『ドクターX』、放送事故レベルの現実離れだらけで批判殺到…「医師をバカにしている」

『ドクターX』、放送事故レベルの現実離れだらけで批判殺到…「医師をバカにしている」

米倉涼子

 今クール(10〜12月期)の連続テレビドラマ『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)の第1話が10月13日に放送され、平均視聴率20.4%(ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)をマークし好発進となった。シリーズ第4作となる同ドラマは、過去のシリーズもすべて高視聴率を記録している、『相棒』と並ぶテレ朝の看板ドラマだが、そこで描かれる一般社会の常識とはかけ離れた“医師の世界”もまた、多くの視聴者を引きつける魅力のひとつとなっている。

 まず気になるのは、主人公・大門未知子(米倉涼子)のような特定の病院に属さないフリーランスの外科医の金銭事情である。第1話内では、大門に1回の手術の報酬として1000万円が支払われるが、やはりフリーの外科医が受け取る報酬は高額なのだろうか。

「1000万円というのは、基本的にはあり得ません。日本は基本的に国民皆保険であり、手術の値段は『誰が・どこで・誰を』手術しても同じなので、保険診療をしている以上、金額は決まっています。たとえば、がんは入院治療費すべて込みで約100〜500万円なので、そこから1000万円を一人の医師に払うことは起こり得ません。

 しかし、患者が『これだけのお金を払うから、●先生を呼んで手術をしてくれ』と頼めばあり得ます。また、自由診療の病院であれば保険外ですので、『●先生に1000万円払って、そして病院にも1000万円払います』という契約を外国人富裕層などがすれば、あり得ます。ちなみに米国では、売れっ子の心臓外科医や脳外科医などの一部が、年俸1億円を超えたことで話題になっています。しかし、あくまで年俸であり、1回の手術で1000万円の報酬はあり得ないと思います」(現役医師・A氏)

 このほかにも、同ドラマの内容をめぐっては、現場の医師から多くの疑問の声も聞かれる。そこで今回は第1話内の具体的なシーンについて、現役医師たちに感想を聞いてみた。

●絶対にあり得ない話

 まず、ドラマ冒頭、米国ニューヨークで大門が街中で偶然、激しい腹痛に見舞われた妊婦と遭遇し、大門がそのまま近くの病院へ患者を運び、自身で緊急手術をするシーンが流れる。このように、医師が突然、まったく見知らぬ病院で緊急手術するような可能性はあるのだろうか。

「日本人の医師が日本で取得した医師免許を持っているだけでは、米国内で医療行為を行うことはできません。たとえ大門が米国の医師免許を持っていたとしても、雇用契約のない病院で医療行為を行うことは、平時ではあり得ません。ちなみに日本の法律では、外科手技は傷害罪の構成要件(罪となる最初の段階)は満たしますが、医師であるということで違法性が阻却されます。つまり大門が医師免許を持っていなければ、手術を行った病院の責任になってしまいます。また、患者が大門を知っていて『大門に、ぜひ手術をお願いしたい』となれば、そこで診療契約が成立したとも考えられますが、病院側が了解しないでしょう」(現役医師・B氏)

 その冒頭のシーンで大門は、腹部の「開腹胆嚢(たんのう)摘出術」を行い、後半では別の患者の頭蓋骨の脊髄や脳幹にできた腫瘍の摘出(「経鼻・経口内視鏡による腫瘍摘出」)を行うが、同一の医師がまったく部位や種別が異なる手術を行うことはあり得るのだろうか。

「かつては、たとえば開頭術、肺の手術、消化器の手術をどれも行う医師などが実際に存在しました。しかし、専門医制度が普及し専門分化が進む一方の今の医療では、絶対にあり得ない話です」(同)

 そして同ドラマでよくみられるのが、大門が病院上層部の許可なく突然に手術を行い、成功させるシーンである。本シリーズの第1話でも、“スーパードクター”北野亨(滝藤賢一)が手術開始直前に患者の症状が変化したことを理由に延期を決断したが、手術室に突然に大門が現れて、院長や外科部長の反対を無視して手術を決行するシーンがみられる。こうした大門の行為が、実際に許される可能性はあるのだろうか。

「訴訟につながりかねたいため、これはあり得ません。手術は患者との契約に基づき行われるので、患者が『大門に手術をお願いします』という契約をすれば、院長や外科部長の許可なく手術を決行しても、罪には問われないかもしれませんが、そもそも看護師が手伝わないでので、現実的には手術はできないでしょう」(A氏)

 以上みてきた現場の医師たちが指摘する同ドラマの“現実離れ”について、前出・B氏は「全体的に、医師をバカにしているという印象を受けます。同ドラマにより、医師や医療への誤解が広まってしまわないかが心配です」との懸念を口にする。また、テレビ局関係者は「これはもう放送事故レベルでしょう」と感想を漏らすが、こうした声をよそに、早くも本シリーズも“大ヒット”の予感がただよっている。
(文=編集部)

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