「うつ病」に効く食べ物や栄養素は?「チョコレートを食べたくなる」って本当?【管理栄養士が解説】

「うつ病」に効く食べ物や栄養素は?「チョコレートを食べたくなる」って本当?【管理栄養士が解説】

過剰なダイエットの背景にある「やせ願望」と「うつ症状」には関連があるようです。うつ病は心の風邪とも言われますが、実際の風邪と同じく、栄養面から予防したり治療したりすることは可能なのでしょうか?


■眠気・だるさ・心身の疲労感……やせ願望とうつ症状の関係
過剰なダイエットなど、若い女性の「やせ願望」が問題視されている現代。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、

“若年女性はやせの者の割合が高く、平成29年国民健康・栄養調査では18〜29歳の女性で20.9%となっている。 若年女性のやせ対策として、より早い年齢からの栄養状況の精査と対応が必要である。”

とされています。最新版の令和元年版も20歳代女性のやせの者の割合は20.7%であり、やせ対策が必要な状況は全く改善されていません。これを受けて、厚生労働省は「健康日本21」のなかで、平成34年(2022年)までに、20代女性のやせの割合を20%まで減少させたいという目標を立てています。

さらに「若年女性の痩身志向が食行動と疲労に与える影響」によれば、肥満体型ではない若い女性にも「やせ願望」を持っている人が多いようです。その背景には、モデルなどが公表している極端にやせた身長と体重に憧れての「誤認識」があるのではないかと考えられています。

また、「やせ願望」を持っている人は、やせ願望のない人よりも「眠気とだるさ」を感じているという報告もあります。この理由としては、単純に睡眠時間の短さだけでなく、ありのままの自分に自信を持つことができず、心身の疲労が蓄積しやすい可能性も指摘されています。

本来であれば、健康な心身の維持に必要ないはずの「やせ願望」が、精神状態にも大きな影響を与えてしまっているのは残念なことです。


■若い女性には「新型うつ」も多い? 早期に適切な対処を
「新型うつ」という言葉も一般に浸透してきました。「現代型うつ」と呼ばれることもありますが、「新型」「現代型」という言葉がついているものの、以前から知られていた概念です。いずれも正式な病名ではないため、病院で診断書の病名欄に「新型うつ」などと書かれることはありません。

ではどのような状態を指すのかというと、朝仕事に行こうとするとどんよりと気分が落ち込み、夕方、仕事が終わって帰る頃になると元気になる……というものです。「誰にでも少しは当てはまることなのでは?」と感じなくもありませんが、この朝のどんよりとした気分と夕方の元気な気分の差が大きい状態が「新型うつ」の状態だと考えられています。

これには職場の雰囲気や、本人の真面目な性格などに原因があるといわれています。職場で、ひょっとして……と思う人がいたら、適切なサポートをしてあげることが望ましいですので、「いわゆる新型うつの理解と対策は?」なども参考にされるとよいでしょう。

また、「新型うつ」と同時に、不眠や過食を合併する人も多いようです。不眠や過食によって、「やせ願望」が引き起こされることでも、上述のような心身の疲労感を招いてしまうことがあるので、できるだけ早めに適切な対処をする必要があります。


■うつ症状に効く食べ物や栄養素はあるのか
このように、若い女性のうつは、

やせ願望と生活習慣の乱れ→不要なストレス→ストレスからくる不定愁訴→健康を損なうという負のスパイラルを形成しているケースが多く見られます。うつ症状に負けないためには、このスパイラルをどこかで断ち切ることが大切です。

では、食べるものや食べ方の工夫で、うつ症状を予防したり、軽減、改善することはできるのでしょうか? うつ病との関連がいわれている食べ物についても見てみましょう。

■チョコレートとうつ病の因果関係は不明
例えば、「チョコレート」はうつ病、特に新型うつの人が食べたがる食品として有名です。実際にうつ症状のある人は、うつ症状のない人よりもチョコレートを多く消費していたという報告もあります。しかし、チョコレートを食べることが原因でうつ病を引き起こしやすくなるのか、うつ病になることでチョコレートを食べたくなるのかの因果関係は分かっていないようです。

■セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は軽いうつ症状に効果
サプリメントとしてよく使われているハーブのセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は軽いうつ症状にはこれだけで十分な効果があるとされています。

■オメガ3脂肪酸はうつ病予防に有効?
さらに、栄養素では「オメガ3脂肪酸」。オメガ3脂肪酸はEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)など、魚に多いことが知られています。魚を多く食べている人は産後うつ病の頻度が少なくなるとの研究結果もあります。

■カフェインの摂りすぎはうつ病に関連する可能性
「カフェイン」の摂りすぎもうつ病と関連があるといわれています。カフェインはコーヒー、緑茶、紅茶、栄養ドリンクなどさまざまな飲み物に含まれていますが、アメリカ精神医学会ではコーヒーを1日2杯以上飲むことをカフェイン中毒の診断基準の1つとしています。外出するとすぐにコーヒーを飲みたくなる人は、注意したほうがよいかもしれません。

■飲酒とうつ病の関係
また、女性はうつになると飲酒する人が増えるといわれています。女性は飲酒によって乳がんリスクも上がるといわれていますので、うつ病予防とあわせて飲酒の頻度や量には気をつけたいところです。

■アデノシルメチオニン・葉酸・L-トリプトファンはうつ病に効果
ほかにも「アデノシルメチオニン」「葉酸」「L-トリプトファン」などの栄養素がうつに効果があるといわれています。

そして、栄養素ではありませんが、偏った食生活で栄養状態が悪化して「低コレステロール状態」になると、精神状態に悪影響が出やすいといわれています。一般にコレステロールは悪玉だと考えられていますが、体に必要な成分なので、低ければよいというわけではありません。


■やせすぎだけでなく肥満もうつ傾向に…うつ病予防に「標準体重の維持」を!
ここまで、若い女性たちの「やせ願望」がうつ病を招くことを解説してきましたが、一方で、肥満者にもうつ病患者が多いという事実もあります。肥満傾向の人は座っている時間が長く、うつ症状を和らげると考えられている運動習慣などがないことが多く、さらに内臓脂肪の蓄積もうつのリスクを増加させるといわれています。

やせ、肥満ともにうつ病リスクが高いということは、うつ病予防には「標準体重を維持すること」も実は大切なのかもしれません。

精神面のケア方法は多岐に渡りますが、まずは今回ご紹介した栄養面も安定した精神状態を維持するために大切なこととして、ぜひ覚えておいてください。

▼平井 千里プロフィールメタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。
(文:平井 千里(管理栄養士))

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