保険金を受け取ったら「医療費控除」はどうなる?

保険金を受け取ったら「医療費控除」はどうなる?

医療費控除は年末調整ではなく確定申告が必須です。交通費や年をまたいで翌年になったり、受け取った保険金の方が多い場合など医療費控除の基本について解説します。


■生命保険などの保険金・給付金を受け取ると医療費控除額に影響
毎年2月に入ると確定申告が本格化します。前年、病気やケガで医療費を支払った人で医療費控除の適用を受けようと考えている人は、その対象となるのかならないのかが気になるところです。

一方で、医療保険や生命保険、傷害保険などから保険金や給付金を受け取ったという人もいるでしょう。病気などに伴う医療費を負担しても、加入している保険から給付を受けている場合には、それも考慮して医療費控除の計算をしなければなりません。ここには高額療養費なども含みます。

医療費控除の確定申告において保険金を受け取った際の基本的な考え方、交通費や年をまたぐ場合、受け取った保険金の方が医療費よりも多い場合などについて解説します。


■医療費控除は所得控除のひとつ、確定申告で手続きを
医療費控除の基本的なことについて確認しておきましょう。まず「医療費控除とはなに?」ということですが、本人あるいは家族のために医療費を支払った場合、一定金額の所得控除を受けることができる制度をいいます。

所得控除ですから、自分の所得から差し引くことができます。結果、自分の所得が少なくなって税金も安くなるというわけです。

生命保険料控除や地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除などと同じカテゴリーの仲間と考えてください。


■医療費控除の対象となるための要件
医療費控除の対象かどうかを考える前に、次のことを最低限満たしている必要があります。基本的なことですが、重要な前提条件ですので必ず確認してください。

・納税者自身あるいは納税者と生計を一にする配偶者
・その他の親族のために支払った医療費
・その年の1月1日〜12月31日までに支払った医療費


■医療費控除の対象になるもの・ならないものの違い
確定申告で医療費控除の適用を受けようとする人が最も気になるところは、「医療費控除の対象になるもの、ならないもの」でしょう。

何が医療費控除の対象となって、何がならないのかは個別で様々なケースがありますし、非常に細かい話です。参考までにざっくりとした感じでお話しすると、負担した医療費が「治療」に関係するものは医療費控除の対象、「予防」や「美容」などに関係するものは対象外。大まかなくくりですが、こんなイメージでいてください。

なお、病院への交通費については医療費控除の対象となります。Excelなどで通院の日時と利用した公共交通機関(●駅〜●駅など)、交通費をまとめておきましょう。2018年の確定申告から領収書の添付(医療費の領収書も含む)は不要になっています。

しかし領収書の保管義務はあるので、正確に作成して後で見たときにわかるようにまとめておけばOKですが、紛失しないようにしてください。なお、タクシー代については、病院への通院に必要と認められるものについては可能です。例えば、公共交通機関で通院できない病気やケガの状況で、常識的な金額のタクシー代などです。

タクシーなら領収書がでますので保管しておきましょう。心配なら税務署などに個別の事情を話して相談してみてください。

2020年にはコロナ禍で医療費を支払った人もいるでしょう。新型コロナでも医療費の支払いがあれば医療費控除の対象です。なお、新型コロナは民間の医療保険などの給付対象でもあります。次に医療費控除の計算について解説しますが、これらの受け取った給付金などを加味して計算を行います。


■医療費控除の計算方法……生命保険の保険金等は医療費から差し引く
確定申告における医療費控除の具体的な計算式は次のとおりです。

医療費控除額=(1年間に支払った医療費の合計額−保険金等で補てんされた金額 ※1)−10万円(※2)≦最高200万円

(※1)医療保険や生命保険などで支給される入院給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(※2)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、その5%の金額

このように、単純に医療費負担があったから医療費控除の適用をと考えるのではなく、実際に受け取った保険金や給付金なども加味する必要があるわけです。


■医療費控除を受けるには確定申告が必要
医療費控除に限った話ではありませんが、こうした税制上の制度の適用を受けて、税金の負担を少なくしようとするなら確定申告の手続きが必要です。この際の必要書類は主に次のものです。

