激安のNetflixなどにユーザー流出のスカパー!の苦悩…Jリーグ放映失い苦境?

スカパー!加入者の減少傾向が続く 要因にYouTubeやHulu、Netflixへのユーザー流出

記事まとめ

  • スカパー!加入者の減少傾向が続いており、理由にYouTubeへのユーザー流出がある
  • さらに、HuluやNetflixの有料動画配信サービスと競合して加入者が削られている
  • スカパーが来季のJリーグ中継から撤退することによって、さらに加入者が減るという

激安のNetflixなどにユーザー流出のスカパー!の苦悩…Jリーグ放映失い苦境?

激安のNetflixなどにユーザー流出のスカパー!の苦悩…Jリーグ放映失い苦境?

スカパー!のHPより

 長年にわたってデジタル衛星放送「スカパー!」の視聴者を楽しませてきたサッカー・Jリーグの中継だが、2017年からは見ることができなくなるようだ。Jリーグとの放映権契約を他社に奪われたのだ。

 スカパー!に代わって10年間の放送権契約を結んだのは、イギリスの動画配信企業であるパフォームグループだ。日本では月額1750円で「DAZN(ダ・ゾーン)」という有料動画配信サービスを提供している。

 パフォームがJリーグと合意した10年契約の放映権総額は、約2100億円だったという。スカパー!も当然応札したのだが、スカパー!が想定した入札価格は一桁低かったという。そこでスカパー!はパフォームからJリーグ中継の権利をサブリースする交渉も行ったが、それも合意には至らず、結局、来季のJリーグ中継から撤退することを発表したのである。

 さて、スカパー!からJリーグが消える影響は、どこにどう出るのだろうか? 順番に状況を整理していきたい。

●加入者減少

 当然ながらJリーグ中継ができなくなる最初の影響は、スカパー!加入者減少というかたちで表れるだろう。

 スカパー!加入者は2012年に383万件があったところから減少傾向を続け、現在では330万件台にまで落ち込みつつある。その最大の理由は、インターネット動画配信サービスの台頭にある。当初は無料動画配信サイト「YouTube」にユーザーが流れたというのがまず最初に起きたことで、ここまでは地上波と変わらない普通の社会現象の一部だった。

 ところがここにきて、さらにスカパー!の土台を脅かす競合が登場する。それが月額定額制の有料動画配信サービスの登場だ。Huluやアメリカから上陸したNetflixといった豊富な番組コンテンツを持つ動画配信サービスが、月額1000円前後でのサービス提供を開始したのである。

 これらの有料動画配信サービスは、映画を見たいとか、アメリカのドラマを見たいとか、音楽アーティストのライブを見たいといったスカパー!と同じニーズを満たすことができる。ちょうど消費者はテレビのような大画面ではなくスマートフォン(スマホ)で動画を見るのが日常的になってきたこともあって、画面が小さいことは問題ではなくなった。

 もっとも最近のテレビは、インターネットにつなげばスカパー!同様にこれら動画配信サービスも大画面で見ることができるのだが、視聴者の多くはリビングではなくスマホでこれらの動画配信を楽しんでいるらしい。

 その価格帯が1000円前後というのは画期的だ。なにしろスカパーの場合、47チャンネル見放題の「新基本パック」の視聴料が月額3672円いう水準だ。地上波では満足できない多チャンネル志向の視聴者にとっては、スカパー!から動画配信に契約を切り替えることで番組視聴の費用が一気に3分の1から4分の1レベルに減ることになる。

 こうして新規に登場した有料動画配信サービスに、少しずつスカパー!加入者が削りとられていくという現象が起きているわけだ。

●決断を迫られる時期

 そんなスカパー!にとって、Jリーグはある意味で最重要のコンテンツだった。なにしろサッカーのファンの数は絶大だ。とはいっても、その多くは不定期に行われるサッカー日本代表の試合を地上波で見るだけという視聴者層である。スカパー!に加入するほどのサッカーファンというと、ファンの中でもコアな層で、端的にいえば地元のJリーグチームのサポーター層ということになる。

