ゴルフとスマイルでアンチエイジング

ゴルフとスマイルでアンチエイジング

ゴルフ+スマイル=アンチエイジング

今週末の軽井沢は「渋野フィーバー」の人出と渋滞で大変なことになったようだ。

「渋野」というのは言うまでもなく、弱冠20歳にして2週間前のゴルフ全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手。彼女の凱旋2戦目となる国内トーナメント観戦のため、大勢のギャラリーが軽井沢に押し寄せたらしい。残念ながら最終日の最終18番で痛恨のボギー。優勝は逃してしまった。ゴルフダイジェスト社のオンラインニュースによると、観客動員数は初日の金曜が昨年より2,448人多い5,577人。2日目は9,481人だったという。

こんなことを書くと、ゴルフ情報をマメにチェックする大のゴルフ好きのように思われそうだが、実は僕はほとんどゴルフをしたことがない。10年あまり前にレッスンを時々受けた時期はあるが、残念ながらコースデビューには至らなかった。

だが、僕のゴルフやゴルフダイジェスト社との関わりは長く深い。

「お若いですね」と言わせよう。

もう8年近く前のことになるが、僕は2011年の秋、80歳の誕生日を迎える直前にゴルフダイジェスト社から、「「お若いですね」と言わせよう。」というアンチエイジング本を出した。「長生きすればいいってもんじゃない」というタイトルの第1章から最終章の「見た目のスローエイジング」まで、その当時としては最新のアンチエイジング医学の情報を一般読者向けに幅広く、分かりやすく盛り込んだ本だった。

それに先立つこと5年、ゴルフダイジェスト社の編集者から「ゴルフとアンチエイジング」をテーマにした本の執筆を持ちかけられた。当時、アンチエイジング医学をどうやって一般の人にも興味を持って貰うか模索していた僕にはありがたい話だったが、問題は「ゴルフ」。僕は大昔に何度か練習場で球を打ったことがあるだけ。彼にはそれを正直に伝えた。

ゴルフとアンチエイジング

それなら初心者、特に高齢者に教えるのが上手なプロをご紹介しましょうと編集者は即座に提案。半ば強制的にレッスンを受けることになった。このような時に機転の利いた提案ができることは編集者にとって重要なスキルの一つかもしれない。余談だが、彼はその数年後、週刊ゴルフダイジェストの編集長になった。

ゴルフレッスンの師匠は「中心感覚打法」という理論を提唱し、多くのゴルフ著書があるプロゴルファー増田哲仁氏。多忙な師匠のスケジュールに僕の予定をなかなか合わせることができず、何回かレッスンを受けると数ヶ月間の間が空くということを繰り返すようなペースだったが、本の構想を練る作業と並行して2年ほど、増田プロの生徒として貴重な体験をした。

増田プロが考案したさまざまな運動の中にはわざとバランスを崩す動作があった。それに対して体は自然にバランスをとろうとする。その繰り返しの中で無意識のうちに体が覚える体の軸、最近はやりの言葉でいうと「体幹」を中心とした動作やバランス感覚を確立できると、手足が安定して動いて自然なスイングができるようになる。残念ながら僕はその完全習得にまでは至らなかったが、この「中心感覚」は本のメインテーマの一つでもあった「人体の復元力」と本質的に共通するものがあることに気がついた。

結果的には、その断続的なゴルフレッスンは最後まで「体験レッスン」レベルで終わった。ゴルフレッスンだけでなく執筆・編集作業も予想外に難航し、再検討や再調査を挟む断続的なプロセスになってしまった。アンチエイジング医学は体のあらゆる部位・疾患や「心」まで扱う広範囲な学問。それぞれの部位や疾患の専門家の多くは「老化」や「加齢」の専門家ではなかったこともあり、日本のアンチエイジング医学はいろいろと模索していた時期だった。欧米でも、各分野で諸説入り乱れる中、老化現象自体を病気だとしてそれを細胞や遺伝子レベルで治療することを目指す研究など、さまざまな取り組みが加速した時期でもあった。

紆余曲折は経たものの、当時の最新アンチエイジング医学の概論として一定の割り切りをして、なんとか一般向けの内容に仕立てる見通しは立った。だが当初のテーマである「ゴルフとアンチエイジング」の「ゴルフ」部分について、万年体験レッスンで終わった僕が、たとえば「中心感覚打法」のようなゴルフ愛好家向けの話も交えながアンチエイジング医学を論じるのはあまりにも無理があった。

ここでも編集者がまた妙案をひねり出してくれた。

ボビーよ、待っとれ

以前のコラムにも書いたが、東京・世田谷の町医者だった僕の親父は筋金入りのアマチュアゴルファー。84歳で医院を閉じ、熱海に隠居してゴルフ三昧の老後を送った。87歳の時には、自分の年齢を下回る打数でホールアウトするといういわゆる「エイジシュート」を達成し、その後、92歳と94歳の時にも達成した。週刊ゴルフダイジェスト誌には「ボビーよ、待っとれ」と題した連載コラムを持っており、ゴルフダイジェスト社など幾つかの出版社から自身が考案した呼吸法に関する健康本を出版した。その呼吸法を普及させる講演活動のため、91歳から100歳までは全国各地を飛び回った。「俺は120歳まで生きてみせる」が口癖だった親父はゴルフスイング研究もしつつ、最低週1回はコースをラウンドした。

もともと親父とこのような関わりがあったからこそ、ゴルフダイジェスト社は僕に「ゴルフとアンチエイジング」をテーマにした本の執筆を提案した。当時103歳だった親父は100歳の時に起きた脳梗塞と大腿骨骨折の後遺症で寝たきり生活。認知症もかなり進行していた。

編集者は本の随所に僕が回想する親父のエピソードを混ぜ込み、最終的には「ゴルフとアンチエイジング」という当初のテーマを多少なりとも反映することができた。残念ながら親父は2008年3月、106歳の誕生日を目前にして他界。本が出版されたのはその3年半後、企画誕生からは5年が経過していたが、当初このテーマが設定されていたことで僕にとっては認知症で寝たきりの親父との共著のような意味深い本になった。

そんなわけで、今も僕には本格的に「ゴルフとアンチエイジング」論を語る資格がないのだが、それを承知であえて書こう。
多くの高齢者にとっては渋野選手の「シブ子スマイル」だけでも十分アンチエイジング効果があるのではないだろうか。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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