モラハラ男の「呪縛の言葉」が消えない。ワンオペ育児で疲れた私を「ヤマンバみたい」と罵った夫

モラハラ男の「呪縛の言葉」が消えない。ワンオペ育児で疲れた私を「ヤマンバみたい」と罵った夫

程度の差こそあれ、人にはいくつになってもかつて好きだった人にいわれて、今もなお縛られている言葉があるようだ。「自由に、好きなように生きる」のはむずかしい。


■今でもトラウマ? 恋人や夫に言われた「呪縛の言葉」
程度の差こそあれ、人にはいくつになってもかつて好きだった人に言われて、今もなお縛られている言葉があるようだ。「自由に、好きなように生きる」のはむずかしい。


■大好きだった彼に言われた一言
「結婚も考えて4年つきあった彼に、30歳のときフラれたんです。どうしてと泣き崩れる私に、彼は『だって、おまえといてもつまらないんだもん』と。結局は彼が浮気をして相手の女性に子どもができてしまったため乗り換えたのが真相なんですが、彼につまらないと言われたことがずっと頭に残ってしまって……。次に人を好きになるのに4年かかりました」

マキさん(35歳)はそう言う。誰かを好きになりそうになると、自分はつまらない女だからダメだとブレーキがかかってしまうことが続いたのだという。

「去年、やっと好きな人ができたんですが、その人の顔色をうかがってしまうんですよね、私。彼から『なんか僕の表情を読もうとしている?』と聞かれたので、洗いざらいしゃべっちゃいました。彼は『もうそんな、しょうもない言葉に縛られなくていいよ。僕はきみといるときがいちばん楽しい』って言ってくれて。ようやく吹っ切れました」

それでもときどき、自分はつまらない人間なのではないかと恐怖心にかられる。そのためにこの4年間、彼女は仕事でスキルアップをはかり、経済学の本を読み、スペイン語を習ってきた。自分を向上させようとがんばってきたのだ。

「つい先日、彼に『僕はきみに敬意を抱いている。もっと肩の力を抜こうよ』と言われて、私、3歳年下の彼に抱きついて号泣してしまいました。この4年間、私はあの言葉でつらい思いをしていたんだと初めて認識したんです」

そんなことを言ったほうが責められるべきで、彼女は何も悪くないのだ。それに気づいて、彼女はやっと新しくスタートを切れると感じたそうだ。


■夫からのモラハラ
離婚して3年たつナナさん(39歳)。今は10歳と7歳、ふたりの子と彼女の実母と4人で暮らしている。

結婚したのは29歳のとき、いわゆるデキ婚だった。

「つきあってはいなかったんですよね。軽いノリの友だちだった。でも彼は結婚しよう、きみとなら幸せになれると言い切ってくれた。ただ、結婚しても彼の遊び癖が直らなかったんですよ。平日は飲み会ばかり、週末はサッカーや野球などのスポーツをやっていて。結婚しても独身時代の習慣をまったく変えようとしなかった。私との生活、子どものことなど何も考えていなかったんです」

彼は生活費さえろくに入れてくれない。つわりがひどくてもナナさんは仕事を続け、家事もきちんとやりとげた。それなのに彼からはいたわりの言葉もない。

「子どもが生まれたとき、遅れてやってきた彼が『うわ、人間とは思えない顔』と言ったんです。父親の自覚がないのが丸わかりでしょ。一瞬、看護師さんもドン引きしていました。うちの母なんて怒っちゃって。でもそういう人なの、悪気はないと私がかばっていました」

二人目が生まれてもワンオペ状態は続いた。実母が手伝いに来てくれたが、彼女は夫の愚痴をこぼすこともできなかった。もともと実母は「あの男は大丈夫かねえ」と言っていたからだ。

「極力、ひとりでがんばりましたけど、ある日、子どもを寝かしつけてリビングに戻ってきた私に夫が、『すごいな、ヤマンバみたい』と。仕事をして家事育児をしていたら、自分のことなどかまっていられない。『とても女としては見られねえな』と言う言葉が脳裏に突き刺さった。そのまま座り込んで号泣してしまいました」

さすがの夫も焦ったのか、「冗談だよ。本気になるなよ」と逆ギレした。

「そういうところがうっとうしいんだよ、とも言われましたね。もう、常にギリギリの状態で生活していたから、私も何かがキレてしまった。翌日は土曜日だったので、一睡もしないまま早朝、家を出てしまいました」

当時6歳と3歳の子を置いたままだった。ふらふらと駅まで歩き、電車に乗った。気づいたら相当遠くまで行ってしまっていたという。

「その間の記憶がはっきりしないんですが、携帯を見たら夫から鬼のように電話やメッセージが来ていた。夫が連絡したんでしょう、母からも来ていましたね。5時間ほどさまよって自宅に戻ると、母が来ていました。リビングでは夫が仏頂面して座っていた。もうこの人と暮らしたくないというのが本音だった。それでも『お昼でも食べる? 何がいい?』と台所に立ったんですが、そのまま気を失いました」

前日から寝ていない上に、その日は猛暑だったため熱中症になっていたのだ。救急車で病院に搬送され、その日のうちに帰宅したが、これを境に彼女はそれまでのようには生活できなくなってしまった。そして1年後に離婚。離婚は彼女から切り出した。夫には別れるつもりはなく、最後までごねていたという。

「離婚するとき、夫が『おまえみたいな女、オレしか引き取り手はないんだ。なのに離婚したいのか。最後のチャンスをやってもいいけど』って。最後の自制心がなくなって、夫の顔を拳で殴ってしまいました。夫はすぐに私を殴り返した。そのとき上の子が部屋に入っていて悲鳴を上げて泣き出して。私は鼻骨骨折しましたよ。もちろん、その慰謝料ももらいましたけど」

最後まで憎み合ってしまったナナさん。離婚後も夫が発したモラハラ言葉のあれこれが脳内で響くことがある。

「とにかく忘れたい。夫のことも、夫からの言葉も。でも忘れたいと思うほど縛られてしまうのも感じています。今は毎日を一生懸命生きるだけ。できれば夫に天罰が下ってほしいと思っています」

一時期は仕事もできなかった彼女だが、今は少しずつ仕事を始めている。呪縛の言葉は、どこまでも人を苦しめる。理屈では気にしなくていいとわかっていても、自分が自分を縛っていくのだ。脱却するには相当な時間がかかるのかもしれない。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

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