「正社員」じゃないとダメなの!?女性たちを分断させる“社会的立場”、格付けしたがる側の言い分

「正社員」じゃないとダメなの!?女性たちを分断させる“社会的立場”、格付けしたがる側の言い分

未婚と既婚、子どもの有無など、女性たちは(男性たちもそうかもしれないが)自身の立場によってカテゴライズされがちだ。既婚であっても仕事を続ける女性が多くなった今、今度は「パート、契約、正社員」などでの分断が始まっているという。


■「正社員」じゃないとダメなの!?
未婚と既婚、子どもの有無など、女性たちは(男性たちもそうかもしれないが)自身の立場によってカテゴライズされがちだ。既婚であっても仕事を続ける女性が多くなった今、今度は「パート、契約、正社員」などでの分断が始まっているという。


■学生時代の友人たちとのLINEで
「学生時代の友人とグループLINEでやりとりしているんですが、ひとりが第二子を出産したんです。ただ彼女、年子で産んでいて実家も遠方なので、『さすがにもう無理かも。上司、理解ないし。会社辞めようかな』と書いてきたんですよ。育休長くとって時短で復帰とかできないの?とみんなで話していたんですが、当の本人は『いったんやめて別の仕事についてもいいし、パートでもいいし』と。そうしたらA子が『パートで働くくらいなら専業主婦のほうがまだマシだよ』って。他の人からいっせいにクエスチョンマークが飛び交いました」

そう言うのはユウカさん(36歳)だ。彼女がA子さんに真意を聞いたところ、「パートは社会的立場が弱いでしょ。派遣も似たようなもの。技術があっての契約社員ならいいけど、やっぱり正社員じゃないと社会人って言えないでしょ」との返事があったとか。

「いやあ、びっくりしました。私は社会で暮らしている人は社会人だと思っていたけど、A子の解釈は違うんですね。正社員が社会人。彼女の解釈だとフリーランスなんて下の下みたいですよ。私がフリーランスだと知って言っているんだからけんかを売っていることになりますよね」

ユウカさんが、「私、フリーランスだよ」と言うと、A子さんは「あら、そうだった? 別枠だね」と言ったそう。ユウカさん、思わず笑い出してしまったとか。

「A子は前からそうやって格付けするのが好きなんですよ。自分が結婚したときも、同時期に結婚した友人に対して、夫の会社の知名度を比較していましたから。だけど、仲間内では、まあ、彼女はそういうのが好きだからねという程度ですんでいた。冗談っぽく言っているだけだったから。それが、このコロナ禍で、冗談ではなくてまじめに優生思想に寄っているから、最初は心配だったんです」

どんな働き方をしようが個人の自由だし、自由の裁量が及ばないこともある。正社員を目指してパートでがんばっている人もいるし、正社員で続けるのがむずかしくなっていったん退職する人もいる。社会的システムの未熟さから、望まない働き方をしている人もいる。だが、A子さんの発言はそういう大局的なものではなさそうだ。


■決めつける怖さ
「A子が、この年齢になって、以前より偏ったことを言っているのが怖いなと思って。彼女は望んだ会社に入ってバリバリ働いて、夫も有名企業に勤めていて、実母が家事万端と育児を引き受けてくれる。そんな恵まれた人はごく少数でしょ。それがわかってない。正社員かどうかは、その人がどういう人かとはまた別ものだと思うし、それを格付けして何が楽しいんだろうと不思議でしかたなかったんです」

だからユウカさんは、A子さんに「正社員が上でパートが下ってどういうこと?」と個人LINEで尋ねてみた。親しい仲でも、さすがにまずいことを言ったと思ってくれるだろうかと期待したのだが、A子さんは追い打ちをかけるように「社会人としての優劣があるということ。うちの会社だってパートや派遣は雇い止めされたけど、正社員は誰もクビになってないもん。こんなご時世で生き残れるのは優秀な人材だけ。そもそも優秀だから正社員になってるわけよ」と返してきた。

「さすがに呆れて何も言えなかった。ふたりだけのやりとりだからみんなは知りませんが、私はもうA子とつきあう気が失せました」

グループLINEは現在、止まったままになっている。ユウカさんは、個々とのやりとりを続け、やむを得ずA子さんを除いた新たなグループを作った。本当はそんなことしたくないのだけどと彼女はつぶやく。

「正社員が、自分たちが上という意識をもっている職場は、派遣や契約、パートなどは働きづらいでしょうね。そういえば今回のワクチンの職域接種でも、正社員にしか打たせなかったというところもあったみたいだし。そういう企業の体質が働く人たちを分断させている可能性もあるんじゃないでしょうか」

もう少し世の中が落ち着いたら、またA子とも会う機会があると思う。そのときは顔をつきあわせてきちんと話したいとユウカさんは言った。

コロナ禍は、今まで気づかなかった人の価値観や人生観など、さまざまなことを炙り出し続けている。

▼亀山 早苗プロフィールフリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

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