調査「セカンドライフについて」によると、50代は、セカンドライフスタートまでに貯めたい金額を3000万円、ゆとりのある1カ月の生活費を、夫婦では29.0万円、単身では24.3万円と考えています。

40代〜60代の老後資金と生活費についての考えをもう少し詳しくご紹介します。

■セカンドライフまでに貯めておきたい金額は?
→50代、60代は3000万円超え

【目標額】40代/50代/60代 単位(%)
・500万円未満:7.4/7.2/7.6
・500〜1000万円未満:6.7/6.1/5.7
・1000〜3000万円未満:50.6/49.3/45.9
・3000〜5000万円未満:19.0/18.8/21.2
・5000万円以上:16.2/18.6/21.2
*平均額:2919万円/3067万円/3257万円

■現在の達成率は?
→60代の4分の1は100%達成

【達成率】40代/50代/60代 単位(%)
・まだ準備していない:10.6/7.5/5.5
・10%未満:23.1/14.6/7.9
・10〜30%未満:26.7/19.3/10.1
・30〜50%未満:19.7/14.6/11.3
・50〜80%未満:13.8/26.5/25.6
・80〜100%未満:2.5/6.7/15.0
・100%:3.6/10.8/24.7

■ゆとりあるセカンドライフに必要な生活費は?
→50代、60代は30万円程度

【1カ月の生活費(夫婦の場合)】40代/50代/60代 単位(%)
・20万円未満:19.9/14.1/9.4
・20〜25万円未満:22.6/20.9/14.9
・25〜30万円未満:23.4/26.3/25.6
・30〜35万円未満:17.2/18.5/26.0
・35〜40万円未満:7.1/9.1/9.0
・45〜50万円以上:7.2/7.9/12.4
・50万円以上:2.7/3.2/2.6
*平均額:27.8万円/29.0万円/30.8万円
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【1カ月の生活費(単身の場合)】40代/50代/60代 単位(%)
・20万円未満:34.6/32.5/23.7
・20〜25万円未満:28.5/28.5/26.8
・25〜30万円未満:16.8/18.8/21.4
・30〜35万円未満:11.9/11.9/13.8
・35〜40万円未満:2.8/2.5/3.6
・45〜50万円以上:4.2/4.0/8.5
・50万円以上:1.3/1.8/2.2
*平均額:23.8万円/24.3万円/26.6万円

「令和元年家計調査結果(家計収支編)」(総務省)によると、65歳以上の無職の夫婦世帯の生活費は約27万円ですので、アンケート調査結果の「ゆとりある生活費30万円」は妥当な金額といえそうです。一方60歳以上の無職の単身世帯の生活費は約15万円に対してアンケート調査結果は20万〜25万円。かなり豊かな生活を想定しているようです。

では、退職後の生活費として公的年金以外に必要とする金額を、前出の「令和元年家計調査結果(家計収支編)」の家計収支を基に計算していきましょう。
    
■老後に必要な生活資金、65〜90歳は約1620万円
高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1カ月の収入は約23.8万円、支出は約27.1万円、毎月約3.3万円の赤字です。

・収入……23万7659円(うち社会保障給付は21万6910円)
・消費支出……23万9947円
・非消費支出……3万982円
・収入−支出=▲3万3270円

社会保障給付=公的年金等とすると、毎月の公的年金では不足する金額は5万4019円(「社会保障給付−(消費支出+非消費支出)」=21万6910円−(23万9947円+3万982円))です。65歳リタイア後25年間(=90歳)に必要な生活費は約1620万円、30年では約1950万円になります。

■老後期間25年(65歳以降)
5万4019円×12カ月×25年=1620万5700円

■老後期間30年(65歳以降)
5万4019円×12カ月×30年=1944万6840円


■60歳リタイアの場合、老後に必要な生活資金は2700万円
高齢無職世帯(2人以上の世帯で世帯主が60歳以上の無職世帯)が90歳までの生活に必要とする資金は2700万円、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)は約1300万円です。65歳リタイアに比べ必要な生活資金が1.7倍程度になるのは、60〜64歳は公的年金が一部支給になることや老後期間が5年間長くなるためです。

■高齢無職世帯:生活資金だけで約2700万円必要
・社会保障給付……19万9651円
・消費支出……24万3260円
・非消費支出……3万2188円
・社会保障給付−(消費支出+非消費支出)=▲7万5797円

→ 老後期間30年(60歳以降) 2728万6920円
→ 老後期間35年(60歳以降) 3183万4740円

■高齢単身無職世帯:生活資金だけで約1300万円必要
・社会保障給付……11万5558円
・消費支出……13万9739円
・非消費支出……1万2061円
・社会保障給付−(消費支出+非消費支出)……▲3万6242円

→老後期間30年(60歳以降)……1304万7120円
→老後期間35年(60歳以降)……1522万1640円

老後資金は、生活資金と別に予備資金(=住宅のリフォームや医療・介護費用、子どもへの援助費用、葬儀費用など)として500万〜1000万円程度を準備したいので、60歳リタイアの老後資金は3200万〜3700万円、65歳では2100万〜3100万円と考えられます。

一般に言われている「老後資金3000万円」は、60歳リタイアの生活資金、65歳リタイアの老後資金、と考えるといいようです。


■2021年「改正高年齢者雇用安定法」施行、70歳まで現役?
2013年、原則65歳までの継続雇用を企業に義務づけた「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。平成30年6月1日〜令和元年5月31日の定年退職到達者のうち継続雇用された人は84.7%、継続雇用を希望しなかった人が15.1%、希望したが継続雇用されなかった人はわずか0.2%です。希望すればほとんどが雇用される状況です(「令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果」厚生労働省)。

60歳以上の雇用者数は387万人、常用労働者の約12%を占めています。内訳は、60〜64歳が約215万人、65〜69歳約114万人、70歳以上約58万人です(同集計結果)。

2020年3月、70歳まで就業機会を確保するための「改正高年齢者雇用安定法」が成立し、65〜69歳までの雇用確保を事業主の努力義務としました。2021年4月施行です。「70歳リタイア」の時代の幕開けです。

リタイア年齢が遅くなるということは、「老後期間が短くなる=必要な老後資金額が減る」ということです。将来は一生涯現役となり、「老後資金」という言葉はなくなるのかもしれません。
(文:大沼 恵美子(マネーガイド))

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