一部の薬用石けん、抗菌効果なく危険?米国で一部販売禁止の抗菌成分、うがい薬や歯磨き剤に含有

一部の薬用石けん、抗菌効果なく危険?米国で一部販売禁止の抗菌成分、うがい薬や歯磨き剤に含有

「Thinkstock」より

 9月2日、日本の厚生労働省に当たる米食品医薬品局(FDA)は、抗菌成分のトリクロサンとトリクロカルバンなど19種類の化学物質を含む石けんの販売を禁止する声明を発表しました。

 その理由は、それらの化学物質を含む石けんは、通常の石けんに比べて抗菌効果があるという科学的な根拠がなく、さらに長期にわたって使った場合の安全性も検証されていないというものでした。そのため、すでに米国の一部の企業では、こうした化学物質の使用を中止し始めています。
 
 では、日本はどうでしょうか。トリクロサンとトリクロカルバンは、ドラッグストアなどで売られているポピュラーな薬用石けんに配合されています。さらにトリクロサンは、うがい薬、歯磨き剤、ハンドソープ、食器用洗剤など多くの製品に使われています。

 しかし、トリクロサンは有機塩素化合物の一種であり、以前からその危険性が指摘されていたのです。ちなみに、有機塩素化合物は基本的に毒性物質であり、猛毒のダイオキシン、農薬のDDTやBHC、地下水汚染を起こしているトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどがよく知られています。

『有害物質小事典』(泉邦彦/研究社)によると、トリクロサンには次のような毒性があります。

・慢性一般毒性……ラットに対する亜慢性経口投与実験で、肝臓と腎臓に障害が認められた。ちなみに、最大無作用量は1日に体重1kg当たり0.05g。
・発生毒性……妊娠ラットに対する経口投与実験で、胎仔の骨化の遅れが観察されている。投与量が比較的多い場合には、死産や流産が増加する。
・アレルギー性……脱臭剤などによるヒトのアレルギー性接触皮膚炎の事例がかなり報告されている。
・変異原性……酵母に遺伝子変異をもたらすとともに、枯草菌のDNAを損傷する。
・環境汚染……マウスに対する経口投与または経皮投与の実験では、体内(肝臓、肺、血液、脂肪組織など)への吸収がかなり多く見られる。また、トリクロサンは、高温(600度)加熱または水溶液の日光照射によって、ダイオキシンを生成することが多い。

 この事典は2004年6月に発行されたものなので、かなり以前からトリクロサンの問題点が指摘されていたことになります。

●薬用石けんは必要ない

 日本の旧厚生省(現厚生労働省)もトリクロサンの危険性を認識していたようで、表示指定成分のひとつとして挙げています。表示指定成分は、アレルギーなどの肌トラブルを起こす可能性があるとして厚生省がリストアップした化学物質で、全部で103種類あります。それらが化粧品や医薬部外品に含まれていた場合、表示が義務付けられていました。01年に化粧品の全成分表示が義務付けられたため、この制度はなくなりましたが、表示指定成分として挙げられた化学物質が危険性の高いものであることに変わりはありません。
 
 一方、トリクロカルバンは主に薬用石けんに使われていますが、トリクロサンと同じく有機塩素化合物の一種であり、同様に表示指定成分のひとつとして挙げられています。したがって、皮膚アレルギーなどを起こす可能性があるということです。

 日本の場合、トリクロサンやトリクロカルバンを配合した薬用石けんは、今でもドラッグストアなどで売られています。しかし、米国の状況を見る限りでは、安易な使用は控えたほうがよさそうです。

 もともと薬用石けんは、それほど必要ないものなのです。なぜなら、手などに付いた細菌やウイルスは、水道水でよく洗えば落とすことができるからです。特にウイルスの場合、細胞に入り込むと生物として活動することができますが、細胞の外では無生物、すなわち単なるモノと同じなのです。つまり、手や皮膚の表面に付いたウイルスは、ごくごく微小な埃と同じようなものなのです。ですから、水道水でよく洗えば落とすことができるのです。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

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