Ustream消滅の今、理由の徹底検証からライブ配信乱立時代の生き残り策を考察

Ustream消滅の今、理由の徹底検証からライブ配信乱立時代の生き残り策を考察

日本法人Ustream Asiaから米国法人Ustreamへの運営移管発表後の「Ustream大賞2015」でスピーチをする、代表取締役社長を務めた中川具隆氏(2016年1月)

 ネットライブ配信の先駆けとなった「Ustream(ユーストリーム)」ブランドが消滅する。なぜUstreamは勝てなかったのか、ネットライブ配信の専門家・ノダタケオ氏に寄稿をお願いした(ITジャーナリスト・三上洋)。

 5日、Twitterの「日本のトレンド」に「Ustream」というキーワードが約8時間にわたり登場し続けました。2016年1月に米国法人Ustreamが買収され、IBMの傘下へ移ったのちもブランド名として継続展開されていたライブ配信の代名詞Ustreamが、「IBM Cloud Video」へ統合されるというトピックに、インターネット上で大きな反応が示されたことからでした。

 現在のサービスは「一般向け大規模配信」「クラウドでのBtoB配信」「CDNとしての利用」として継承されますが、Ustreamブランドは消滅。ウェブサイト「Ustream.tv」上の表記も順次変更されるとみられます。

 Ustreamは07年に生まれたインターネット上の生放送(ライブ配信)のサービス。09年末にソフトバンクが出資を決め、10年にアジア圏の展開を目指す日本法人Ustream Asiaがスタートしました。

●ライブ配信サービスにおける「賑わい」をつくるために

 今後のライブ配信サービスが生き残り、ビジネスとして成功するためのカギは「賑わい」をつくること。そして、そのための「ライブ配信サービスへ求める3要件」は

(1)たくさんの人に視聴してもらえるサービスであること
(2)ライブ配信しやすい(利便性のある)サービスであること
(3)配信者(クリエーター)がマネタイズできること

です。では、そのためにライブ配信サービスはどのようなことが具体的に必要になるでしょうか。

(1)視聴者が視聴しやすい環境の構築(たくさんの人に視聴してもらうために)

・大量の視聴者が来てもサービス品質が落ちないインフラ
・パソコンでもスマホでも手軽に視聴ができる
・通信環境によって画質が自動で切り替わる、かつ、視聴者自身でも画質を手動で選択できることによるストレスを感じないスムーズさ

(2)配信(コンテンツ)が探しやすく見つけやすい環境の構築(たくさんの人に視聴してもらうために)

・ウェブサイトやアプリの導線や検索機能整備
・オウンドメディアでキュレーション
・ソーシャルメディアでピックアップ=宣伝
・配信通知をする仕組みを用意

(3)配信者と視聴者、視聴者同士のコミュニケーション促進するための環境の構築(たくさんの人に視聴してもらうために)

・チャット機能の充実
・ソーシャルメディアとの連携強化
・コミュニティー機能の充実

(4)ライブ配信しやすい(利便性のある)環境の構築

・高画質高音質で配信できる
・パソコンでもスマホでも気軽に配信できる
・多様なコンテンツ(ジャンル)が生まれやすい

(5)配信者がマネタイズできる環境の構築

・広告だけでなく課金モデルもあり、お金を払う人が納得してお金を払うことができるサービスそのものの維持をするためのモデル
・サービスが無理をすることのない適切で健全な配信者への還元のカタチ

(6)「新しいユーザーを惹きつける多種多様なコンテンツを用意する」

・配信者(クリエーター)の育成と応援(支援)
・場合によってはにライセンス料を支払うことによって実現するアニメやドラマなどの「既存コンテンツ」の配信や、サービスが独自の「自主制作番組コンテンツ」を制作することも手段のひとつ

●他のライブ配信サービスの現状の取り組み&方向性

(1)ニコニコ生放送

 ドワンゴが運営する「ニコニコ生放送」は、2010年から15年までの黎明期をつくったUstreamの最大のライバルでした。前半(10〜12年)はUstreamが先行したものの、後半(13〜15年)はUstreamを追い抜き追い越し、生き残りを果たしますが、今度は後発のライブ配信サービスに追いかけられ追い越されそうな苦戦を強いられています。

 これまでのサービス文化・歴史もあり、ニコ生は「パソコンで視聴することが主体」の運営が続いてきました。それによって、スマートフォン(スマホ)1台で手軽に視聴ができ、気軽に配信ができる「スマホファースト」な時代の流れに一歩後れをとりました。16年に入り、スマホを意識した施策に注力していることは伺えるのですが、いかにその遅れを取り戻すかがキーポイントとなりそうです。

(2)ツイキャス

 モイが運営する「ツイキャス」はUstreamとニコ生と共に黎明期を生き抜いたサービスですが、これら2つのサービスと異なったのは、10年のサービス開始時から一貫して「スマホ1台で手軽に視聴ができ、気軽に配信ができる」ことに注力されてきました。その結果、15年までスマホでのライブ配信はツイキャスほぼ一択で、特に若い世代のユーザー層を集めてきました。