 そのようなコアなファンの人数は、実は多い。JリーグはJ1からJ3まで全国津々浦々に56のクラブチームがあり、それぞれのチームには数万人単位でサポーターがいる。そしてクラブ数は今後も増えていく予定にある。各チームが1万人のスカパー!加入者を連れてくるとすれば計算上はJリーグには50万人の加入者を獲得できるパワーがある。

 だから来年のスカパー!は、それだけ大変になる。50万人が離れるとしたら、いよいよ加入者が300万件の大台を割り込む危険性を帯びてきたわけだ。

 そもそも衛星を使って映像コンテンツを配信するというビジネスモデル自体が、時代に合わなくなってきた感は強い。衛星というインフラコストがかかる分、同じコンテンツ配信企業でもインターネットという、インフラを自分で維持しなくてもいい有料動画配信サービスとはコスト競争で勝てないのだ。

 こうして長い目で見れば、スカパー!自体も衛星インフラの上では成立できず、どこかの段階でインターネットにインフラを移す決断を迫られる時期がくるだろう。

●加入者減少の影響は限定的?

 ただ、今回のJリーグの終了という事件だけについていえば、スカパー!の加入者減少の影響は限定的でもある。その理由はこういうことだ。

 テレビの地上波というのは、雑誌でいえば「週刊文春」(文藝春秋)や「SPA!」(扶桑社)、「週刊現代」(講談社)のような総合誌である。それに対してスカパー!は47チャンネルあるといっても、加入者はそのうちの一部の偏ったチャンネルしか見ない。釣りが好きな人は釣りビジョンを、歴史が好きな人はヒストリーチャンネルを、音楽が好きな人は音楽のチャンネルをというかたちで、雑誌でいえば専門誌の読者のような視聴者が集まって330万人の加入者として積みあがっている。

 だからJリーグがスカパー!から消えても、それでDAZNに以降する加入者はせいぜい50万人くらいにとどまるだろう。逆にそれ以外の一般加入者がJリーグというコンテンツがあるからという理由で、DAZNに契約変更をするという流れは起きないだろう。

 スカパー!から見れば「新基本パック」の加入者数はそれほど減らず、Jリーグファンが加入していた「JリーグMAX」(月額2962円、今回の事情から2017年1月末に提供終了)というパックセットの加入者がDAZN(月額1750円)に流れるという現象が起きるだけだろう。

 その意味では、DAZNが「Jリーグというコンテンツを得たことで、HuluやNetflixよりもたくさんの加入者を日本市場で得られるのではないか?」と期待していたとすれば、それは期待外れに終わるかもしれない。結局のところDAZNにはコアなサッカーファン50万人が押し寄せて、それで終わりということになりかねない。

 Jリーグを放映して得られる新規加入者が50万人だとすると、年間収入は、パフォームにとって年間で100億円程度にしかならない。ほかに波及しないのであれば、そのような権利に10年間で2100億円を支払うということは割に合わないことになる。

 2100億円はパフォームにとっては日本市場に参入するための勝負をかけた長期投資ということになるのだが、採算に厳しい海外企業の場合、期待したほどの加入者が集まらない場合は早々に日本市場から撤退するという判断もありうる。

 そうなったら最後に割を食うのはJリーグかもしれない。コアなユーザーが楽しんでサッカーを見るスカパー!というインフラを失い、その結果、未来のファン数の広がりという可能性を失ってしまうかもしれないのだ。

 やはりスカパー!が提示した通り、Jリーグの適正な10年間の放映権料は一桁小さいのではないか? 今回の決定がサッカー界にマイナスの影響を及ぼさなければいいと、私は一ファンとして思うのだが、みなさんはいかがだろう?
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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