『ちびまる子ちゃん』、えげつなく不条理な神回…女性の容姿=貧富の格差という現実

『ちびまる子ちゃん』、えげつなく不条理な神回…女性の容姿=貧富の格差という現実

『ちびまる子ちゃん全集 1990−1992 DVD−BOX』

 フジテレビ系の人気長寿アニメ番組『ちびまる子ちゃん』。今年で放送開始から26周年。長きにわたって放送されている作品ゆえ、「昔はまる子より年下だったのに、今やはるかに年上」という人も多い。

 さて、小中学生を過ぎたあたりから、気恥ずかしさやマンネリ化の影響により見なくなったという人もいるかもしれないが、『ちびまる子ちゃん』という作品は、大人が視聴しても味わい深いアニメである。

 原作者・さくらももこが描くキャラクターは、かわいらしく親しみやすい。なのに、展開されるストーリーは時にリアルで生々しくシニカルだ。公立小学校を舞台にしているため、貧富の差まで描かれている。そんなキャラと内容のギャップによって、世の中の不条理が鮮明なカタチで提示されており、まる子よりもまる子の父や母と近い年齢になった私たちの心を揺さぶるのだ。

●クラスイチのお金持ち・花輪クンの家に遊びに行く話にて

 そんな不条理な話のひとつに、「花輪邸ついに公開」の回がある。これは、クラスイチのお金持ち「花輪クン」の家にまる子たちが遊びに行く話なのだが、花輪クンの家がとにかくすごい。広大な庭には一般の戸建て住宅ほどの物置を持ち、肝心の邸宅は宮殿のような豪奢な佇まい。中に入ると、何人もの使用人が出迎えてくれ、はるか頭上にはシャンデリアがいくつも輝いている。案内されたパーティールームは、一流ホテルのそれと見紛うようなラグジュアリー感だ。

 そんな豪華絢爛な邸宅の中で、一際まばゆい輝きを放つのが花輪クンのママだ。女優のような美しさを持つ彼女が花輪クンを生んだのは20歳のときであり、現在まだ29歳だとのこと。お手製のチーズケーキと、ピアノの演奏によって、まる子たちを歓待するのである。

●自分の母と比べて、格差を感じるまる子たち

 ここでまる子たちは思うのだ。「うちのお母さんとはまるで違う」と。幼少期、イチ視聴者としてわからなかったこの不条理も、今は説明がつく。花輪クンのお母さんが若くて美しい理由は単純で、裕福な男に見初められたからだ。「美しさ・若さ」という資産を、花輪クンのパパが持つ金銭的な資産と等価交換したにほかならない。女子アナやモデルが会社社長と結婚することはあっても、年収300万円の一般社員とはなかなか結ばれないのと同じ理屈だ。

●「なぜあなたは美しくないのですか?」

 さらに切ないのがその後。夢のようなひとときを過ごし、自宅に帰ったまる子たちには現実が待っている。とりわけその落差を気に病んだのが、学級委員の丸尾クン。夕飯の支度ができたと呼びかけに来た実母に「かあさま、なぜあなたは美しくないのですか?」と問いかけ、さらに「もっと綺麗で若いママが欲しいでしょう〜〜」といって泣くのである。

 丸尾クンのお母さんは49歳。そして美しくない。つまり、40歳のときにようやく子を生んだ彼女は婚期を逃した「売れ残り」だったと考えるのが妥当である。「年老いたかあさまを許してェェ」といって息子と泣きじゃくる姿は、なんともやるせない。

 併せて描かれている、一緒に花輪邸に行った同級生・はまじとブー太郎のお母さんも綺麗ではないし、住んでいる家もボロい。女性の若さ・美しさが貧富の差を生む。そんな摂理が明確に示されていて、今見てもなんだかグッとくる。もっとも、作者のさくらももこは『ちびまる子ちゃん』の大ヒットにより、莫大な資産を築き上げ、2度も結婚をしている成功者。「花輪邸」の話が事実かどうかは定かではないが、自身が過去に経験した不条理に奮起し、美以外の価値を世に問おうとした努力家なのかもしれない。
(文=小島浩平/ロックスター)

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