異常気象とプチ整形と...

この週末、また超大型の台風が本州を直撃した。

今年の台風襲来が近年のいわゆる異常気象とどの程度の関係があるのか知らないが、そもそも毎年のように異常気象だ気候変動だと騒ぐような状況が続いている。何がどういう状態なら正常で、それがどうなると異常なのかすら分からなくなる。

専門家は短期的な異常気象と長期的な気候変動を明確に区別しているようで、地球温暖化は異常気象ではなく気候変動だという。広範囲で長期的な気候変動の一環としてさまざまな異常気象が繰り返されているうちに、その一部はいつしか異常扱いされなくなるのだろう。

このように考えてみると、何やら人間の加齢や老化にも通じるものがある。例えば僕が長年専門としてきた顔の「見た目」の老化。

顔のたるみ、シワ、シミ

顔のたるみやシワは、表面的な皮膚組織の老化だけでなく、専門用語でリガメント、あるいは靭帯と呼ばれるひも状の繊維組織の緩みや表情筋の緩み、皮下脂肪の量や分布状態の変化、さらには顔面骨の骨量減少など、文字通り複層的な老化現象が並行して徐々に進行する。シミの場合はシワやたるみよりも早く進行する場合が多いが、長期にわたり徐々に進行するという点ではシワやたるみと同様だ。

これらは短期的な、言うなれば「異常気象」的な変化ではなく、顔面の老化という長期的な「気候変動」。地球温暖化のような変化だ。

ただ、皮膚から顔面骨までの各層では、時として「異常気象」のような一時的な異状や損傷が発生することもある。

赤い日焼けと黒い日焼け

顔の表面で一時的に発生する異状や損傷の身近な例のひとつは日焼けだ。

日本語では肌が赤くなる日焼けも、黒というか褐色になる日焼けもまとめて「日焼け」と呼ぶことが多いが、赤い日焼けは基本的にヤケド。一時的とはいえ皮膚組織に炎症が生じて損傷を受けた状態だ。熱傷治療の専門家でもある僕としては、肌が真っ赤になるような日焼けはお勧めできない。

太陽光や紫外線の場合、燃え盛る炎や熱湯のような見るからに瞬時にヤケドをしそうな熱源ではないため、日焼けがヤケドの一種という認識はいまだに足りないように思える。ちなみに英語だと赤い日焼けは「サンバーン(sunburn)」。褐色の日焼けである「サンタン(suntan)」とは一般名称としても区別されるため、英語圏ではこの「ヤケドタイプの日焼け」は一般知識として浸透しやすい。

一方、日焼けで肌が褐色になるサンタンは皮膚のメラニン色素による色素沈着。サンバーンのような急性のダメージは少ないが、チリも積もれば山となるように皮膚の老化を進行させる。直射日光の下ではこの両方が同時進行して短期的に皮膚にダメージなどの影響を与えるため区別するのが難しい部分もあるが、いずれにしても日焼けは「異常気象」のような一時的な変化の代表格。ただ、一見元通りになったように見える皮膚の裏では老化を加速させるDNAレベルでの損傷も起きている。

さて、顔の皮膚の場合の「異常気象」が日焼けというのは思い浮かべやすい例。では、前述のリガメントや皮下脂肪に対する「異常気象」的な異状や損傷の例は...

異常気象とプチ整形と...

それは、腫瘍などの病変、外傷や打撲傷、美容外科手術、そして注入施術に代表されるプチ整形だろう。

一見すると手軽で安全に思えるプチ整形であっても、皮下への異物注入や皮膚の切開には多少なりとも必ずリスクを伴う。解剖学の知識が不十分な医師がプチ整形の施術を行う場合はなおのこと。プチ(petit)で始まった整形がグラン(grand)に発展するだけなら良いが、時には「プチ整形」が「グラン修復」を招くこともある。

顔面の老化という長期的な「気候変動」において敢えて人工的な「異常気象」を起こす場合、想定外の変動リスクを最小限に留めるために重要なのは、やはり入念な情報収集と慎重な判断だ。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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