・医療費の負担を証明する領収書(保管のみ)
・医療費の明細書
・会社員などで給与所得のある人は、源泉徴収票の原本
・確定申告書A様式もしくはB様式

医療費控除は年末調整では手続きできませんので注意してください。


■セルフメディケーション税制など医療費控除にかかる改正(2018年)
平成29年分つまり平成30年(2018年)の確定申告から医療費控除にかかる改正が関係する事項が2つありました。具体的に確認していきましょう。

■医療費控除の提出書類の簡素化(領収書の提出・提示不要)
平成30年(2018年)の確定申告から医療費控除にかかる事務手続きについて改正されています。

・医療費の領収書の提出又は提示が不要
・医療費控除の明細書の提出が必要(但し医療費の領収書は5年間保管)

さらに医療費のお知らせ(医療費通知)で明細書の代わりとすることも可能です。但し医療を受けた時期によっては医療費のお知らせの記載がないことなどがあるので、領収書を見て医療費の金額をチェックしてください。

■セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の創設
健康の保持増進及び疾病の予防に関して一定の取組した場合、12,000円以上の対象医薬品の購入についてセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)を適用可能(医療費控除との選択適用となります)。

ポイントとしては医療費控除は領収書の代わりに明細書の作成・提出が必要(領収書は5年間保管)、セルフメディケーション税制ができたことです。医療費控除を適用するほど医療を使わなかった人もセルフメディケーション税制を適用できるようになりました。

但し、セルフメディケーション税制は、平成29(2017)年1月1日から令和3(2021)年12月31日まで期間限定です。


■保険金が年をまたぐ、翌年になったときに医療費控除は?
年末に病院で治療を受けたときなどに色々なお金のやりとりが年をまたいで翌年になることがあります。基本的な考え方として医療費控除の対象になる医療費は、実際に医療費を支払ったときを基準に考えます。また保険会社から保険金などが支払われた場合は、保険金が支払われる事由である医療費がいつかを基準に考え計算するのが原則です。

病院に入院・治療をしたのが12月、医療費の支払いは翌年1月にした場合、実際に医療費を支払った年に医療費控除の対象になります。

他には例えば12月から翌年1月まで入院して医療費がかかり、保険金・給付金がその後に確定・入金されるようなケースもあります。仮に医療費の支払いが12月と1月に支払っていれば、受け取った保険金はそれぞれ按分することになります。


■保険金の方が多い場合、確定申告の医療費控除はどう計算する?
前提として負担した医療費よりも支給された保険金・給付金の方が多い場合には、医療費控除で差し引けるものがなくなります。つまりそれ以上は控除が使えないということです。

勘違いしている人が多いのですが、他の医療費から保険金で引き切れなかった分について控除するわけではないということです。例を挙げてみていきましょう。

例)
年間の医療費が50万円
このうちある病気の手術費用12万円
医療保険の手術給付金20万円

20万円−12万円=8万円

医療保険の手術給付金の方が多いため、8万円控除できない分が余りましたがこれについて年間の医療費(他の医療費)から引くわけではないということです。保険金・給付金などでカバーされるのはあくまでその支払いの対象となった医療費を限度として差し引きます。

仮に引ききれない金額がでても、給付の目的と関係がない他の医療費からは差し引かないのです。間違えている人が多いところですから注意してください。


■保険金や給付金の申告漏れや、確定申告しないとどうなる?
確定申告の内容を間違えたのであれば修正申告などをするようにしてください。申告内容を間違えたので直しますという手続きです。

なかには保険金や給付金を申告しなくてもばれないのではないかと考える人もいるでしょう。

そんなことは誰も断言できませんし、そもそも脱税行為なので罰則を受けます。意図的に申告しないことと、申告内容を間違えたのは違いますから一緒にしないようにしてください。

また医療費控除は年末調整では手続きできないため確定申告が必要です。医療費控除の適用をするかは自分の選択ですから、確定申告するかは任意です。

例えば一般的に会社員などであれば医療費控除を使いたければ「確定申告をした方がいい人」に該当します。自営業なら「確定申告をしなければならない人」です。自分がどこに該当するかを考慮してしっかり手続きを進めてください。

※個別の税務上の事案については最寄りの税務署などに確認を取るようにしてください。
(文:平野 敦之(マネーガイド))

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