「ヒアルロン酸」その機能性と可能性は? ヒアルロン酸機能性研究会

「ヒアルロン酸」その機能性と可能性は? ヒアルロン酸機能性研究会

ヒアルロン酸機能性研究会 第5回学術大会

「ヒアルロン酸機能性」という言葉から、まず何を思い浮かべるだろうか。

ある人は「ヒアルロン酸配合」や「保湿」というキーワードとともに宣伝される化粧水やクリームあるいはサプリメントなどのスキンケア商品を、またある人は眼科医に処方されるドライアイ用の目薬を、さらに別の人は顔のしわやたるみを治療するための液体注入施術を想起するかもしれない。

このようなさまざまな製品やサービスに利用されるヒアルロン酸の機能性に取り組む研究会、「ヒアルロン酸機能性研究会」の第5回学術大会が9月26日、東京・千代田区の城西大学東京紀尾井町キャンパスで開催された。

ヒアルロン酸利用の主要3領域

保水性と粘性という2つの特性を持ち、主に医薬品、化粧品、食品という3つの領域にわたり原料として利用されるヒアルロン酸。これらの製品分野は大会冒頭に登壇した城西国際大学・杉林堅次学長による会頭講演テーマ、「医薬品、化粧品、食品素材としてのヒアルロン酸とSociety 5.0について」にも反映されていた。「Society 5.0 (ソサエティー5.0)」とは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続くものとして政府が提唱する未来社会。「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」という概念だ。

半日という限られた大会日程に凝縮されたプログラムの大半は医薬品、化粧品、食品のいずれかの分野に直結した専門性の高いものだったが、会頭講演では杉林氏がヒアルロン酸機能性研究を取り巻く世界的な現状や未来をマクロ視点で解説。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などのデジタル技術やバイオ技術の革新、爆発的な人口増加と急速な人口減少・少子高齢化が進む国々が混在する中で広がる社会格差など、世界情勢や地球環境の流れの中で今後のヒアルロン酸機能性研究のあり方や課題を述べた。

続く基調講演「健康食品の機能と表示」で登壇した城西大学薬学部・和田政裕教授は、「栄養機能」「嗜好・食感機能」「生体調節機能」という食品における機能性の種類、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」そして第三の保健機能表示制度として2015年に始まった「機能性表示食品」の制度上の相違点や本質について解説。さらに、食品と医薬品を分けるいわゆる「食薬区分」における「保健の用途」と「医薬品の効果」の定義やその分かれ目となる領域(食薬中間領域)の研究に基づく考察など、ヒアルロン酸を健康食品の素材として扱う上での現状や課題について述べた。

学術講演と特別講演

大会のメインとなる学術講演セクションは、ヒアルロン酸の産業利用を特許トレンドから分析・解説する講演で始まった。近年、特に医薬品と化粧品の2分野においては出願数ベースで中国企業が圧倒的な伸びを見せているものの、食品分野を含めた全体としては日本企業の存在感が大きい。グローバル市場での産業利用という視点では重要なポイントだ。

続いてヒアルロン酸の経口摂取と皮膚塗布に関する2つの講演、さらにはヒアルロン酸を利用する商品開発を行う企業や大学によるショート・プレゼンテーションなど、ヒアルロン酸利用3領域の幅広さを反映する多彩なセッションが行われた。

大会終盤の2つの特別講演でまず登壇したのは黒柳能光・北里大学名誉教授。厚生労働省の再生医療プロジェクトの一環として自身が取り組んだ、ヒアルロン酸とコラーゲンを利用した培養皮膚の研究や、皮膚再生のための医療用製品開発について述べた。続く特別講演では、かつて北里大学時代に黒柳氏のもとで培養皮膚の研究にも関わったという、湘南藤沢形成外科クリニックRの山下理絵総院長が登壇。美容医療におけるヒアルロン酸注入治療の実際や注意点について、解剖学や形成外科の視点を交えて解説した。

黒柳氏は研究者としての自身の経験に基づき、「最先端医療の確立は『花』であり、通常医療としての普及が『果実』」という比喩を用いて基礎研究の意義を語った。最先端医療を確立は基礎研究の成果を臨床研究に発展させることにより実現する。重要なのは、それをさらに通常の医療として普及させることだという。患者とともに時間との戦いに直面することも多い医療分野ならではの重みのある言葉だが、食品や化粧品も健康に関わる分野。ヒアルロン酸の産業利用をさらに発展させる上では食品・化粧品の研究開発にも当てはまる部分があるのではないだろうか。

ヒアルロン酸の機能性と可能性

1934年に米コロンビア大学の研究者により発見され、当初は水分保持のための食品添加物や競走馬の関節炎治療薬として使われていたヒアルロン酸。1960年代以降、人間のための医薬品や化粧品、さらには栄養補助機能のある食品素材として、その利用範囲は大幅に拡大し、関連する産業が発展してきた。

冒頭の会頭講演の終盤、杉林会頭は近年のヒアルロン酸機能性研究の発展とともに変形性膝関節症やドライアイ、乾燥肌など、加齢や生活環境の変化などにより生じる体の「うるおい不足」やそれに伴うQOL(生活の質)の低下に対する解決策・軽減策として、ヒアルロン酸が医薬品、化粧品、食品の各分野で重要な役割を果たす存在になったことに言及。その上で、ヒアルロン酸の機能性に関する臨床研究や作用機序の解明などの基礎的研究はまだ十分ではないとした。例えば、ヒアルロン酸の有効性を査定するためには、体内におけるヒアルロン酸の働きを分子量別の試験・研究と定量的評価により把握することが不可欠という具体例を挙げ、今後、ヒアルロン酸に関する「分野・職種を超えたinterdisciplinaryな議論が必須」だとして講演を締めくくった。

「interdisciplinary」とは、「学際的な」あるいは「複数の異なる学問・専門分野にまたがる」を意味する英語。医薬品、化粧品、食品は、制度上の分類・規制や消費財としての目的・用途はそれぞれまったく異なるが、その元となる生産財であるヒアルロン酸の機能性の要は保水性と粘性という共通項に集約される。消費財レベルでの活用・応用範囲には幅広い可能性があり、この数十年間ではまだその一部が実現・製品化されただけに過ぎないのかもしれない。

ヒアルロン酸の産業利用のさらなる拡大の可能性を背景に、ヒアルロン酸機能性研究会は今後、その機能性・有効性はもちろん安全性も含め、基礎研究・応用研究から製品化・事業化までのさまざまな可能性や課題を学際的に認識し議論する場として、今後さらに重要な役割を担うことが期待される。

【参考】

ヒアルロン酸機能性研究会 公式ウェブサイト
http://www.hfa.jp/

医師・専門家が監修「Aging Style」

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