自転車事故で賠償金9千万円も…急増する自転車保険は不要!加入済保険と重複も

自転車事故で賠償金9千万円も…急増する自転車保険は不要!加入済保険と重複も

「Thinkstock」より

 この数年で契約数が増えた保険といえば、真っ先に挙げられるのは「自転車保険」である。2008年に東京地方裁判所、13年に神戸地方裁判所で自転車事故の加害者側に9,000万円を超える賠償を命じる判決があったことなどから、自転車事故での賠償責任に対する補償の必要性がさまざまなメディアで報じられ、自転車保険に注目が集まった結果である。

 兵庫県では、この08年の事故も大きなきっかけとなり、「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が制定され、15年10月からは兵庫県内で自転車を利用する場合、自転車損害賠償保険等(自転車の利用に係る事故により生じた他人の生命又は身体の損害を填補することができる保険又は共済)への加入が義務化された。16年7月から大阪府、16年10月から滋賀県でも同様に義務化されるなど、こうした動きは広がりを見せている。

●自転車保険の補償内容は、他の保険と重複する部分が多い

 それでは、あなたもさまざまな保険会社が発売している自転車保険を比較・検討して加入すべきなのかというと、加入はお勧めしないというのが私の結論だ。

 一般に販売されている自転車保険の主な補償内容は、「事故の相手への補償」と「自分のケガの補償」の大きく2つに分けることができる。前者は個人賠償責任保険(または特約)と呼ばれ、日常生活に起因する偶然な事故により、他人の身体を害したり物を壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合の補償である。この補償だけあれば、条例で義務化された自転車損害賠償保険等として必要な補償内容を満たしており、後者の自分のケガの補償は必須ではない。

 自分がケガにより入院した、後遺障害が生じた、死亡した場合などは、医療保険や傷害保険、あるいは終身保険や定期保険など各種死亡保障の保険などでカバーされるため、すでに保険に加入している人であれば、自転車保険に加入すると補償内容が重複する可能性が高い。つまり、自転車保険に加入するのではなく、個人賠償責任保険に加入することを考えるほうが合理的なのである。

●個人賠償責任保険は、さまざまな保険に付帯できる

 個人賠償責任保険は、単体の保険としてはほぼ販売されておらず、一部のクレジットカード会員の専用商品として販売されているものがある程度だ。しかし、同保険は自転車事故だけでなく日常生活に起因する事故を広くカバーするため、さまざまな保険に特約として用意されていることが多い。

 たとえば、火災保険や自動車保険、傷害保険には特約として付帯できる保険会社が多く、特約料も年1,000〜2,000円程度と安い。また、加入した本人だけでなく、通常は生計維持者が加入すれば家族全員が補償の対象となり、個々に加入する必要はない。

 実は兵庫県が作成している「自転車保険加入義務化に関するチラシ」でも、保険の例として挙げているのは次のものである。

「自動車保険、火災保険、傷害保険等に付帯する個人賠償責任保険、共済、ひょうごのけんみん自転車保険、TSマーク付帯保険等」
 
●自転車保険を考える前にやるべきこと

 保険料が少額なためか、個人賠償責任保険は加入しているのにそれを把握していない人も多い。「自転車保険の加入義務化」という言葉がひとり歩きすることにより、補償の重複が大量発生することを私は懸念している。

 自転車保険を考える前に、まずは自分が加入している各種の損害保険の保険証券を見て個人賠償責任特約が付帯されていないかを確認するべきである。同特約は保険会社により、日常生活賠償特約、日常事故賠償責任補償特約などと名称が異なることがあるため、注意が必要だ。付帯されていない場合は、これらの保険に同特約をつけることができるかを保険会社に確認しよう。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

関連記事(外部サイト)