結婚以来3度の裏切り、でも…夫の“不倫ごとき”で離婚できない理由

結婚以来3度の裏切り、でも…夫の“不倫ごとき”で離婚できない理由

家族で同じ仕事をしていると、夫の「不倫ごとき」で一家離散するわけにはいかないという事情があるようだ。


■「家族一丸となって家業を」……離婚できない理由
歌舞伎役者の中村芝翫が4年ぶり2度目の不倫発覚と文春砲に撃たれた。妻のタレント・三田寛子は文春の取材に応じ、「離婚はない」と明言。「家業ですから、家族一丸となって」と役者である3人の息子とともに一家でがんばっていくと話したという。

一般的にも、家族で同じ仕事をしていると、夫の「不倫ごとき」で一家離散するわけにはいかないという事情があるようだ。


■夫の不倫に腹は立つけれど
「うちは夫の浮気が過去3回も発覚しているんですよ」

苦笑しながらそう言うのは、チヅルさん(48歳)だ。高校時代の同級生と結婚したのは23歳のとき。夫は高校卒業後、家業である勤続関係の工場で働いていた。

「当時は義父が社長で、義母も一緒に仕事をしていました。結婚すれば私も当然そうなるとわかっていましたけど、若かったから愛があれば何でもできると思っていたんですよ」

20代のうちに3人の子を産み、家事育児と仕事、すべて全力で取り組んでいた。地域のボランティアも買ってでたという。

現在、24歳の長男と22歳の次男は同じ工場で働いている。18歳の長女は今年から専門学校進学が決まっている。

「結婚当初は夫の実家近くのアパートに住んでいたんですが、次男が生まれたころに実家をリフォーム、同居するようになりました。そこからはもう義実家も何もありません。遠慮していたらやっていけない。夫のいとこが同居していた時代もあったので、常に大家族でしたね。私は本当は静かな環境で暮らしたかったけど、いつの間にか合宿所の寮母さんみたいになっていました」

最初の不倫は、長男を妊娠中に発覚、相手は夫がよく行くスナックのアルバイトの女性だった。

「結婚してすぐの話だし、頭に来たので大きなお腹をさすりながら、義父母と夫を前に『どういうことよっ』と大騒ぎしました。3人とも申し訳ないと土下座。それでも腹の虫がおさまらなくて叫んでいたら産気づいちゃって。それで生まれたのが長男です。今になると笑えますけど」

次の浮気は35歳くらいのときだった。

「そのころ、義父が倒れて夫が社長になったんです。小さな会社だけど、夫には夫のプレッシャーがあったんでしょう。夜中にふいに起きて飲みに行くこともありましたね。ある日、酔って飲み屋のママに送られて帰ってきたんですが、お礼を言う私に『いいダンナさんなんだから、しっかりつかまえておいたほうがいいわよぉ』って。ん?と思ったのですが、その後、彼女との浮気がわかりました。あのときすでに関係があって、夫を送るついでに私の顔を見に来たそうです。バカにしてますよね」

このときも義父母のとりなしと夫の謝罪はあったが、チヅルさんの頭を「離婚」の二文字がよぎった。

「ずっとこの家のためにがんばってきたのに、私はいつもこうやって流されて夫を許してしまうのかと葛藤もしました。でもあのころはまだ、ここが自分の家だという意識が薄かったんだと思いますね。あくまでも一歩ひいて“この家のため”と思っていましたから」


■義父を見送って……
義父を見送ったのは5年前。その後、子どもたちが家業を一緒にやるようになり、義母も現役。チヅルさんも工場で働きながら経理や従業員たちの生活にも気を配る。どう考えても、彼女の負担がいちばん大きいのだが、「この家」という意識から、「私の家庭」へと徐々に気持ちが変わっていった。

3回目の浮気が発覚したのは2年ほど前だ。

「私がカッとする前に、長男が家族も従業員もいるところで『はい、社長、アウト』と言ったんです。家庭内のことを会社で言わなくてもいいのにと思ったんですが、社長の浮気が発覚したらしいというのは噂になっていましたし、むしろ公にしたほうがいいというのが長男の考えだったようです。それがいいかどうかわからないけど、うちの場合は従業員と長男が一致団結した。どこか笑いを交えながら長男がうまく処理してくれた感じです」

とはいえ、チヅルさんの妻として、女としての気持ちがおさまったわけではない。長男からは「夫婦のことはそちらで処理して。でも離婚はできないと思うよ。おかあさんだってそう思うでしょ。だったら気持ちよく働ける環境を一緒に作って」と諭された。

「そのとき初めて、うちは家族で家業を守っているんだと痛感しました。私がなかなかもてなかった意識を、長男は早くから感じとって自分のものにしていたんですね」

従業員も含めて一家。だからみんなで助け合う。長男はそう強く心に決めていたようだ。それが功を奏したのは昨年来のコロナ禍。

「リモートなんてできない職人の現場。うちは感染対策をしながら仕事を続けました。従業員ひとりひとりと面接もして、困っていることはないか細かく聞いたんです。残業が減って給料減額になっている人もいますが、無担保で会社から貸し付けもしているし、食料品を分けたりもして、なんとか誰も辞めずにすんでいる」

ここで誰かが抜けることはできないのだ。もう、離婚を考えることはないだろうとチヅルさんは言う。

「男女の愛情云々という話ではないんですよ。悔しいと思うことはあるけど、今の私にとっては家業とみんなの健康が第一。さすがにコロナ禍で浮気されたら、衛生感覚がどうなっているのかと責めるとは思いますが……」

恋愛感情から家族愛、そしてもっと大きな同志的な愛へと、愛情の質も変化してきた。だからちょっとやそっとのことでは離れない。チヅルさんはしみじみとそう言った。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

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