「身の丈」気にせず、健康長寿で行こう!

「身の丈」気にせず、健康長寿で行こう!

食事・運動・精神・環境

先週、経産大臣が香典問題で辞任したと思ったら今週は法務大臣が妻の選挙違反疑惑で辞任。安倍再改造内閣は2ヶ月前の「過去最低のポンコツ内閣」という前評判に恥じないお粗末ぶりだ。

相次ぐ大臣辞任報道のお陰で、大学受験への英語民間試験導入を巡り萩生田文科大臣が放った「身の丈に合った」失言問題がかすむと思いきや、その後、来年度からの導入の延期が発表されたことで先の大臣辞任劇以上の騒ぎになっている。

いったいどれだけの受験生が迷惑や影響を被ることになるのだろうか。

教育機会の公平性と教育格差

萩生田大臣は失言の際、公費負担の制度内で生じる経済的・地理的な格差について問いただす記者に対して、「あいつ予備校通っていてズルいよな」という私費負担の例を引き合いに出した。仮にこれが私費負担の領域も含めた話だったとすれば、教育格差や不公平感が生じることもやむを得ない。

だが、記者の質問の趣旨は違った。それに対し、教育機会の公平性を念頭に回答すべき担当大臣が公費負担の制度と私費負担による格差の話を同列に論じたことには開いた口がふさがらない。僕が関わる医療分野に例えるなら、厚労大臣が自由診療においては当然のことながら生じるような医療格差を、公的な保険診療においても容認・助長するような話だ。

とはいえ、現実問題としては、今の日本社会ではさまざまな分野で世帯間格差だけでなく地域間格差や世代間格差が広がっている。

格差の悪循環

少し話が飛ぶが、僕がメスを置き、臨床現場は後任に任せて研究に専念するようになったのは60歳のとき。ちょうどバブル崩壊が本格的に進み始めた1992年のことだった。

当時の僕は毎日の手術から解放され、美容医療よりも創傷治癒や熱傷治療の研究に力を入れていた。当時は夢のまた夢でしかなかった人工培養皮膚や皮膚再生の研究はその後、四半世紀の間に世界中で飛躍的に発展し実現した。これは非外科的な治療法が次々と誕生し急速に進化した美容医療においても同様。そのほかの医学・医療分野においても、再生医療、ゲノム医療、画像診断、ロボット支援手術など、ITやAIの急速な発展にも助けられながらさまざまな新発見や目覚ましい技術革新が続いている。

それと並行して、医薬品業界はもちろん医療機器業界でも研究開発費は膨らみ続け、保険診療だけでなく自由診療まで含めると、治療の選択肢の幅とともに治療費の幅も格段に広がった。

一方、この四半世紀の間、日本経済は停滞し、明確な所得格差社会に変わりつつある。所得格差は教育格差や医療格差などさまざまな格差を生み、それがさらなる所得格差を生むような連鎖や悪循環が続いている。

国民皆保険制度の「枠内」における医療格差を最小限に留めることは制度設計や運用を行う国の責任だが、残念ながら国民皆保険制度自体が少なくともこれまでの「枠」、つまり水準を維持できない状況に陥っている。

教育は加点方式、健康は減点方式

萩生田大臣は「身の丈」発言に関する謝罪会見の際、「どのような環境下の受験生も自分の力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて適切な機会をとらえて、2回の試験を全力で頑張ってもらいたい思いで発言した」と釈明した。

受験と違い、人生は1回限り。だが幸いなことに人生は受験のような短期決戦ではなく、今や平均でも80余年、若い世代とっては100年になろうかという長丁場だ。

それだけでなく、教育の場合は大雑把に表現するなら「持ち点ゼロ」からスタートして知識や技術を身につけるという加点方式のプロセスだが、健康の場合、成長過程で「自動加点」されていくことがプログラムされている点も含めると、多くの人は誕生時に相応な「持ち点」が用意された状態でスタートする減点方式のプロセス。正確には減点だけでなく加点の可能性も多少あるプロセスだが、残念なことに、現代社会は不健康な食習慣や運動不足、喫煙など、持ち点を減らす要因や誘惑の方が圧倒的に多い。

1回限りの人生を健康で幸福なものにするための基本は、@健康的な食事、A適度な運動、B十分な睡眠を伴う安定した精神状態、そして、Cこれらを実行・実現しやすくなるような環境選びや環境づくり。これらはアンチエイジングの場合も同様だ。

今後、医療格差がさらに広がったとしても、医療が必要になる機会や度合いをある程度抑えることができるような健康を維持できれば、「身の丈に合わせる」ことを意識せず医療格差の影響を抑えることもできる。その健康維持のためにできる予防策の多くは、国の制度などによるものではなく我々一人ひとりの健康に関する意識と知識、そして健康維持に取り組む意思次第。

「身の丈」気にせず、健康長寿で行こう!

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

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