『人は見た目が100パーセント』、なぜ桐谷美玲酷評でブルゾン絶賛?ミスキャストだったのか?

『人は見た目が100パーセント』、なぜ桐谷美玲酷評でブルゾン絶賛?ミスキャストだったのか?

桐谷美玲

 4月のスタート当初から低視聴率が続く『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系、以下『人パー』)。

 インターネット上で目立つのは、「桐谷美玲がオシャレ音痴の女子モドキ?」「あの顔でモテないなんてあり得ない」などの桐谷に関するバッシング。一方、ブレイク中の女芸人・ブルゾンちえみには、「演技がうますぎる」「初めてなのにスゴイ」などの絶賛が集まっている。

 桐谷には「細すぎて怖い」、ブルゾンには「ぽっちゃりでかわいい」という対極の声が飛び交うなど、そのコントラストは異様なほどだが、なぜこんな現象が起きているのか? 実際、2人の演技はどうなのか? ミスキャストだったのか? さまざまな角度から掘り下げていく。

●実は世代トップのコメディエンヌである桐谷美玲

 桐谷にバッシングが集まる最大の理由は、「本人は美人でオシャレだから、この役は合わない」というものだろう。確かに桐谷は、アメリカの映画サイト「TC Candler」が選ぶ「世界で最も美しい顔100人」に5度ランクインしたほか、昨年末にも雑誌「VoCE」(講談社)の「2016年最も美しい顔」に選出された“日本代表クラスの美人”だ。

 長年、「Seventeen」「non-no」(ともに集英社)の専属モデルを務めた過去もあるだけに、「エッ?」と思ってしまうのも仕方がない。しかし、『人パー』の桐谷は、地味な服とヘアメイクに加え、白目をむき、鼻血を出し、床をはいつくばるなど、美人という本人のキャラクターを消した演技を続けている。見る人が桐谷美玲のイメージをいったん忘れることさえできれば、彼女は立派なコメディエンヌなのだ。

 痛かったのは、『人パー』がスタートする前から「あり得ない」のネガティブキャンペーンが始まっていたこと。一度も見ていないにもかかわらず、イメージだけで「あり得ない」というムードが広がり、近年続くフジテレビへのバッシングも悪いほうに作用してしまった。スタート前のネガティブキャンペーンは、“もともとドラマにあまり熱心ではない人々の印象操作”といえるかもしれない。

 そんな先入観を持たずに『人パー』を見ている人は、「美人女優の桐谷美玲」ではなく、「失敗続きながらも、けなげにがんばるヒロイン・城之内純」を見ている。クチコミサイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では、もどかしくもほほえましい「純の恋を応援している」という声も多い。

 現在27歳の桐谷は、同世代の若手女優と比べてもコメディ作への出演が多く、その適性はトップクラスにある。桐谷以上に『人パー』のヒロインを演じられそうな20代女優がいるか? といえば、あまりいないというのが現実だ。

 実際、某局のドラマプロデューサーが「20代女優で桐谷さん以上のコメディエンヌはいない。思い切りがよく、自分を崩すことに迷いがないから、いろいろな演出を仕掛けられる」と言っていた。

●桐谷美玲とブルゾンちえみの比較は的外れ

 一方、絶賛の声を集めるブルゾンちえみはどうなのか。

 ドラマ初出演とは思えない堂々とした演技は非凡で、絶賛の声に異論をはさむ必要はないだろう。しかし、あくまで「初出演にしては」という前提がつき、「共演女優たちより演技がうまい」というわけではない。

 特に序盤は、前髪パッツン+下がり太眉の外見に加え、コントそのままの発声や仕草が多く、良い意味でも悪い意味でも目立ちすぎていた。いわゆる“3人娘”のドラマは、1人が目立ち過ぎると一体感が薄れ、全体のテーマがボヤけがちになってしまう。前期に放送された『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)を見ればわかるように、「外見や性格は違っても、言動のトーンは合わせる」というのがセオリーだ。

 序盤はブルゾンちえみのユニークな外見と強めの発声が目立ち、「それに比べて桐谷は美人が抜けず、声も出ていない……」と理不尽な比較を受けていた点は否めない。桐谷は脚本通りの陰気な女性を演じ、ブルゾンちえみはコントを下敷きにした演技をしていただけだ。そもそも、役の難易度は主演である桐谷のほうがはるかに高く、比べるのもおかしな話といえる。

 また、ブルゾンちえみ演じる佐藤聖良が、“オイシイ役”であることも彼女に味方している。“3人娘の3人目”は自由度が高く、オチになるシーンも多いため、多くの女優たちが演じたがるポジション。一部の主演女優を除けば、大半の女優が3番手ポジションからの飛躍を狙っているし、特にドラマへのレギュラー出演を願う舞台女優たちは「なんで女芸人が……」と悔しい思いをしている。

「知名度の低い女優より、話題性のある女芸人を使いたい」という制作サイドのキャスティングは間違っていないが、だからといってチャンスに恵まれない女優たちが演技で劣っているわけでもない。彼女たちにまったく非はないが、女芸人の演技評価が高まるほど、女優という職業は美人ばかりになり、そうでない女優は減っていくだろう。

●今後はブルゾンちえみが桐谷美玲を盛り立てる

 個人的には、水川あさみを含めた3人娘のキャスティングは、いずれもハマリ役と感じているし、オシャレを研究するシーンは男性目線で見ても楽しい。さらに、『LIAR GAME』『失恋ショコラティエ』『信長協奏曲』(いずれもフジテレビ系)などのユニークな演出で知られる松山博昭の映像は、ある意味アニメ以上にアニメ的な奔放さがあり、とにかく笑わせてくれる。

 視聴率は低迷し、ネット媒体にはネガティブな記事も多いが、私が見聞きしている限り視聴者と識者の評価は高く、見逃し配信数も好調という(実数は発表せず)。それだけに一連のネガティブキャンペーンは残念だが、見ている人は「3人娘が、外見の美だけでなく、内面の成長を果たす」最終回で感動を味わえるだろう。

 近年、ドラマのヒロインに対する「役に合わない」「ゴリ押し」などのバッシングが当然のようになっている。「ホメられることがめったにない」というヒロイン受難の時代といえるが、桐谷はめげるどころか、主演女優らしくドラマ初挑戦のブルゾンちえみをサポートしていた。そんな背景もあるだけに、これから終盤に向けて「助演のブルゾンちえみが、主演の桐谷を盛り立てる」シーンが見られるのではないか。

「その頃には桐谷への厳しい声が収まり、2人の奮闘が素直に受け入れられてほしい」と願っている。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

関連記事(外部サイト)