 16年に入り、スマホでのライブ配信サービスが激増。後発のライブ配信サービスに著名で人気だった配信者を奪われている印象を受けます。その要因のひとつに、本連載前回記事で挙げた「契約を結び、インセンティブを払うことによる配信者の取り合い」があります。スマホでのライブ配信サービスの絶対王者、ツイキャスの具体的な巻き返しは正直まだ見えていません。その方向性は今後注視する必要がありそうです。

(3)FRESH!(FRESH! by CyberAgent)

 サイバーエージェントが運営する「FRESH!」は、Ustreamに足りなかったところをうまく補完するかたちで16年から始まった後発のサービスのひとつです。サービス開始当初はテレビ朝日との出資で生まれた「AbemaTV」との連携がありましたが、サービス名称が「FRESH!(FRESH! by CyberAgent)」へと変わり、現在はAbemaTVの運営とは切り離されています。

 AbemaTVは「17年3月時点でダウンロード数が1500万を突破」(プレスリリースより)し、無料で楽しめるインターネットテレビ局としての賑わいがありますが、一方、FRESH!はライブ配信サービスとしての賑わいが足りない印象を受けます。アニメやドラマなどの「既存コンテンツ」の配信や「自主制作番組コンテンツ」を作り出すことでAbemaTVのユーザーをFRESH!へ流すことがなくなったいま、その後の展開は不透明であると感じます。

(4)LINE LIVE

 LINEはいわずと知れた今では最大の「コミュニケーションアプリ」です。幅広い世代から多くのユーザー数を持つLINEは、「LINE LIVE」というライブ配信サービスを15年につくりました。LINEがもつ圧倒的なユーザー数を基に、特に若い世代のユーザーに広がっています。

 ただ、これまでLINE LIVEは、TwitterやFacebookと異なり「クローズドなソーシャルメディア」であるLINEのアカウントが基本であったことから、ライブ配信をきっかけにつながった人とのコミュニケーション形成が難しいものでした。ところが、先日、LINE LIVEはLINEアカウントを必要とせず、ソーシャルメディア「Twitter」のアカウントでの利用が可能になりました。今後のLINE LIVEは、Twitterとの連携によるコミュニケーションの新しい広がりに期待が持てそうです。

(5)Twitter(Periscope)&Facebook Live

 TwitterやFacebookはソーシャル・ネットワーキング・サービスの特徴のひとつとして、「Periscope」「Facebook Live」というライブ機能を提供し始めました。これによって「ライブ配信」という仕組みが、より一般の人にも認知されるきっかけになっていると感じます。

 ただ、これまでのライブ配信サービスはTwitterやFacebookとの密接な関係性によって発展をしてきました。これが、TwitterやFacebookがライブ機能を提供し始めたことによって、TwitterやFacebookから追い出されるかたちにつながりかねません。この動きは他のライブ配信サービスに影響を与えるのか、与えないのかを見守る必要があります。

(6)YouTube Live

 動画共有サービス「YouTube」は撮影・編集した動画コンテンツをアップロードできる場所としてだけでなく、ライブ配信機能「YouTube Live」も提供しています。YouTube Liveの最大の利点は、絶対的な知名度がありユーザー数も多い動画共有サービス「YouTube」のコンテンツとして(ライブ配信終了後にファイルをアップロードすることなく)チャンネルへ保持できること。

 現在ではスマホによるライブ配信も一部のYouTubeクリエーターに対してのみ機能提供をしているところですが、将来的にはすべてのクリエーターに広がるでしょう。すべてのクリエーターが利用可能になると、これまでのライブ配信サービスの勢力図が変わる可能性も。それは、いかに早い段階ですべてのクリエーターが利用可能となるかにかかっていそうです。

●なぜUstreamが消滅することになったのかを改めて考える必要性

 一時代をつくったUstreamは、黎明期前半の10年から12年はライブ配信サービスの代表格でした。しかし、その後はニコ生やツイキャスに追い抜かれ、最終的には「Ustream」というブランド名も消えることになります。

 スマホファースト時代に乗り遅れたことや、サービスとして存続するためのマネタイズができなかったことなど、多くのことがこれまで指摘されていますが、ひとえに、そのサービスの賑わいをつくっていた配信者と視聴者双方の声をピックアップして、それを反映し、変化していくことができなかったということ。それが、先の「ライブ配信サービスへ求められる3要件」を満たすことができなくなり、「賑わい」をなくすことにつながっています。

 ライブ配信サービス全盛期を目前にUstreamがなぜ日本から撤退し、ブランドが消滅することになったか? 今存在する黎明期からのサービスだけでなく、全盛期から始まったサービスも改めて見直す必要があるのではないでしょうか。
(文=三上洋/ITジャーナリスト、ノダタケオ/ライブメディアクリエイター)

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