「無料」音楽配信スポティファイ、音楽業界に巨額利益を還元…日本参入で音楽界激変か

「無料」音楽配信スポティファイ、音楽業界に巨額利益を還元…日本参入で音楽界激変か

「スポティファイ HP」より

 10月10日付本連載記事『「便利すぎる」世界最強の音楽配信サービス、日本で開始…確実に成功するモデルを解剖』で、スポティファイが日本市場で採用したインターネット音楽配信サービスのビジネスモデルの特徴として3つの点に言及した。

 その3つ目として、無料の料金プラン「Spotify Free」の提供を挙げたが、スポティファイは、この無料プランから有料プランである「Spotify Premium」にユーザーを誘導するために、いくつかの点で工夫を凝らしている。

 Spotify Premiumではデバイスを問わずオンデマンド再生が可能で、広告の表示は一切ない。さらに、オフライン再生にも対応し、320Kbpsの高速ビットレートの拡大により、さらなる高音質で音楽が楽しめる。これは、Spotify Freeがスマートフォン(スマホ)ではシャッフル再生に限定し、PCやタブレットでも一定の時間を超えるとオンデマンド再生からシャッフル再生に切り替わる方法を採用している点で、2つのサービス内容には大きな差異が見られる。このことから、無料プランを必要最低限のサービスに抑えることで、Spotify Freeに物足りなさを感じるユーザーを有料プランに誘導する狙いが読み取れる。

 こうした無料プランによる差別化が既存の競合企業に十分対抗できるものであるという自信は、経営者の言葉からも窺える。

 スポティファイのダニエル・エクCEO(最高経営責任者)は、日本市場の見通しについて、世界で2番目に大きい市場で重要な市場と前置きしたうえで、日本市場には既存の競合企業が存在するが、それがスポティファイ展開の妨げになるのではとの質問に対して、次のように答えている。

「そうは考えない。私たちは米国でもドイツでも最初のストリーミングサービスではなかった。長年にわたる競合で良い点、悪い点を学んできたので、無料プランなどで違う提案ができるようになっている」

 AWAなどの一部を除く競合企業は無料の料金プランを断念し、有料プランのみでサービス提供する代わりに、無料でのお試しサービス期間を用意した。だが、ユーザーの多くは無料期間が過ぎると解約してしまうため、いかに継続させるかが大きな課題となった。

 その点、スポティファイは無料プランを受け皿にして、「無料プランの継続」と「有料プランへの移行」という2つの選択肢をユーザーに用意した。これにより、ユーザーはスポティファイから離れることなく、ストリーミングサービスを使い続けることができる。スポティファイ側にしても、ユーザーからの定額収入に加え、無料プランで配信される広告からも収入が得られることから、継続して無料プランの提供も可能となる。

●3つのミッション

 スポティファイは日本市場でできることが3つあると豪語する。すなわち、「日本のアーティストとSpotifyユーザー1億人を結びつけること」「新しい音楽、アーティストを発見できる場を提供すること」「アーティストや音楽レーベルにとって、新たな収益源を確立できること」である。

 これら3つのミッションは、すでに多くの海外市場で達成されつつある。特に3つ目のミッションでは、アーティストや音楽レーベルの間で、CDに代わる新しい収益源として、スポティファイのビジネスモデルが認知されつつある。なぜなら、スポティファイは世界ですでに音楽業界に50億ドルを還元し、デジタル配信はレコード産業の収益の45%に上昇しているからだ。

 特にドイツでは、CDの売り上げが1998年以降減少していたが、2012年のスポティファイ参入で、4年連続で上昇している。現在では、ドイツレーベルの売り上げへの貢献度は10%に達し、ストリーミングはダウンロードの2倍にまで成長している。

 今後日本市場でも、これらの3つのミッションが達成されれば、スポティファイはストリーミング配信市場で確固たる地位を築くことができよう。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)

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