デルタ株で増えるブレイクスルー感染…接種後になぜ?“感染しやすい人”に傾向はある?【医師が解説】

デルタ株で増えるブレイクスルー感染…接種後になぜ?“感染しやすい人”に傾向はある?【医師が解説】

ブレイクスルー感染とは、ワクチン接種後にその感染症にかかってしまうこと。新型コロナウイルス感染症でも起こっており、特に変異種であるデルタ株で多く報告されています。ブレイクスルー感染の原因、死亡率、対策法について解説します。


■ワクチン接種したのにコロナに感染することはある?
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種後の「ブレイクスルー感染」が報告されています。ブレイクスルー感染とは何か、考えられる原因や、どれくらいの割合で起こる可能性があるのか、重症化や死亡リスクはあるのか、それぞれ見てみましょう。


■ブレイクスルー感染とは何か……接種後に感染する主な原因
「ブレイクスルー感染」とは、ワクチン接種をしたにもかかわらず、その病気に感染してしまうことをいいます。「ブレイクスルー」は「突破する」と訳されますが、ワクチンによって感染を予防・防御したところをウイルスが突破し、感染が成立してしまうような状態です。

効果の非常に高いワクチンでも、発症予防効果が100%でない限り、ブレイクスルー感染は起こる可能性があります。

ブレイクスルー感染が起こる原因としては、主に・ワクチン接種による抗体が弱く、免疫が不十分だった・ワクチン接種から時間が経ったことで免疫が低下した・ウイルスが免疫を逃れる株に変異したといった可能性が挙げられます。

例えば、毎年多くの人が接種しているインフルエンザワクチンでもブレイクスルー感染はよく見られますし、その他の抗体がより強くつきやすい生ワクチンでも、接種後に感染するケースはあります。


■ブレイクスルー感染しやすいデルタ株……ワクチン効果が低い変異種の脅威
従来の新型コロナウイルス感染症でも、ワクチン接種後の感染例がありますが、現在、特に問題になっているのは、新型コロナウイルスの変異株によるブレイクスルー感染です。

先述の通り、ウイルスが変異を繰り返す中で、それまでの免疫を逃れるような新たな株が生まれ、感染拡大することがあります。現在流行の中心となっているデルタ株は、ウイルス自体の感染力が強くなったのに加え、ワクチンによる免疫も効きにくくなったと考えられています。

ファイザー社や武田/モデルナ社のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは、従来株に対しては94〜95%の発病予防効果があると考えられていました。イスラエルによると、従来株に対してなら、感染そのものを防ぐ効果も91.5%あることが報告されていました。

しかし、デルタ株にほぼ置き換わったイスラエルでは、発病や感染を防ぐ効果が64%まで下がっています。ウイルス変異により、ワクチンの効果が下がってしまったことがわかります。


■ブレイクスルー感染しやすい人の傾向・共通点はあるのか
ワクチン接種をした人すべてに抗体検査を行っているわけでないため、ブレイクスルー感染しやすい人の傾向や共通点については現時点でははっきりとわかっていません。ただ、同じワクチンを接種しても、抗体量には個人差があることがわかっています。

感染の成立には、ウイルス量、感染者との距離、時間、遮蔽物、免疫力などの多くのことが影響しますし、当然のことではありますが、ワクチン接種後に安心して感染予防をやめた人は、その分感染リスクが高くなります。単一ではなく複数の要因が関与している可能性があります。

現在、時間経過と抗体低下の有無やそのスピードについても徐々に明らかになってきていますので、今後は必要に応じてワクチンの追加接種を考えていくことになるでしょう。


■ブレイクスルー感染を減らす方法・対策法
ブレイクスルー感染を減らすために大切なのは、新型コロナウイルスの変異株の出現を抑えることです。感染が急拡大している状況では、ウイルスも変異しやすくなります。基本的な対策に戻りますが、変異株の出現を減らすためにも、新規感染者を減らす基本の感染対策が重要なのです。

また、ワクチン接種済でも100%の効果があるわけではないので、感染症が漫然と拡大している状況では、未接種でも接種済でも感染予防対策は必要です。

感染者数が多いとブレイクスルー感染も増え、よりワクチンでは対処しにくい変異種の出現につながりますので、一刻も早くワクチンを行き渡らせ、集団免疫を獲得することが、早期収束に向かえるかのカギとなります。


■新型コロナのブレイクスルー感染による死亡率は0.001%未満
では、低い確率とはいえ、ワクチン接種後に感染する可能性があるなら、ワクチン接種が無意味なのでしょうか? 結論から言うと、決してそのようなことはありません。

米国CDCは「ワクチン接種を済ませた人での新型コロナウイルスによるブレイクスルー感染のために亡くなる恐れは0.001%未満」と報告しています。つまり、ブレイクスルー感染はゼロにはできないものの、現時点ではブレイクスルー感染が起こった場合も軽症が多く、発熱が見られても重症肺炎にはなりにくいこと、死亡率は非常に低く抑えられることがわかってきています。

一方で、ワクチン接種後も感染の可能性があること、感染した場合は軽症でも人に感染させることがあることも考慮する必要があるでしょう。まずは「80%以上の集団免疫」になるまでは、一人一人の感染症対策が大切です。ブレイクスルー感染の報告も頭に入れつつ、可能な限りワクチン接種をしていく方が望ましいと考えられます。

▼清益 功浩プロフィール小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
(文:清益 功浩(医師))

関連記事(外部サイト)